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留菜マナ
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第百七十五話 忘れじの茸雲③

公開日時: 2021年3月12日(金) 16:30
文字数:1,104

「牢獄に閉じ込められているNPCの少女の救出。あなたはどう思いましたか?」

「「それはーー」」


予測出来ていた望の言及に、かなめは訥々と語った。

望は改めて、かなめが口にした言葉を脳内で咀嚼する。


牢獄に閉じ込められているNPCの少女の救出ーー。


「NPCの少女は、リノアだと思っていた」

「NPCの少女は、私だと思っていた」


不可解な空気に侵される中、望とリノアは慄然とつぶやいた。


そうーー。

もし、今回のダンジョン調査で、『レギオン』と『カーラ』による襲撃があるとすれば、『サンクチュアリの天空牢』で起こると思っていたのだ。


望の思いとは裏腹に、かなめは夢見るような表情を見せる。


「牢獄に閉じ込められているNPCの少女の救出。実際は、そのような少女は存在しません」

「「なっ!」」

「いないの!」


想定外の答えに、望とリノア、そしてシルフィは絶句した。


「お兄様が告げていたはずです。『創世のアクリア』のプロトタイプ版には、あなた方の知らない事実が隠されている、と。だからこそ、あなた方はプロトタイプ版のみに存在する、新たなダンジョンを選んだのですよね」

「「ーーっ」」


かなめの追及に、望とリノアは事態の重さを噛みしめる。

確かに、新たなダンジョンを選んだ発端は、信也のあの言葉を聞いたからだ。

しかし、それは望達が、『レギオン』と『カーラ』の術中に完全に嵌まっている事を意味した。


「新たなダンジョンに、特殊スキルのーー究極のスキルの秘密が隠されているのは事実です。ですが、新たなダンジョンの構造は、私達の方で自由に変えることができます」

「ダンジョンの構造を変えられるのか?」

「ダンジョンの構造を変えられるの?」


かなめの言葉に、望は戸惑いながらも疑問を口にした。

リノアもまた、不思議そうに同じ動作を繰り返す。


「はい。プロトタイプ版のダンジョンやフィールドの権限は、開発者側にあります」

「今まで『レギオン』と『カーラ』による大規模な計画が秘匿出来ていたように、プロトタイプ版でも開発者である特典を生かしているのか」

「今まで『レギオン』と『カーラ』による大規模な計画が秘匿出来ていたように、プロトタイプ版でも開発者である特典を生かしているの」


かなめから開発者の顛末を聞き、望とリノアは痛ましげな表情を見せる。

かなめは両手を広げて、静かな声音で同じ言葉を繰り返した。


「さあ、蜜風望、そして椎音愛梨。女神様のために、その全てを捧げなさい。あなた方の意思は、未来永劫、女神様の意思へと引き継がれていくのですから」

「悪いけれど、俺は協力するつもりはない」

「悪いけれど、私は協力するつもりはない」


かなめの戯れ言に、望とリノアは不満そうに表情を歪めた。

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