兄と妹とVRMMOゲームと

留菜マナ
留菜マナ

第ニ百八十一話 水想の言伝④

公開日時: 2021年6月26日(土) 16:30
文字数:1,363

「よーし、一気に行くよ!」


花音は跳躍し、烏賊型のモンスターへと接近した。


『クロス・リビジョン!』


今まさに望達に襲いかかろうとしていたモンスターに対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスターは身動きを封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。


「逃がしません!」


プラネットは吹っ切れた言葉ともに、両拳を花音の攻撃から逃れたモンスターへと叩きつけた。

それと同時に高濃度のプラズマが走り、爆音が響き渡る。


「これで終わりだ!」

「これで終わり!」


煙が晴れた瞬間の間隙を狙って、望とリノアはモンスターへと攻撃を叩き込む。

しかし、HPを示すゲージは0になったものの、モンスターはすぐに完全復活して青色の状態に戻ってしまう。

その有り様は、まるでゾンビのようである。


「何度倒しても、復活するなんて反則だよ!」


力尽きたはずのモンスターは、やがて立ち上がり、何事もなかったように襲いかかってくるという違和感のある事実。

それを間近で目撃した花音は、不満そうに頬を膨らませてみせる。


「もう一回、『クロス・リビジョン!』」


HPを示すゲージは減ったものの、花音は止めを刺しに行かずに鞭を振るう手を止める。

これ以上ダメージを与えて倒してしまえば、また先程のように復活してしまうからだ。

それに麻痺の効果で、モンスターはしばらく身動きが取れない。


「切りがないな」

「ーーっ」


奏良は威嚇するように、モンスターの回復に動こうとした『レギオン』のギルドメンバー達に向けて、連続で発泡する。

風の弾が『レギオン』のギルドメンバー達に衝突し、大きくよろめかせた。


『元素還元!』

『復元!』


有は、奏良へと注意を向けた『レギオン』のギルドメンバー達を牽制するように地面に向かって杖を振り下ろしたが、同じスキルのプレイヤーによって崩壊させようとしていた地面を再び、生成されてしまう。


このまま、この状況で戦うのはまずいなーー。


徹の頭の中で警鐘が鳴る。

光龍を使役していた徹は、改めて周囲を見渡した。

徹達の猛攻を受けたことで、『レギオン』のギルドメンバーの魔術のスキルの使い手達はモンスターへの援護魔術を止めらずを得ない状況に追い込まれていた。

『レギオン』のギルドメンバーの魔術のスキルの使い手達の攻撃は、徹達『アルティメット・ハーヴェスト』へと矛先を変えている。


「ここから何とかして、望達が転送アイテムを使えるようにしないといけないな」


徹は少し躊躇うようにため息を吐くと、複雑な想いを滲ませる。


「俺と魔術のスキルの使い手達で、モンスターの背後に居る『レギオン』の魔術のスキルの使い手達へと攻める。他のみんなはこのまま、周辺の『レギオン』のギルドメンバー達に対処してくれないか!」


徹は気持ちを切り替えるように一呼吸置くと、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達はそれに応えた。

全員がレア装備を身につけ、それぞれの武器を『レギオン』のギルドメンバー達に突きつけてくる。


「お兄ちゃん、これからどうしたらーー」

「妹よ、まずは、あのモンスターの光の加護を何とかする必要がありそうだ」


陣を張った『アルティメット・ハーヴェスト』の動きを見て、有は戸惑いの色を滲ませる花音の想いに応えた。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート