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留菜マナ
留菜マナ

第四百七十話 あの世界を生きた君は今①

公開日時: 2024年4月15日(月) 16:30
文字数:979

「「みんなを守りたい……!」」


『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の猛攻を前に、剣は弾かれ、望とリノアは吹き飛ばされる。

それでも、望とリノアは剣を支えに立ち上がった。

しかし、それは愛梨に変わるためではない。

今までと、これからでは明らかに違う事実がある。


「だから、蒼の剣、俺達に力を貸してくれないか!」

「だから、蒼の剣、私達に力を貸して!」


望とリノアは確かな想いを口にする。

その瞬間、望達の想いに応えるように、蒼の剣からまばゆい光が収束した。


「蒼の剣、頼む……!」

「蒼の剣、お願い……!」


望とリノアが剣を掲げた途端、蒼の剣による、水の魔術の付与効果が発動した。

蒼の剣から溢れ出した、水の魔術の奔流が空間を席巻する。

蒼の剣には、変幻を元に戻す効果がある。

だが、この場には変幻の現象が発生していない。

効果が発動しても意味はなかった。

しかしーー


「ーーなっ!」

突如、立ち上った水流に、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達の意識は大きく逸らされた。


「今だ!」


戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えると範囲射撃をおこなう。


「ーーっ」


不意を突いた連続射撃は、集中が途切れていた『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達を怯ませる。


「プラネットちゃん、行くよ!」

「はい」


花音とプラネットは並走して、苛烈な連携攻撃を『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に加えていった。


「これは……あの時と同じ戦法……」


一方、かなめの表情は想定外の展開を前にして悲哀を帯びていた。


「喰らえ!」


さらにそこから更なる戦法を生み出すために。

奏良は銃口をモンスター達に向けて発砲する。

焦りもない。

怯えもない。

正確無比な射撃で、奏良はただ眼前の敵達を撃ち抜いた。


「奏良よ、この付近にはこの部屋の秘密を探れるような、めぼしいものはない。風の魔術のスキルを使って、さらに上部を探るぞ!」


奏良の一連の動きを見て、有はすぐにその決断を下した。


「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、風の魔術のスキルを使って浮上すれば、狙い打ちされる可能性がある」


有の提案に、奏良は懐疑的である。

だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。

とはいえ、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達、そしてモンスター達が迫り来る予断を許さない状況。

その時、勇太が大きく動いた。

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