かなめの狙いは以前変わらず、美羅の真なる覚醒のために望と愛梨を捕らえることだ。
逆にそれを利用すればいいという望達の結論さえも、かなめの意思を突き動かす。
椎音愛梨に特殊スキルを使わせるーー。
その絶対目的を叶えるために、今までかなめ達は最善な方法を模索してきたのだから。
『我が願いをーー』
光に包まれ、視界が定かではない状態。
かなめがいる方向が定まなくては、反撃することさえ叶わない。
かなめの明晰夢の世界に呑み込まれようとした瞬間ーー
「そうはさせません!」
その時、イリスが望達を護るように上空から槍を振り下ろす。
「……っ!」
その初撃を辛くも避けたかなめはすぐに異変に気付く。
「行け!」
視界の見通せない最中、徹が光龍を使役していることを。
光龍は身体を捻らせてかなめへと迫った。
「ーーっ!」
虚を突かれたせいなのか、かなめは体勢を立て直すこともできずにまともにその一撃を喰らって吹き飛ばされる。
「……まさか、あなた方は光に包まれたこの状況下で、私の姿が見えているのですか?」
かなめが投げかけた疑問に答えることもないまま、イリスは槍を上下反転させると、すぐさま振り上げの第二撃を放つ。
初速でいえばニコットには劣るその速度、しかしイリスの攻撃の神髄は此処から始まる。
かなめがそれを受けると、すぐさま光龍の猛攻に攻められる。
無数の甲高い衝突音と重い衝撃。
光龍、そして上空を旋回するイリスの手は止まらない。
一瞬でいて、永遠のような交わり、その交錯は一向に止まらない。
徹達は緻密な連携と速度で四方八方から攻勢をかけ続けた。
対するかなめは防戦一方になる。
「徹!」
「……っ」
そこにシルフィの加勢が加わり、かなめは後退を余儀なくされた。
部屋全域を包んでいた光も消え失せる。
「この状況下で妨害だと?」
「鶫原徹の召喚した精霊の力ですね。鶫原徹が契約している精霊は様々な力を持っています。光の遮断を用いて、私達を欺くことなど、たわいもないのでしょう」
『カーラ』のギルドメンバー達の疑問に捕捉するように、かなめは動揺を落ち着かせるために呼吸を挟んだ。
徹は今回、複数の高位ギルドと遭遇することに備えて、予め契約している精霊『シルフィ』を呼んでいる。
『シルフィ』は音の遮断以外にも、その気になれば気配遮断、魔力探知不可まで行うことができた。
今回、徹はかなめの光の魔術に対抗するために、自身とイリスに対して光の遮断を用いたのだ。
その分、魔力消耗は激しいが、望達を護るための最適解だった。
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