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留菜マナ
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第ニ百六十三話 唯一無二の想い③

公開日時: 2021年6月8日(火) 16:30
文字数:1,461

「「勇太くん」」


望とリノアは活路を開くために、勇太に声を掛ける。


「力を貸してくれないか」

「力を貸してほしいの」

「何か、手があるのか?」


望とリノアの言葉に反応して、勇太がとらえどころのない空気を固形化させる疑問を口にした。


「恐らく、俺が動いた瞬間、リノアの座標を移動させられる。勇太くんには、転移させられたリノアの動きを止めてほしいんだ」

「恐らく、私が動いた瞬間、私の座標を移動させられる。勇太くんには、転移させられた私の動きを止めてほしいの」

「分かった」


勇太は今までの情報を照らし合わせて、状況を掴もうとする。


「ふむ。望達が手嶋賢の意表を突くためには、やはり『レギオン』と使い魔達の足止めは必須か」


『レギオン』のギルドメンバー達の猛攻を回避しながらも、有はインターフェースを表示させて、『這い寄る水晶帝』の入口までの最短ルートを検索していく。


「妹よ、頼む」

「うん」


有の指示に、鞭を振るっていた花音は勇ましく点頭した。


「よーし、一気に行くよ!」


花音は跳躍し、使い魔達へと接近した。


『クロス・リビジョン!』


今まさに有達に襲いかかろうとしていた使い魔達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、使い魔達は身動きを封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。

しかし、花音の防衛をすり抜けて、使い魔達は有達へと迫った。


「お兄ちゃん、お願い!」

『元素復元、覇炎トラップ!』


花音の合図に、有は襲いかかってきた使い魔達に向かって杖を振り下ろした。

有の杖が床に触れた途端、空中に炎のトラップシンボルが現れる。

使い魔達がそれに触れた瞬間、熱き熱波が覆い、炎に包まれた。

だが、『レギオン』のギルドメンバー達が炎のトラップを振り払い、それに続くように使い魔達が襲いかかってくる。


「奏良よ、頼む」

「言われるまでもない」

「くっーーっ」


有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。

発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、『レギオン』のギルドメンバー達と使い魔達を怯ませる。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き、使い魔達は次々と爆せていく。

花音達の攻撃により、使い魔達は半分近くまで減った。

有達のアシストを生かして、望とリノアは賢へと迫る。

だが、それでも『レギオン』のギルドメンバー達は前に進み出て、行く手を阻むように包囲を固める。


「切りがないな」

「切りがないね」


包囲を崩そうしても、すぐに強固な陣形を組まれてしまう。

望とリノアは剣を構え、活路を見出だすために周囲を見渡した。

必然的に使い魔とモンスター達の対策は、花音達に任せることになる。

望とリノアが駆け出し、賢に向かって一閃したーーその瞬間だった。


「「ーーっ」」


リノアの位置が移動し、望と対面するかたちへと変えられる。


「勇太くん、頼む!」

「勇太くん、お願い!」

『フェイタル・トリニティ!』

「……そう来るか」


望とリノアの呼び掛けと同時に勇太は跳躍し、賢の不意を突くようなかたちで、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、リノアの座標を移動させようとした賢を襲う。


「なっーー」


視線を誘起された賢は後方に下がると、自身のアイテム生成のスキルを用いてトラップスキルを発動させる。

賢には相殺されてしまったが、しかし、勇太は光を纏った大剣を振り回し、周囲にいた『レギオン』のギルドメンバー達を攻撃ごと吹き飛ばした。

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