望達がリノアを連れて一階に降りると、有達は王都『アルティス』へと向かうための支度を終えていた。

「残りの調査対象のダンジョンで、上位クラスのモンスターが現れるのは護衛クエストのダンジョンか。このダンジョンが一番、危険性が高いな」

「奏良よ、この場所で『レギオン』と『カーラ』の者達が待ち伏せている可能性が高いな。『レギオン』の者か、『カーラ』の者を捕らえる方法はここで行う方が良さそうだ」

「そうですね」

奏良の懸案に、有とプラネットは同意する。

「遅くなってごめんな！」

やがて、望達が『アルティメット・ハーヴェスト』とコンタクトを取るための協力要請を出していたことで、徹は足早にギルドへと赴いた。

イリスはギルドの外で、望達の警護に当たっている。

「今回、君の出番はない。僕が愛梨を守るからな。ただひたすら、ダンジョンの調査をしてくれ」

「……おまえ、いつも一言多いぞ」

奏良の言及に、徹は恨めしそうに唇を尖らせる。

「徹くん、もう王都『アルティス』に行ってもいいのかな？」

「ああ。こちらの準備は既に済ましているからな」

花音が声高に疑問を口にすると、徹はイリスからの情報を確認しながら応える。

「なら、改めて、残りの調査対象のダンジョンの情報を確認しなくてはならないな」

クエスト情報を散見していた有は、意味ありげに表情を緩ませた。

ダンジョンの同時調査ーー。

そんな中、居ても立ってもいられなくなったのか、花音が攻撃する際の身振り手振りを加えながら飛び跳ねた。

「徹くん、護衛クエストのダンジョンって、どんなモンスターが出るのかな？　どんなモンスターが現れても、私の天賦のスキルと使い魔で倒してみせるよ！」

「花音。今回の目的はあくまでも、残りの調査対象のダンジョンを全て終えることと、『レギオン』と『カーラ』の者達を捕らえて情報を聞き出すことだけだ。ただひたすら、道を塞ぐ敵だけを倒してくれ」

花音が自信満々で告げると、奏良は呆れたように有に目配りする。

有はそれに応えるように、インターフェースを操作して、残りの調査対象のダンジョンの攻略情報を表示させた。

「妹よ。残念だが、奏良の言うとおりだ。モンスターとは遭遇した時のみ、戦闘を行うつもりだぞ」

「……そ、そうだったね」

自身のアイデンティティーを否定されて、花音は落胆する。

「だが、確かにダンジョンの同時調査というものは、どんな感じになるのか、気になってしまうな」

「お兄ちゃん。まずはアイテムを購入してから、愛梨ちゃんのお兄さんに会いに行くんだよね」

「その通りだ、妹よ」

喜び勇んだ妹の意を汲むように、有は自身の考えを纏めた。