「美羅の残滓が、この部屋の秘密を解くための鍵だと言っていた。まずは吉乃かなめを始めとした、この場にいる『レギオン』と『カーラ』を打ち倒した後、いろいろと彼女から情報を探ってみるしかないよな」
美羅の残滓から情報を得るのは容易ではない。
だからこそ、徹は敢えてそう結論づける。
あらゆる可能性を拾い集めるしかないと。
「いろいろと試すか。君はどんな手段を用いて美羅の残滓から聞き出すつもりだ」
奏良は腕を組み、少しだけ考えた様子をみせる。
「そもそも、美羅の残滓と会話らしきものが成立するとは思えないな。君が考えている手段で問いただしても話すとは限らない」
「……おまえ、いつも一言多いぞ」
奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。
「とにかく、今の美羅は人智を超えた成長を遂げる『究極のスキル』そのものであり、時には特殊スキルの使い手の力を超えるほどの絶対的な力を持っている。残滓と化した思念でも、何か得られるかもしれない」
「そうだな。ただ、少なくとも、彼女はこの戦いに関わってくることはなさそうだな」
「そうだね。ただ、少なくとも、彼女はこの戦いに関わってくることはなさそうだね」
その徹の言葉を聞いた瞬間、望とリノアは眸に困惑の色を堪える。
美羅の残滓である少女は、こちらの状況がまるで見えていないように花摘みに夢中になっていた。
まるで望達が見えていないみたいだ。
NPCである彼女は、常に同じ行動を繰り返している。
過去のデータをモデリングされているからなのか?
何故、どうしてという疑問が、望の思考を埋め尽くす。
しかし、いくら考えても答えは出ない。
「美羅の残滓である少女に接触するのは後回しだ。望、リノアよ、まずは吉乃かなめを倒してほしい」
「「分かった」」
有の指示に、望とリノアは前を見つめてかなめの位置を見定めた。
「奏良、プラネット、妹よ。吉乃かなめのもとに行くまでの活路を切り開いてほしい」
「うん」
「はい」
「行き当たりばったりだな。まあ、この状況でリスクの少ない案はないか」
有の方針に、それぞれの武器を構えた花音とプラネットが頷き、奏良は渋い顔で承諾した。
「よーし、一気に行くよ!」
花音は跳躍し、『カーラ』のギルドメンバー達が召喚したモンスター達へと接近した。
『クロス・リビジョン!』
今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスター達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスター達は身動きを封じられた。
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