勇太が解き放ったのは、かなめを打ち倒すための切り札となる新たな新技。
「これが今の俺に出せる全力だ!」
「……っ」
かなめが行動を起こす以前に、勇太はこの部屋に赴く前に覚えた新たなスキル技を披露した。
『フェイタル・クロノス!』
最高度の補正を受けた高速六連撃から、その場で舞い踊るように繰り出す七連斬、そして締めとばかりに振るわれる横薙ぎ三連閃。
一呼吸の間に十六連撃を繰り出す大技中の大技だ。
「ーーっ!」
かなめには何が起きたのか、見えなかった。
目で追える速度ではない。
もはや、それは洗練された演舞のようだった。
かなめは体勢を立て直すこともできずにまともにその一撃を喰らって吹き飛ばされた。
かなめのHPは一気に0になる。
賢様、申し訳ありません……。
勇太が放った流星の双剣を前に、かなめはもはや為す術もない。
「かなめ様!」
「問題ありません」
片や、『カーラ』のギルドメンバー達が進み出るが、かなめは無機質な口調で制した。
「……いずれ来(きた)る未来、特殊スキルの使い手達は、私達の手中に入ります。それは今ではなかった、それだけのことです」
かなめはあくまでも理想を口にする。
やがて、かなめは閃光に塗り潰されて、仮想世界から姿を消していった。
「おのれ、よくもかなめ様を!」
「許さぬ!」
『カーラ』のギルドメンバー達が怒りを漲らせる。
だが、その戦いを目の当たりにした『レギオン』のギルドメンバー達が、『カーラ』のギルドメンバー達に焦った声を上げた。
「手嶋賢様に状況を報告するぞ!」
「だが、このままでは……」
戸惑いを口にしようとしてーーしかし、続く警告に『カーラ』のギルドメンバー達は言葉を途切れさせた。
「分が悪すぎる。それに美羅様の残滓を、『キャスケット』と『アルティメット・ハーヴェスト』に知られた以上、即急に対策を練らなくてならない」
『カーラ』のギルドメンバー達は何故、こんな事にという言葉を唇に乗せる。
しかし、迷ったのはその一瞬だけだった。
「……仕方ない。無念だが、この場は撤退する」
置かれた状況を理解した『カーラ』のギルドメンバー達は踵を返し、『レギオン』のギルドメンバー達とともにその場から走り去っていく。
「なっ!」
「待て!」
その事実を認識した奏良と徹が止める暇もなく、彼らはその場から姿を消していった。
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