そこには以前見た、ダンジョンに関する当たり障りのない情報が記載されていた。
だが、新たに記されていた箇所を発見して、有は顔を強張らせる。
『なお、今現在、『サンクチュアリの天空牢』は、『キャスケット』と『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄下にあります』
『サンクチュアリの天空牢』の情報には、そう記載されていた。
「どうやら、美羅の残滓を確保したことで、『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンは、『キャスケット』と『アルティメット・ハーヴェスト』の管轄下に変わっているようだ」
その事実に、有は美羅の残滓の重要性を噛みしめた。
美羅の残滓は機械都市『グランティア』に赴くための鍵。
そして、リノアの意識を覚醒させるための鍵でもある。
美羅の残滓が奪われたと知れば、『レギオン』と『カーラ』は何らかの手を打ってくるだろう。
その前に機械都市『グランティア』に乗り込む必要があった。
「明晰夢の複合で構築されたダンジョンを手に入れたのは大きいな」
「明晰夢の複合で構築されたダンジョンを手に入れたのは大きいね」
望とリノアが示した事実に、花音は改めて自分が為すべきことを触発された。
「ねえ、お兄ちゃん。吉乃信也さんと吉乃かなめさんが『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンを構築したんだよね?」
「妹よ、そのとおりだ」
有が肯定すると、花音は途方にくれたように言った。
「それなのに、吉乃信也さんと吉乃かなめさんがいない状況で、ダンジョンは何故、維持できているのかな?」
「確かに考えてみれば、矛盾しているな」
花音が具体的な疑問を口にすると、有は思考を深める。
「ニコットちゃんって、いろいろなことができるよね。ダンジョンを維持させているのも、ニコットちゃんの力かもしれないね」
花音はとっておきの腹案を披露するように有を見つめた。
「なるほど、妹よ、一理あるな」
有は顎に手を当てると、花音の発想に着目する。
「確かにその可能性は高いな」
「確かにその可能性は高いね」
花音の推測に触れて、望とリノアは納得したように頷いてみせた。
「お兄ちゃん。これからどうするの?」
「妹よ、まずは一度、ログアウトして、戦いに備えるぞ。奏良が言ったとおり、機械都市『グランティア』は敵の本拠地だ。入念に準備してから乗り込む」
花音の戸惑いに、有は思案するように視線を巡らせる。
「そうだな。持てる力を存分に出すためにも、美羅の残滓からいろいろと情報を探ってみるしかないよな」
美羅の残滓から情報を得るのは容易ではない。
だからこそ、徹は敢えてそう結論づける。
あらゆる可能性を拾い集めるしかないと。
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