城門を護っていたガーゴイル達は、城に入った望達を追ってはこなかった。
しかし、城の中で待ち構えていた『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が、望達の存在に気づき、こちらに視線を集中させた。
「……っ」
まるで見定めるような凝視に、望は固唾を呑む。
正体がバレないか、内心、穏やかではなかった。
とはいえ、挙動不審のままでは返って怪しまれると思い直し、望とリノアはゆっくりと彼らのもとに歩を進める。
「おい、今まで何をやっていたんだ! まもなく、特殊スキルの使い手である蜜風望達がここを訪れるというのに!」
『レギオン』のギルドメンバーの一人が発した叱責。
予想外な発言だと望は思った。
てっきり、『シャングリ・ラの鍾乳洞』の目撃情報を頼りに、彼らが愛梨を捕らえに出向いたことは知れ渡っているものだと思っていた。
だが、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達は望達のことを遅れてやってきた者達だと認識している。
もしかしたら、背格好から別人だと判断したのかもしれない。
「「申し訳ございません。『アルティメット・ハーヴェスト』の妨害を受けていました」」
望とリノアは丁重に陳謝する。
「まあ良い。かなめ様の指示だ。かなめ様が戻ってくるまで、このロビーで待機するように」
「かなめ様の指示? 今回の作戦の指揮はかなめ様なのですか?」
『レギオン』のギルドメンバーの意外な発言に、前に出た徹は少し逡巡してから訊いた。
「おいおい。そんなことまで知らないのかよ」
「このダンジョンを構築したのは信也様とかなめ様だ。ダンジョンの深部まで知っているからな。信也様が『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドホームに囚われている以上、当然、かなめ様がこの場の指揮を執るのは当たり前だろう」
彼らの説明を受けて、かなめが何故、この場にいるのか腑に落ちた。
望はかなめが指揮を執っている理由を察する。
『吉乃信也と吉乃かなめがあのダンジョンに付加したのは明晰夢の複合。吉乃信也の明晰夢の力と吉乃かなめの明晰夢の力を使って、ダンジョンを無理やり構築させたんだ』
徹があの時、語った事実。
様々な記憶の断片が、望に一つの真実を呼び起こす。
「……もしかしたら、吉乃かなめは今、あの部屋にいるかもしれない」
「……もしかしたら、吉乃かなめは今、あの部屋にいるかもしれないね」
かなめの足取りを掴めば、あの部屋の秘密に迫る可能性が引き上がる。
これから何かが起こると仮定すれば、そこだと思いながら。
望とリノアの瞳には複雑な感情が渦巻いていた。
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