「リノアの意識を覚醒させれば、美羅はデータの集合体に戻るはずだ。そうすれば、愛梨にはいつでも会える。だから、大丈夫だ」
「リノアの意識を覚醒させれば、美羅はデータの集合体に戻るはず。そうすれば、愛梨にはいつでも会える。だから、大丈夫だよ」
「うん。望くん、リノアちゃん、ありがとう」
望とリノアの励ましの言葉に、花音は嬉しそうな顔で勢いよく抱きついてきた。
反射的に抱きとめた望は思わず目を白黒させる。
「「花音?」」
いつもどおりの花咲くようなーーだけど、少し泣き出してしまいそうな笑みを浮かべる花音に戸惑いとほんの少しの安堵感を感じながら、望とリノアは訊いた。
いろんな意味で混乱する望の耳元で、花音は躊躇うようにそっとささやいた。
「望くん、無理はしないで。私達、これからも望くん達を支えられるように頑張るから。すごーく頑張るからね」
花音の包み込むような温かい言葉が、望の心に積もっていた不安を散らしていった。
「花音、ありがとうな」
「花音、ありがとう」
「うん」
花咲くように笑う花音の姿を、望とリノアはどこか眩しそうに見つめた。
その様子を見守っていた有は、妹を気遣うように提案する。
「望、妹よ、これからも愛梨が仮想世界で変われるように善処するつもりだ」
「有、ありがとうな」
「有、ありがとう」
「お兄ちゃん、ありがとう」
有の配慮に、望とリノア、そして花音は嬉しそうに応えた。
「ただ、先程、『アルティメット・ハーヴェスト』から入った情報では、今回の吉乃かなめの件、そして美羅の残滓の件で、『レギオン』と『カーラ』は愛梨を執拗に狙ってくる可能性があるということだ。現実世界に戻ったら、椎音紘達は何らかの対処を行うようだぞ」
愛梨を守りたかった。生きていてほしかった。
ーー『不変』を望んだのはきっと紘(あに)の心だったのだろう。
花音は意気込むと今日の思い出を心の中に仕舞う。
「望くん、リノアちゃん、お兄ちゃん、これからもみんなで愛梨ちゃんを守っていこうね!」
それは『キャスケット』のギルドメンバー達と『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達だけが交わした大事な誓いだった。
「マスター、有様。ペンギン男爵様と一緒に湖畔の街、マスカットを守ってみせます」
ログアウトフェーズに入った望達を引き止めたのは、神妙な表情を浮かべたプラネットだった。
プラネットはNPCのため、このギルドに一人で留まることになる。
「マスター、有様、これからもギルドの管理はお任せ下さい。ギルドホームを美しく生まれ変わらせてみせます」
「……望よ。明日、ギルドの様子を見にログインするつもりだ」
「その方がいいかもな」
プラネットの決意に満ちた真剣な眼差しを見て、有と望は一抹の不安を滲ませたのだった。
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