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留菜マナ
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第三百三話 夢の宿り木②

公開日時: 2021年8月13日(金) 16:30
文字数:1,465

「よーし、一気に行くよ!」


望達のその想いを皮切りに、花音は跳躍し、『レギオン』のギルドメンバー達へと接近した。


『クロス・リビジョン!』


今まさに花音達に襲いかかろうとしていた『レギオン』のギルドメンバー達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った麻痺の痺れによって、前衛に立っていた『レギオン』のギルドメンバー達の幾人かは身動きを封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。


「吉乃かなめさん。望くん達のもとには行かせないよ!」


打って出たその先制攻撃を要に、鞭を振るった花音は跳躍し、かなめへと接近した。


『クロス・レガシィア!』

「今度は西村花音さん。あなたが私の相手ですか……」


再度、魔術を発動しようとしたかなめに対して、花音がそのまま、天賦のスキルで間隙を穿つ。

しかし、瞬間の隙を突いた花音のスキルを前にしても、かなめに動揺の色はなかった。


「残念ですが、その攻撃は防がせてもらいます」


かなめは片手をかざすと、花音の鞭を防ぐための光の魔術の防壁を生み出す。


「奏良くん、お願い!」

「言われるまでもない」


花音の呼びかけに、奏良は弾丸を素早くリロードし、かなめに照準を合わせた。

その直後、発砲音と弾着の爆発音が派手に響き渡ったが、それらをかなめは光の魔術の防壁を用いて防いでしまう。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き渡った。

プラネットの猛攻により、かなめが張った光の魔術の防壁は爆せ、罅が入る。


「吉乃かなめ様への敵意確認。交戦を一時中断し、これより援護攻撃に入ります」


それを火蓋として、ニコットは数本のダガーを花音に向けて投げようとした。


「させません!」


しかし、その不意打ちは、プラネットには見切られていた。

前に出たプラネットは反射的に飛んできたダガーを弾くと、その方向に向かって電磁波を飛ばした。


「ーーっ」


初擊の鋭さから一転してもたついたニコットは、電磁波の一撃をまともに喰らい、苦悶の表情を浮かべる。


「ニコットは、妨害対象を排除します」


イリスと対峙していたニコットは、動きを阻害してきたプラネットを注視する。

次撃のニコットの動きを見計らったように、イリスは槍を振りかざす。


「それは、こちらの台詞です。彼らとともに今すぐ、ここから立ち去りなさい」

「お断りします。ニコットはこのまま、指令を続行します」

「そうですか……」


イリスの言葉に返ってきたのは、提案でも懐柔でもなく、断固とした拒絶。

その折りを見計らって、イリスはニコットの追撃を捌き、花音達のもとへと跳躍した。


「イリスちゃん!」

「皆様、ご無事で何よりです」


花音が安堵の表情を浮かべると、戦闘を切り上げたイリスは誠意を伝えてくる。


「イリス。他のメンバー達とともに、望達がこの場を切り抜けるまでの時間を稼げるか?」

「徹様、問題ありません」


徹の指示に、イリスが槍を素早く構え直し、気合いを入れる。


「時間を稼いでみせます!」

「ーーなっ」


イリスは、『レギオン』のギルドメンバー達の挙動に注意を傾ける。

彼女は躍動すると、望達に襲い掛かってきた『レギオン』のギルドメンバー達を勢いよく叩き伏せた。

この瞬間、『レギオン』のギルドメンバー達の目標はイリスに切り替わった。

次々と襲いかかって来る集団を、イリスは機敏な動きでかわす。


「ニコットは、妨害対象を排除します」


だが、イリスが着地した隙を見逃さず、ニコットは数本のダガーを彼女に向けて投げた。

愛梨のイラストになります。


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