「よし、望、奏良、妹よ。このまま、ダンジョン調査を続けて、リノアを元に戻すきっかけとなる方法を探すぞ!」
「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、『アルティメット・ハーヴェスト』が提示してきたクエストの中に、彼女を元に戻す方法があるとは限らない。少なくとも、今までのダンジョン調査によって得られた成果はないに等しい」
有の意思表明に、奏良は懐疑的である。
望達がダンジョン調査を行っているーーこの現状を利用して、『レギオン』と『カーラ』は動いている節があったからだ。
具体的な成果といえば、吉乃信也を含めた『レギオン』と『カーラ』が接触してきたことくらいだ。
『創世のアクリア』のプロトタイプ版には、望達の知らない事実が隠されている。
究極のスキルーー特殊スキルについてのことも含めてという信也の意味深な発言。
そして、行く先々で、賢とかなめが語った美羅に関する明言と表明だった。
このまま、ダンジョン調査を続行しても、詳しい成果は得られないかもしれない。
だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。
『アルティメット・ハーヴェスト』が提示してきたクエストの中に、特殊スキルの秘密に迫るものがないというのならーー。
『レギオン』と『カーラ』が管轄しているダンジョン、もしくは彼らの拠点であるギルドホームに秘密が隠されているはずだ。
奏良は藁にもすがる思いで策を講じる。
「だったら、『レギオン』の者か、『カーラ』の者を捕らえて、情報を引き出すしかないな」
「捕縛するのか……」
奏良が発したその意見を皮切りに、望は沈着に現状を分析した。
奏良が語った作戦は筋は通っているし、理にも敵っている。
本来なら、すぐにでも『レギオン』と『カーラ』の野望を止めたかった。
だが、一時の感情で、リノア達を危険に晒すわけにはいかない。
『レギオン』と『カーラ』が望を捕らえようとしてくるのなら、逆に彼らを捕縛して新たな情報を入手する。
末端の者の場合、詳しい情報を持っていない可能性は高い。
それでも、常に望達の先を行く『レギオン』と『カーラ』の動きを把握するために、望達が取れる手段の一つでもあった。
「確かに、その手段は有効かもしれないな」
有は考え込む素振りをしてから、改めて望達を見据える。
「俺達が現実世界で取れる手段は少ない。ダンジョン調査も危険極まりない。八方塞がりな状況だというのなら、この現状を打開するために出来る限りのことをしていくしかないだろう」
「そうだな」
「うん」
有の核心に満ちた言葉に、望と花音は間一髪入れずに頷いた。
高位ギルド『レギオン』と『カーラ』による妨害行為。
それに対処するために、残りのダンジョン調査は三ヶ所全て、調査を終えられる方法を模索する必要があるなーー。
有は改めて、今後の作戦への再検討を示す。
『残りは全て、『サンクチュアリの天空牢』と同等の中級者ダンジョンになります。同程度の時間がかかるものと思われます』
だが、有の脳裏に、プラネットの躊躇いの伴った声が蘇る。
もはや、ダンジョン調査クエストはーーいや、他のクエストも有達、『キャスケット』のみで行えるものではないだろう。
『アルティメット・ハーヴェスト』の協力が必要不可欠だ。
『創世のアクリア』のプロトタイプ版へとログインした際には、『アルティメット・ハーヴェスト』の拠点である王都、『アルティス』の城下町へと赴く必要がある。
有は紘達と共闘するという確固たる意思を固めた。
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