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留菜マナ
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第四百八十七話 君の心に降るのは②

公開日時: 2024年6月14日(金) 16:30
文字数:1,017

特殊スキル。

世界を牛耳る力と謳われ、現実世界をも干渉する力。

そして、全ての世界そのものを改変させることすら可能な、万能の力。


世界の根源へと繋がる話に、望はふと座りの悪さを覚える。


「蜜風望、椎音愛梨。……美羅様はあなた方をご所望しております。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」

「何度も言うけれど、俺は協力するつもりはない」

「何度も言うけれど、私は協力するつもりはない」


かなめの戯れ言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。


予測できていた望とリノアの即答には気を払わず、かなめは確かな事実を口にする。


「あなた方が如何に阻止しようとしても、美羅様の真なる力の発動は必ず行われます。その時、あなた方を通して、美羅様の神託が世界に降り注ぎます」

「俺は協力するつもりはない!」

「私は協力するつもりはない!」


望とリノアの断言すらも無視して、かなめは一拍おいて流れるように続ける。


「美羅様の真なる力の発動が成されれば、あなた方の認識も変わります。これは、全て定められた事。世界の安寧のためなのです」

「「ーーっ」」


付け加えられた言葉に込められた感情に、望とリノアは戦慄した。

当然だ。

協力するかどうかについては、既に結論が出ている。

協力しない。

望は何度も、そう答えたはずだ。


「蜜風望、そして、椎音愛梨。美羅様は、あなた方の力を必要としているのです。どうか、美羅様に力をお貸し下さい」


語尾を上げた問いかけのかたちであるはずなのに、かなめは答えを求めていない。

いや、答えは求めているのだ。

ーー協力する。

その決まりきった答えだけを。


「ーーくっ」

「ーーっ」


どうしようもなく不安を煽るかなめの懇願に、望とリノアは焦りと焦燥感を抑えることができずにいた。


沈黙があった。

張りつめているようで間延びしているような沈黙。

心が揺れているようで微動だにしない沈黙。


「望達が協力するわけないだろう! 美羅様の神託なんて必要ない!」


その沈黙を打ち破ったのは勇太だった。

その声は周囲へ清々しいほど高らかに鳴り響く。


「俺はみんながそれぞれ切り拓(ひら)く未来を生きたい! 未来が決まっているなんてつまらないからな!」

「「勇太くん!」」


勇太の決意に、望とリノアは喜びに満ちたように応える。


「美羅の真なる力の発動がしなくても、未来は変えられるってことを証明してやる!」


勇太は両手で大剣を構えると、かなめと向き合った。

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