賢達の思惑が渦巻いている中、望達は『サンクチュアリの天空牢』のダンジョンの調査をするため、浮き島へと向かっていた。
「よーし、行くよ!」
「ああ」
「うん」
城門の前に降り立った花音は、望達の行動を牽引(けんいん)する。
「望、奏良、プラネット、勇太、リノアよ、このまま、あの城に入るぞ!」
「ああ、分かった」
「うん、分かった」
有の指示に、望達は花音の後を追い、城門へと降り立った。
だが、城門には、ガーゴイル達が待ち構えていた。
「「はあっ!」」
望とリノアは剣を一閃すると、入口付近で待ち構えていたガーゴイル達が吹き飛ぶ。
その隙を突いて、望達は城門に迫る。
極大の白い鉄門の下。
大地の代わりになっている雲は、しっかりと足場を形成していた。
「どうやって開くのかな」
花音は巨大な鉄門の引き手を掴む。
すると力を入れたわけでもないのに、鉄門は蝶番(ちょうつがい)の軋む音を響きかせる。
望達を招き入れるように、鉄門は内側に開いていった。
「昨日まで、イリス達が索敵してくれていたからな。門は既に開いている」
「そうなんだな」
「そうなんだね」
徹の説明に、望とリノアは納得したように頷いた。
『サンクチュアリの天空牢』のロビー。
望達はガーゴイル達を振り切り、牢獄へと向かうために走っていった。
城門を護っていたガーゴイル達は、城に入った望達を追ってはこなかった。
しかし、城の中で待ち構えていたケルベロス達が、望達の存在に気づき、まるで呼び水のように集まってくる。
「わーい! 今度はケルベロス達の大群だよ!」
「それどころじゃない」
「それどころじゃないよ」
両手を広げて喜ぶ花音をよそに、望とリノアは必死に塔の奥へと進んでいった。
「ふむ。この城は、鍾乳洞より複雑だな。今日中に最深部の牢にたどり着くためには、やはりモンスター避けのお香は必須か」
ケルベロス達から追いかけられながらも、有はインターフェースを表示させて、城のルートを探索していく。
「妹よ、頼む」
「うん」
花音がモンスター避けのお香を使うと、迫ってきていたモンスター達の一部が怯えたように立ち去っていった。
『モンスター避けのお香』は、弱いモンスターを避けることができるアイテムだ。
数に限りはあるが、今は出し惜しみをしている場合ではない。
前方に、望とリノアと花音と勇太。
有と徹は真ん中。
後方に、奏良とプラネットとリノアの両親という隊列で突き進んでいった。
『クロス・レガシィア!』
進路を妨害してきたキマイラ達に対して、花音がそのまま、天賦のスキルで間隙を穿つ。
瞬間の隙を突いた花音のスキルに、ターゲットとなったキマイラ達は完全に虚を突かれた。
花音の鞭によって、宙に舞ったキマイラ達は凄まじい勢いで地面へと叩き付けられる。
だが、それでも追いかけてくるモンスターの数はなかなか減らない。
「お兄ちゃん、大盛況だよ!」
「うむ。中級者クエストは、さすがにモンスターが多いな。しかし、妹よ、氷の結晶を手に入れるためには、通らなくてはならない道だ!」
有と花音が会話のキャッチボールをしている間も、モンスター達は血気盛んな様子で追いかけてくる。
望達による『サンクチュアリの天空牢』の攻略は、まだ始まったばかりだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!