特殊スキル。
世界を牛耳る力と謳われ、現実世界をも干渉する力。
そして、全ての世界そのものを改変させることすら可能な、万能の力。
世界の根源へと繋がる話に、望はふと座りの悪さを覚える。
「蜜風望、椎音愛梨。……美羅様はあなた方をご所望しております。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」
「何度も言うけれど、俺は協力するつもりはない」
「何度も言うけれど、私は協力するつもりはない」
かなめの戯れ言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。
予測できていた望とリノアの即答には気を払わず、かなめは確かな事実を口にする。
「あなた方が如何に阻止しようとしても、美羅様の真なる力の発動は必ず行われます。その時、あなた方を通して、美羅様の神託が世界に降り注ぎます」
「俺は協力するつもりはない!」
「私は協力するつもりはない!」
望とリノアの断言すらも無視して、かなめは一拍おいて流れるように続ける。
「美羅様の真なる力の発動が成されれば、あなた方の認識も変わります。これは、全て定められた事。世界の安寧のためなのです」
「「ーーっ」」
付け加えられた言葉に込められた感情に、望とリノアは戦慄した。
当然だ。
協力するかどうかについては、既に結論が出ている。
協力しない。
望は何度も、そう答えたはずだ。
「蜜風望、そして、椎音愛梨。美羅様は、あなた方の力を必要としているのです。どうか、美羅様に力をお貸し下さい」
語尾を上げた問いかけのかたちであるはずなのに、かなめは答えを求めていない。
いや、答えは求めているのだ。
ーー協力する。
その決まりきった答えだけを。
「ーーくっ」
「ーーっ」
どうしようもなく不安を煽るかなめの懇願に、望とリノアは焦りと焦燥感を抑えることができずにいた。
沈黙があった。
張りつめているようで間延びしているような沈黙。
心が揺れているようで微動だにしない沈黙。
「望達が協力するわけないだろう! 美羅様の神託なんて必要ない!」
その沈黙を打ち破ったのは勇太だった。
その声は周囲へ清々しいほど高らかに鳴り響く。
「俺はみんながそれぞれ切り拓(ひら)く未来を生きたい! 未来が決まっているなんてつまらないからな!」
「「勇太くん!」」
勇太の決意に、望とリノアは喜びに満ちたように応える。
「美羅の真なる力の発動がしなくても、未来は変えられるってことを証明してやる!」
勇太は両手で大剣を構えると、かなめと向き合った。
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