「今の美羅は、人智を超えた成長を遂げる『究極のスキル』そのものであり、時には特殊スキルの使い手であるあなた達の力を超えるほどの絶対的な力を持っています」
「ーーもしかして、前に会った時と同じ言葉を繰り返しているのか」
「ーーもしかして、前に会った時と同じ言葉を繰り返しているの」
その美羅の残滓の言葉を聞いた瞬間、望とリノアは息を呑んだ。
望は改めて、かなめが語っていた真実を思い出す。
『事実……? それってつまり、彼女は美羅なのか?』
『事実……? それってつまり、彼女は美羅なの?』
『はい。正確には美羅様の残滓です。ここは『創世のアクリア』のプロトタイプ版。久遠リノアに宿っている吉乃美羅様の『ゲーム用のモデル』が残っていても不思議ではないはずです』
かなめが語った美羅の残滓の顛末を思い起こし、望とリノアは痛ましげな表情を見せる。
つまり、目の前にいる美羅の残滓は、リノアに宿っている美羅の『ゲーム用のモデル』ーーNPCということになる。
NPCである彼女は、常に同じ行動を繰り返していた。
過去のデータをモデリングされているからなのか?
何故、どうしてという疑問が、望の思考を埋め尽くす。
しかし、いくら考えても答えは出ない。
困惑する望を置き去りにして、美羅の残滓は淡々と続ける。
「まずは久遠リノアから美羅を解放させることによって、美羅という『救世の女神』をデータの集合体に戻す必要があります。そのためには久遠リノアの意識が必要不可欠です」
「……美羅の残滓が、過去のデータをモデリングされているのは間違いないようだな」
美羅の残滓の宣告に、有は驚きと同時に合点がいく。
「恐らく、他の美羅の残滓も、過去のデータをモデリングされているはずだ」
「ええっ、お兄ちゃん、そうなのかな? 前に会った時は、美羅ちゃんの残滓と普通に会話できていたよ」
「妹よ、あの時は望の特殊スキルの力があったおかげで、普通に会話ができていたのだろう」
花音が声高に疑問を口にすると、有はため息をついて応えた。
「望、妹よ。機械都市『グランティア』に赴くことができれば、美羅を消滅させる方法の足掛かりを掴むことができるはずだ」
「ああ、そうだな」
「うん」
有が事実を如実に語ると、望と花音は納得したように首肯する。
「絶対にリノアを救ってみせる!」
「「勇太くん……」」
望とリノアは、勇太の決意に目を見張り、息を呑んだ。
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