「何だ、これは?」
「攻撃が次々と吸い込まれてい……っ!」
「私の召喚したモンスターが……」
花音達を中心に描かれた光の多角形。
風の属性を内包した珠状の光盾は、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が繰り出した攻撃、召喚したモンスター達全てを吸収していく。
「愛梨ちゃんの特殊スキル、すごーい!!」
まさに絶対防壁と言わんばかりの光景に、花音は両手を広げて喜び勇んだ。
その隙に信也の射程距離へと入った奏良は、弾丸を素早くリロードする。
「奏良よ、頼む」
「言われるまでもない」
有の指示に、信也から距離を取った奏良は銃を構えた。
「くっ……、この位置からあの銃弾を受けるわけにはいかないな!」
紘と相対していた信也は窮地に立たされた気分で息を詰める。
だが、そう判断しても、信也の動線には紘が立ち塞がった。
「どんな蕾でも、いつかは花開くものだ。そうだろう、美羅!」
たとえ、それが罪炎の花でもいつかは花開くものだと信也は信じていた。
仮想世界だけに咲く淡き花々。
過去に繋がる愛の花。
遠く離れた鎮魂歌(レクイエム)を乗り越えて、信也は力強く宣言する。
「美羅、頼む! この状況を変えるには君の明晰夢の力が必要だ!」
強大無比な『明晰夢』の力ーー覚悟の焱(えん)は優しく罪を吞み込んでいくことになるだろう。
罪炎が世界を焼くように。
有達が怯える事のないように。
長く苦しむことのないようにーー信也は魔力を奔らせる。
だがーー。
「吉乃信也。君の『明晰夢』の力は発動することはない。私が全力でそれを阻止する」
紘の発意を合図に、奏良の放った弾丸が信也へと向かう。
「喰らえ!」
「……くっ」
「し、信也様、ぐわっ……!」
奏良が放った愛梨の特殊スキルが込められた弾は信也だけではなく、彼の盾になろうとした他の『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達さえも呑み込んでいく。
その弾は彗星の如く、虹を纏う光芒と化す。
絶え間なく弾丸が放たれるその光景は、まさに流星群のような輝きを見せる。
すまない、賢、かなめ。
約束は守れそうもない……。
奏良が放つ流星の弾を前に、信也はもはや為す術もない。
やがて、信也は閃光に塗り潰されて、断末魔を上げながら瀕死の状態で地に伏せた。
愛梨の特殊スキルを生かして、徹とイリスを始めとする『アルティメット・ハーヴェスト』の行動を円滑に回すことによって、『レギオン』と『カーラ』、二大高位ギルドの猛攻に対抗していく。
そして他の誰でもない、この戦いを指揮している信也を捕らえる。
有のその決断はこの戦いを終着点へと収束していく要になった。
指揮官である信也を失った『レギオン』と『カーラ』は『アルティメット・ハーヴェスト』に押され、撤退を余儀なくされた。
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