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留菜マナ
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第ニ百五十五話 氷水晶のレクイエム③

公開日時: 2021年5月31日(月) 16:30
文字数:1,266

「望、リノア、花音、勇太。前衛全員、多少のダメージは堪えろ」

「「なっ!」」

「うわっ!」

「なんだ?」


望とリノア、花音と勇太に迫り来る『レギオン』のギルドメンバー達に合わせて、奏良が放った銃の弾が全方位に連射される。

放たれた弾は、対空砲弾のように相手の攻撃にぶつかり、『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませた。


「マスターとリノア様を渡すわけにはいきません!」


プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を迫ってきた使い魔達に叩きつけた。

それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。

煙が晴れると、召喚された使い魔達は焼き尽くされたように消滅していった。


『元素還元!』


有はその隙に、後方の床に向かって杖を振り下ろす。

有の杖から、放射状の光が放たれる。

その光が、床に触れた途端、とてつもない衝撃が周囲を襲った。

床が、まるで蛍火のようなほの明るい光を撒き散らし、崩れ落ちるように消滅したのだ。

これで、後方から追撃を断つつもりだった。

しかし、有が突出した瞬間、直視出来ない程の閃光が巻き起こる。

行く手を塞がれたことによって、今度は魔術のスキルを使ってきたのだ。

しかも、賢は有が仕掛ける前に、望達のもとまで歩み寄っていた。


「なっ、いつの間にここまで来たんだ!」

「柏原勇太くん。残念だが、今回は君の相手は出来ない」


魔術の嵐の只中で、勇太と賢は視線を交わし、それぞれの武器を交わしてすれ違う。

それは一瞬の交錯だった。


「蜜風望は、私が相手をしよう。君達は、他のメンバーを頼む」

「はい」


奮闘する望とリノアの剣さばきを目にして、賢はすぐにその決断を下した。

その言葉を合図に、『レギオン』のギルドメンバー達はそれぞれの武器を構えた有達と対峙するために彼らのもとへ行く手段を模索する。


「俺が勝ったら、花音が呼び出したーーあのモンスターを元に戻してもらうからな」

「私が勝ったら、花音が呼び出したーーあのモンスターを元に戻してもらうから」

「なら、私が勝利した暁には、美羅様とともに機械都市、『グランティア』までご同行願おうか」


望と賢は、互いの信念を賭けて向かい合った。

リノアもまた、望と同じように賢と対峙する。

望とリノアは剣を構え直すと、余裕の表情で事の成り行きを見守っている賢の様子を物言いたげな瞳で見つめた。


「ーーっ」


賢が微かに動いた瞬間、望とリノアは仕掛けた。

望とリノアの加速に、賢はわずかに自身の武器である剣を動かし、望とリノアが進む先に刃先が来るようにして調整して対応する。


「「くっ!」」


剣先を打ち払おうとする望とリノアの剣の動きに合わせて、賢は絶妙な力加減で2人を吹き飛ばした。


「望くん! リノアちゃん!」


壁際に激突した望とリノアを見て、花音が悲鳴を上げる。

望とリノアのHPを示す青色のゲージは、ごっそりと減っていた。


「賢様の戦いの妨害をさせるな!」


花音が悲鳴を上げたその隙に、『レギオン』のギルドメンバーの一人が闊達(かったつ)豪放(ごうほう)な態度で指示する。

千差万別な武器を構え、『レギオン』のギルドメンバー達は一斉に花音に迫ったーーその時だった。

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