「今の美羅は、人智を超えた成長を遂げる『究極のスキル』そのものであり、時には特殊スキルの使い手である私達の力を超えるほどの絶対的な力を持っているということだ」
「ーーっ」
その紘の言葉を聞いた瞬間、望達は息を呑んだ。
どこまでも激しく降る雨が、望達の脳内で弾ける。
紘の特殊スキル、『強制同調(エーテリオン)』。
それは過去、現在、未来、全てを見据えた上で、未来へと導いていく力だ。
規格外である紘の特殊スキルによって、『アルティメット・ハーヴェスト』は様々な情勢を自由に選択することができる。
その力を用いれば、望を美羅に遭遇させないようにすることも出来たはずだ。
しかし、望と美羅は、『レギオン』と『カーラ』によって作為的に引き合わされている。
つまり、美羅の力によって引き起こされた出来事は、如何に特殊スキルの使い手であっても覆すことは厳しいということだ。
現実世界での異常な現象。
突然の強制ログアウトによる、『創世のアクリア』のオリジナル版の完全なサービス停止。
それらは全て、美羅の力のよって引き起こされたものだった。
「美羅の特殊スキルは、全ての人々にご加護を与え、一部の者達に神のごとき力ーー『明晰夢』を授ける力か」
「美羅の特殊スキルは、全ての人々にご加護を与え、一部の者達に神のごとき力ーー『明晰夢』を授ける力」
望とリノアは瞬きを繰り返しながら、かなめが語った美羅の特殊スキルの内容を思い出してつぶやいた。
『蜜風望。美羅様の真なる力の発動には、君と椎音愛梨の力が必要だ』
望の脳裏に、『朽ち果てた黄昏の塔、パラディアム』で告げられた賢の言葉が蘇る。
「美羅は、特殊スキルであるーー究極スキルそのもの。だから、俺達、特殊スキルの使い手とシンクロすることで、彼女は目覚め、俺達と同じ動作をするんだな」
「美羅は、特殊スキルであるーー究極スキルそのもの。だから、私達、特殊スキルの使い手とシンクロすることで、彼女は目覚め、私達と同じ動作をするのね」
紘が語った真実を、望とリノアは噛みしめるように反芻する。
ただ、今は、濁流みたいに押し寄せてくる感情に耐えるだけで精一杯だった。
特殊スキル。
世界を牛耳る力と謳われ、現実世界をも干渉する力。
そして、全ての世界そのものを改変させることすら可能な、万能の力。
世界の根源へと繋がる話に、奏良はふと座りの悪さを覚える。
「美羅を消滅させる方法。『レギオン』に関わる組織が引き起こしたとされる失踪事件を要に、美羅の力は仮想世界でも現実世界でも脅威を振るっている。『レギオン』と『カーラ』に守られている美羅を止める手段はあるのか?」
「まずは久遠リノアから美羅を解放させる事によって、美羅という『救世の女神』を愛梨のデータの集合体に戻す必要がある」
予測出来ていた奏良の言及に、紘は訥々と語った。
望は改めて以前、紘が口にした言葉を脳内で咀嚼する。
美羅を世間に知らしめることで、現実世界における美羅の特殊スキルの効果を向上させたーー。
「なら、世間の目から遠ざける事が出来たら、美羅の力は弱まる可能性もあるんだよな」
「なら、世間の目から遠ざける事が出来たら、美羅の力は弱まる可能性もあるのね」
不可解な空気に侵される中、望とリノアは慄然とつぶやいた。
そして、この状況を少しでも早く改善すべく思考を巡らせる。
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