「美羅の真なる力……」
「美羅様の真なる力……」
望とリノアは不思議そうに、賢の真偽を確かめる。
賢が提示してきた提案は、常に狙われてきた望達、そして、リノアを救いたかった勇太達にとっては願ってもない条件だった。
だからこそ、理解できなかった。
何故、そこまでして、美羅の真の力を発動させようとするのか。
甘美な提案の裏には、何かしらの思惑が窺えた。
「「ガアアッーーーー!!」」
「このままでは、ボスモンスターは分裂を繰り返し、魔方陣から召喚されたモンスター達は増殖する」
「「ーーっ」」
二体のボスモンスターに波状攻撃を仕掛けていた賢の言葉に、望とリノアは苦々しい表情で眉をひそめた。
それは、仮定の形をとった断定だった。
HPが半分以下になったボスモンスター達が、さらに分裂する。
ボスモンスターは、四体になった。
「「ーーっ!」」
迫り来る四体の巨人達の猛攻に、望とリノアは戸惑うように息を呑んだ。
賢は一呼吸おいて、異様に強い眼光を望に向ける。
「蜜風望。美羅様の真なる力の発動には、君と椎音愛梨の力が必要だ」
「HPが半分以下になった場合に発動するなら、みんなで一気に攻撃すれば倒せるだろう!」
「HPが半分以下になった場合に発動するなら、みんなで一気に攻撃すれば倒せるよ!」
直前の動揺を残らず消し飛ばして、望とリノアが叫ぶ。
一触即発な状況の中、賢は迷いなく断言する。
「このクエストの残り時間は、あとわずかだ。君達も、この塔が地上に降り立つのを感じただろう。あれは、クエストが終了する間近だという報せだ」
「「……終了」」
予想外の賢の言葉に、望とリノアは意表を突かれる。
「どうして終了するなんて、分かるんだ?」
「どうして終了するなんて、分かるの?」
「私達は以前、同じようなクエストを受けたことがあるからな」
到底、聞き流せない言葉を耳にした望とリノアは、虚を突かれたように瞬く。
賢はそれを見越した上で、徹頭徹尾、美羅のために行動を起こす。
「このクエストが終了するまで、ボスモンスター達を葬り、魔方陣から召喚されたモンスター全てを倒すのは困難を極めるはずだ。もちろん、ここでクエストを諦めて再び、私達とボスモンスター達の戦いを再開するという三つ巴戦になっても構わない」
「「……それは」」
あまりにも単刀直入な疑問に、望とリノアは言葉に詰まる。
賢の指摘は、正鵠を射ていた。
ボスモンスター達との戦いは、次第に劣勢になってきていた。
「奏良、プラネット、妹よ。このままでは、まずいぞ」
有達が後手に回るのを見計らって、魔方陣から次々と壁を作るようにモンスター達が召喚される。
壁のように迫り来る様は、まるで密集陣形のようだ。
四方八方から、モンスター達が有達へと襲いかかる。
「お兄ちゃん達に手出しはさせないよ!」
花音は身を翻しながら、鞭を振るい、モンスター達を翻弄する。
だが、それはほんのわずか、モンスター達の動きを鈍らせただけで動きを止めるには至らない。
ゲームオーバーまでの時間を延ばしているだけだ。
「このままでは勝てないな」
迫り来る攻撃に合わせ、奏良は全方位に連射する。
モンスター達を撃ち落としながら、奏良は事実を冷静に告げた。
「有様。モンスター達の包囲によって、身動きが取れなくなってきています」
「プラネットよ、分かっている」
モンスターに拳を振り下ろしたプラネットの戸惑いに、有は思案するように視線を巡らせる。
だが、有達の視界は既に、モンスター達によって埋め尽くされていた。
「賢様のもとに行かせるな!」
「魔術のスキルを強化して、結界を張れ!」
『レギオン』のギルドメンバー達もまた、魔方陣から押し寄せるモンスターの大群の対応に追われていた。
有達の攻撃が全く効かない鋼鉄並みのモンスターの集団との戦いが加熱している。
危機迫る有達のもとへ、『レギオン』からの助勢は期待できそうもなかった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!