「望、リノア、奏良、プラネット、勇太、徹、そして妹よ、後戻りはできない。全力で葬るぞ!」
「うん」
「はい」
「逃げられそうもないからな」
有の指示に、花音とプラネットが頷き、奏良は渋い顔で承諾した。
「この場所に、何でこんな強力なモンスターがいるんだ?」
「予め、『レギオン』の召喚のスキルの使い手達によって呼び出されていたのかもな」
勇太の率直な疑問に、徹は忌々しそうに応える。
「彼らを捕らえろ!」
徹の言葉を裏付けるように、『レギオン』のギルドメンバーの一人が叫ぶ。
「ーーみんな、攻撃が来るぞ!」
「ーーみんな、攻撃が来る!」
望とリノアの叫びと同時に、有達は一斉に散開した。
飛び込んできたボスモンスターの胴体が、地面に突き刺さる。
砕かれた岩の破片が、この場所ーー全域まで吹き飛んだ。
胴体がまともに当たれば、死亡。
砕けた破片に当たっても危険。
『レギオン』のギルドメンバー達に呼び出されたモンスターは一撃で、望達のHPを大幅に減らすほどの力を備えていた。
望達にとって明らかに分相応な戦いだが、このモンスターを倒せば、転送アイテムか、転送石を使ってギルドに戻ることができる。
危険な賭けだったが、望達は敢えて、この凶悪なモンスターを攻略するという勝負に出た。
「モンスターと戦うことを選んだか」
賢が、望達の思惑に合点が行ったとばかりに言う。
望達は申し合わせたように、一斉にその場から踊り出た。
猛然と進撃を開始した望達の放つ強い気配。
凶悪なモンスターは、視界に彼らの姿を捉える。
賢が着目したのは、先陣を切った望とリノアだった。
「「はあっ!」」
望とリノアは剣を掲げると、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。
望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。
それが融合したように、モンスターに巨大な光芒が襲いかかる。
『ガアッッーーーー!!!!』
一片の容赦もない二人の剣の一振りを受けて、モンスターは落下し、HPを大幅に減らす。
しかし、その瞬間、後方に控えていた『レギオン』の魔術の使い手達がモンスターのHPを回復した。
『ガアッッーーーー!!!!』
モンスターは再び、浮かび上がると、今度は周辺一帯に魔力を放出する。
周辺全体に向かって、斜線状が黒い墨が襲いかかった。
「「くっ……!」」
混沌とした墨状の一線を、望達はかろうじて避けた。
「わっ! これじゃ、前に行けないよ!」
即座に鞭による攻撃で怯ませようとしていた花音は、次々と放たれる墨の一線に反撃の手を止める。
『エアリアル・アロー!』
奏良が唱えると、無数の風の矢が一斉にモンスターへと襲いかかった。
HPを示すゲージは少し減ったものの、青色のままだ。
その時、大剣を抜き放った勇太が、リノアの両親とともに攻撃に加わってきた。
「リノアには手出しはさせない!」
打ち倒すべき敵を睨み据えた勇太は床を蹴って、勇猛果敢に賢に向かって駆ける。
「勇太くん。今は、君の相手をしている暇はない」
勇太を迎え撃つように、賢は厳かに剣を構えた。
「だったら、リノアを今すぐ元に戻せ!」
「……愚かな」
勇太の即座の切り返しに、賢は落胆したようにため息をつく。
「喰らえ!」
「……くっ」
勇太の大剣との賢の剣のつばぜり合いは一瞬で終わり、カキンと高い音を響かせて離れた二人は、そこから脅威的な剣戟の応酬を見せた。
先程の戦いで見せた速度をさらに越える瞬発。
迷いのない美しい賢の一刀に、勇太はぎりぎりのところで大剣を受ける。
剣と大剣がぶつかり合う度に散る、互いのHP。
『フェイタル・レジェンド!』
「ーーっ」
勇太が放った天賦のスキルによる大技は、賢の距離が極端に離れたことで対応された。
「すごいな」
「すごいね」
高度で複雑な剣閃の応酬。
勇太はリノアの両親のスキルによって、体力を回復し、攻撃力を上げたことで、接戦へと持ち込めていた。
モンスターによるレーザーの如き墨の波動を避けながら、望とリノアは驚嘆のため息を吐く。
「『レギオン』の視線が勇太くんに向かっている今なら、彼女の座標をずらされることはないはずだ。俺が戦っても問題ない!」
「『レギオン』の視線が勇太くんに向かっている今なら、私の座標をずらされることはないはず。私が戦っても問題ないよね!」
モンスターによる鳴り止まない砲撃音の中、望達はモンスターを倒し、『レギオン』の魔の手から逃れるために周辺一帯を駆け回った。
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