「牢獄に閉じ込められているNPCの少女の救出。あなたはどう思いましたか?」
「「それはーー」」
予測出来ていた望の言及に、かなめは訥々と語った。
望は改めて、かなめが口にした言葉を脳内で咀嚼する。
牢獄に閉じ込められているNPCの少女の救出ーー。
「NPCの少女は、リノアだと思っていた」
「NPCの少女は、私だと思っていた」
不可解な空気に侵される中、望とリノアは慄然とつぶやいた。
そうーー。
もし、今回のダンジョン調査で、『レギオン』と『カーラ』による襲撃があるとすれば、『サンクチュアリの天空牢』で起こると思っていたのだ。
望の思いとは裏腹に、かなめは夢見るような表情を見せる。
「牢獄に閉じ込められているNPCの少女の救出。実際は、そのような少女は存在しません」
「「なっ!」」
「いないの!」
想定外の答えに、望とリノア、そしてシルフィは絶句した。
「お兄様が告げていたはずです。『創世のアクリア』のプロトタイプ版には、あなた方の知らない事実が隠されている、と。だからこそ、あなた方はプロトタイプ版のみに存在する、新たなダンジョンを選んだのですよね」
「「ーーっ」」
かなめの追及に、望とリノアは事態の重さを噛みしめる。
確かに、新たなダンジョンを選んだ発端は、信也のあの言葉を聞いたからだ。
しかし、それは望達が、『レギオン』と『カーラ』の術中に完全に嵌まっている事を意味した。
「新たなダンジョンに、特殊スキルのーー究極のスキルの秘密が隠されているのは事実です。ですが、新たなダンジョンの構造は、私達の方で自由に変えることができます」
「ダンジョンの構造を変えられるのか?」
「ダンジョンの構造を変えられるの?」
かなめの言葉に、望は戸惑いながらも疑問を口にした。
リノアもまた、不思議そうに同じ動作を繰り返す。
「はい。プロトタイプ版のダンジョンやフィールドの権限は、開発者側にあります」
「今まで『レギオン』と『カーラ』による大規模な計画が秘匿出来ていたように、プロトタイプ版でも開発者である特典を生かしているのか」
「今まで『レギオン』と『カーラ』による大規模な計画が秘匿出来ていたように、プロトタイプ版でも開発者である特典を生かしているの」
かなめから開発者の顛末を聞き、望とリノアは痛ましげな表情を見せる。
かなめは両手を広げて、静かな声音で同じ言葉を繰り返した。
「さあ、蜜風望、そして椎音愛梨。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」
「悪いけれど、俺は協力するつもりはない」
「悪いけれど、私は協力するつもりはない」
かなめの戯れ言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。
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