「よーし、一気に行くよ!」
望達の結束の強さを皮切りに、花音は跳躍し、モンスターへと接近した。
『クロス・リビジョン!』
今まさに花音達に襲いかかろうとしていたモンスターに対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。
花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、モンスターは身動きを封じられた。
さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。
「望くん、リノアちゃん、ここは任せて!」
「「――っ」」
花音が発した激は、仲間の加勢に向かいたいと願う望の心を沈める。
望とリノアがこの戦いを指揮している信也に攻撃を仕掛ければ、恐らく位置座標をずらされたリノアもまた、有達、もしくは勇太達に同じ攻撃を加えることになる。
なら、今この場でできるだけ仲間を傷つけないで済む攻撃方法を模索しなくてはならない。
仲間を救う力を得たはずなのに、その力で逆に仲間を傷つけてしまうかもしれない。
状況を覆る力を得ているとはいえ、望が信也に対して蒼の剣を振るえば、危機的な状況に陥りかねない。
「喰らえ!」
奏良は再度距離を取って、続けざまに四発の銃弾を放った。
弾は寸分違わず、モンスターの頭部に命中する。
HPを示すゲージは少し減ったものの、いまだに青色のままだ。
「HPがなかなか減らない。切りがないな!」
奏良はさらに迫り寄るモンスターに合わせて、銃の弾を全方位に連射する。
放たれた弾は、対空砲弾のように相手の攻撃にぶつかり、モンスターを怯ませた。
激しい撃ち合いによって、モンスターの動きを阻害していく。
「妹よ、このモンスターを足止めするぞ。倒すのは望達が吉乃信也のもとにたどり着いてからだ」
「……うん!」
有の指示に、花音は意気込むように肯定する。
有達はモンスターと『レギオン』のギルドメンバーを相手に勇猛果敢に立ち向かっていく。
「とりあえず、みんな、一度、回復アイテムを使ってHPを回復させるぞ!」
有は腕を組んで考え込む仕草をすると、唸り声を上げるモンスターの様子を物言いたげな瞳で見つめた。
「奏良、プラネット、妹よ。これで少し楽になるはずだ」
「うん。お兄ちゃん、ありがとう」
「有様、ありがとうございます」
「こんなに敵が多いと先が思いやられるな」
有はモンスター達を刺激しないように近づくと、花音とプラネットと奏良に回復アイテムを放った。
プラネットと顔を見合わせて、屈託のない笑顔でやる気を全身にみなぎらせる花音。
そして先の戦いを見据えながら、額を押さえて途方に暮れている奏良。
三人は受け取った回復アイテムを手に戦線を離れると、そこで一息つき、回復アイテムを口に含む。
花音と奏良とプラネットはHPを少しずつ回復させていく。
その間、望とリノアが連携攻撃を仕掛け、モンスターの注意を引いていた。
「望くん、リノアちゃん、お待たせ!」
「状況が状況だからな。愛梨を護るためにも全力を尽くさせてもらおう」
「マスターと愛梨様とリノア様は必ず、お守りします」
望と入れ代わるように、花音とプラネットが前衛に立ち、後方で奏良が風の魔術を放つ。
あくまでも狙いは望とリノアを信也のもとに行かせることだ。
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