そんな情勢の中でも、花音達は前を向こうとしていた。
「絶対にリノアを元に戻してみせる!」
「うん。ギルドホームに着いたら、リノアちゃんを元に戻す方法を探そう!」
期待を膨らませた勇太と花音は意気投合して盛り上がった。
気合い十分な二人を背景に、周囲を警戒していた奏良は素っ気なく念押しする。
「二人とも、少し場所をわきまえてくれ。新手がいるかもしれない状況で、今後の作戦の打ち合わせをするのは危険極まりない」
奏良が耳を傾けると、周囲のプレイヤー達が雑談に興じていた。
モンスターの情報や、クエストについての噂、ダンジョンで手に入れた武器の自慢、あるいは現実での話を持ち込み、会話に花を咲かせている。
周囲の『アルティメット・ハーヴェスト』の者達の協力を得られるとはいえ、奇策を講じる『レギオン』と『カーラ』は神出鬼没だ。
撤退したと見せかけて、奇襲を仕掛けてくるかもしれない。
奏良は周囲に視線を張り巡らせる。
「毎回、『レギオン』と『カーラ』の奇襲を受けて襲われるのは勘弁してほしいからな」
「もう、奏良くん! 愛梨ちゃんのためにギルドホームに行こうよ!」
「……花音。何故、そこで愛梨の名前を出すんだ?」
花音のどこか確かめるような物言いに、奏良は不快そうに顔を歪めた。
「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃん達が愛梨ちゃんのお兄さんと話している間、愛梨ちゃんと一緒にギルドホームの中を回っていてもいいかな?」
「妹よ、問題ない。吉乃信也と残りのクエストの件は、俺達の方で話しておくからな」
喜び勇んで願い出た花音の頼みに、有はあっさりと承諾した。
ギルドホームの散策と聞いて、奏良は不意を突かれたように顔を硬直させる。
「有、悪いが、僕は愛梨を守らないといけない。吉乃信也と残りのクエストの件は、有達に全面的に任せよう。僕はこのまま、愛梨の護衛をする」
「奏良よ。本音がバレバレだぞ」
期待を膨らませたような奏良の声に応えるように、有はやれやれと呆れたように眉根を寄せた。
「そういえば、君はいつまでここにいるつもりだ?」
「これから行く場所は俺が所属している『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドホームだ! それに吉乃信也を捕らえたからといって、敵が愛梨を狙ってこないとは限らないからな!」
奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせる。
「なら、今後も君の出番はない。僕が愛梨を守るからな。ただひたすら、後方で援護してくれ」
「……おまえ、いつも一言多いぞ」
奏良の言及に、徹は恨めしそうに唇を尖らせた。
「これって、一体……」
紘が語った予言めいた導きに思い悩んでいた勇太は予想外の騒動を目の当たりにしたことで唖然としてしまう。
すると花音は悪戯っぽく目を細める。
「あのね、勇太くん。心配しなくても大丈夫だよ。奏良くんと徹くん、愛梨ちゃんのために気合いを入れて頑張ろうとしているだけだから」
「そ、そうなのか……」
探りを入れるような花音の説明に、勇太は窮地に立たされた気分で息を詰めた。
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