「なっ! 待て!」
「今だ!」
戦局全体を見極めていた奏良は、銃を構えると範囲射撃をおこなう。
「ーーっ」
不意を突いた連続射撃は、徹の追跡に動こうとした『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませる。
「よし、今のうちにここから脱出するぞ!」
それは絶好の好機だった。
有はそう呼び掛けると、混乱する『レギオン』のギルドメンバー達の只中を駆け抜ける。
「プラネットちゃん、行くよ!」
「はい」
花音とプラネットは並走して、苛烈な連携攻撃を『レギオン』のギルドメンバー達に加えていった。
「ーーよしっ!」
一方、目の前で巻き起こる想定どおりの結果に、拳を突き上げた徹は安堵の表情を浮かべる。
徹が望達と合流するのを確認したニコットは単なる事実の記載を読み上げるかのような、低く冷たい声で宣告する。
「手嶋賢様。ニコットはこのまま、蜜風望達の監視を続行します」
「「監視……?」」
無邪気に嗤う少女ーーニコットの発言を聞いて、望とリノアは嫌な予感がした。
しかし、望達の驚愕には気づかずに、ニコットは淡々と攻撃態勢へと移る。
「まずは、そのための妨害対象を排除します」
「それは、こちらの台詞です。彼らとともに今すぐ、ここから立ち去りなさい」
「ニコットはこのまま、指令を続行します」
一方的な要求に、イリスは表情を歪めたくなるのを堪える。
そのタイミングで、賢は厳かな口調で言い放った。
「ニコット、彼女のことは任せた。私達は蜜風望達を追う」
「手嶋賢様、了解しました」
賢の指示に、ニコットは素直に従う。
「まるで、私など眼中にないような言い回しですね」
「この機会を逃すわけにはいかないからな」
状況説明を欲するイリスの言葉を受けて、賢は表情の端々に自信の満ちた笑みをほとばしらせた。
「それに、君の相手はニコットだけではないからな」
「彼女だけではないのですか?」
「ああ」
イリスがその言葉の意味に気づくのに十数秒の時間を要しーーその十数秒が劇的に戦局を変えた。
スライムタイプのモンスターに異変が起きたのは、花音とともにダンジョンの入口に向かって疾走していた時だった。
「どうしたの?」
花音が呼び掛けたその瞬間、スライムタイプのモンスターの身に変化が起きた。
花音に付き添っていたスライムタイプのモンスターが何かに抗うように身震いする。
「大丈夫?」
花音が声高に疑問を口にすると、突如、スライムタイプのモンスターは花音に襲い掛かってきた。
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