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留菜マナ
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第三百六十三話 静閑を裂く⑥

公開日時: 2022年10月14日(金) 16:30
文字数:1,049

「リノアちゃんの移動を止めないと、望くんが思うように戦えないね」


跳躍した花音が鞭を振るい、モンスター達を吹き飛ばした。

だが、さらに五体の影が上空から駆けてくるのが見える。


「奏良よ、頼む」

「言われるまでもない」


有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。

発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、飛行モンスター達は次々と落ちていく。


「逃がしません!」


プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を落ちてきたモンスター達に叩きつけた。

それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。

煙が晴れると、モンスター達は全て、焼き尽くされたように消滅していった。


「マスター。モンスターの討伐に問題ありません」

「そうだな」

「そうだね」


後方を警戒していたプラネットの言葉に、望とリノアは一呼吸置いて応える。


「ただ、リノア様の座標の移動を止めるためには、吉乃信也の動向を見計らう必要がーー」


プラネットが憂いを帯びた眼差しで信也に視線を向けた途端、一体の骨竜が望達に危害を加えようとした。

だが、その前に金色の光を身に纏った四肢を持つ光龍が立ち塞がる。

骨竜とさほど変わらない巨躯の光龍は、主である徹の指示に従って、望達に危害を加えようとした骨竜を睥睨した。


「光龍、目障りな!」


立ち塞がった光龍を前に、『カーラ』のギルドメンバー達が不愉快な顔を浮かべて警戒した。


「行け!」


光龍と骨竜が相対する中、徹は光龍を使役する。

徹が行使する光龍は、身体を捻らせて骨竜へと迫った。


『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


虚を突かれたせいなのか、骨竜は体勢を立て直すこともできずにまともにその一撃を喰らう。

そして、徹が動くのを見計らっていたように、次々と『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達が駆けてきた。

全員がレア装備を身につけ、それぞれの武器を『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達に突きつけてくる。

街道の戦いはさらに苛烈さを増していく。

味方、敵が混在した混沌の渦の中、街道は一気に乱戦状態へと陥っていった。


「徹くん!」


右手をかざした花音は、爛々とした瞳で周囲を見渡した。


「おのれ!」

「問題はない。このまま、攻め立てていけば、蜜風望達を捕らえることができるはずだ」


凛とした声が、混乱の極致に陥っていた『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達を制する。


「唯一の誤算は『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドマスター自らが参戦してきたことか」


信也は体勢を立て直すと、望達を捕らえるために的確な指示を出していった。

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