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留菜マナ
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第ニ百九十話 錯落たる幻想⑤

公開日時: 2021年7月5日(月) 16:30
文字数:1,156

「リノアはリノアだ! 吉乃美羅は、もう……」


先程と同じ言明。

しかし、その先に続く言葉は口にするのも憚(はばか)れた。

勇太はそれでも情感を込めた口調で主張する。


「吉乃美羅は、もういないだろう……!」

「……浅はかな」


勇太の答えを聞いて、賢は失望した表情を作った。


『フェイタル・トリニティ!』


勇太は跳躍し、賢達の不意を突くようなかたちで大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、『レギオン』のギルドメンバー達を襲う。


「なっーー」


視線を誘起された『レギオン』ギルドメンバーの一人が、その不慮の一撃をまともに喰らう。

その瞬間、『レギオン』のギルドメンバーの一人は体力を失い、そのまま、この仮想世界から消えていった。

光を纏った大剣が、周囲にいた『レギオン』のギルドメンバー達さえも攻撃ごと吹き飛ばす。


「行くぜ!」


一網打尽とまではいかなかったが、勇太は次々と『レギオン』のギルドメンバー達を薙ぎ倒していく。


「よーし、私達も行くよ!」


裂帛の咆哮とともに、花音は力強く地面を蹴り上げた。


『クロス・バースト!』


今まさに望達に襲いかかろうとしていた『レギオン』のギルドメンバー達に対して、花音が天賦のスキルで間隙を穿つ。

花音の鞭に搦(から)め取られた瞬間、鞭状に走った封印の効果によって、『レギオン』のギルドメンバー達は全ての特性を封じられた。

さらに追い打ちとばかりに、花音は鞭を振るい、何度も打ち据える。


「奏良よ、頼む」

「言われるまでもない」


有の指示に、奏良は弾丸を素早くリロードし、銃を構えた。

発砲音と弾着の爆発音が派手に響き、『レギオン』のギルドメンバー達を怯ませる。


「行きます!」


裂帛の咆哮とともに、プラネットは力強く地面を蹴り上げた。


「はあっ!」

「くっ!」


気迫の篭ったプラネットの声が響き、『レギオン』のギルドメンバー達は次々と爆せていく。

花音達の攻撃により、『レギオン』のギルドメンバー達は攻撃の手を止める。


「「これで決める!」」


そのタイミングで、望とリノアは剣を掲げると再び、連なる虹色の流星群を一閃とともに放つ。

望の特殊スキルと愛梨の特殊スキル。

それが融合したように、『レギオン』のギルドメンバー達に巨大な光芒が襲いかかる。

しかし、一片の容赦もない二人の一振りを前にして、『レギオン』のギルドメンバー達は点々と散開し、直撃を免れた。


「喰らえ!」


奏良は足を止め、銃口を後方の賢に向けて発砲する。

焦りもない。

怯えもない。

正確無比な射撃で、奏良はただ眼前の敵を撃ち抜こうとした。

だが、賢はそれを剣の一振りで払い除ける。

互いに正確無比な攻防を前に、戦局は混戦した。


「奏良よ、今すぐ風の魔術のスキルを使って逃げるぞ! この状況では、転送アイテムを使えないからな!」


奏良の一連の動きを見て、有はすぐにその決断を下した。


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