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留菜マナ
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第四百六十七話 光を欺く⑥

公開日時: 2024年4月5日(金) 16:30
文字数:1,068

「「これ以上、『再生能力』を付与させない!」」

「リノア、任せろ!」


望達の戦いぷりが、勇太の心に火を点ける。

露骨な戦意と同時に、勇太は一気に新たに召喚されたモンスター達との距離を詰めた。


『フェイタル・レジェンド!』


勇太は大剣を構え、大技をぶちかました。

勇太の放った天賦のスキルによる波動が、モンスター達を襲う。

モンスター達のHPは減ったが、倒すまでには至らない。

しかし、勇太は起死回生の気合を込めて、モンスター達に更なる天賦のスキルの技を発動させる。


『フェイタル・ドライブ!』


勇太が大きく大剣を振りかぶり、光の刃が波動のようにモンスター達へと襲いかかった。

万雷にも似た轟音が響き渡る。


「ーーーーガアアッ!」


迷いのない一閃とともに、勇太の強烈な一撃を受けて、モンスター達は怯んだ。

モンスター達のHPが一気に減少する。

頭に浮かぶゲージは0になり、モンスター達はゆっくりと消えていった。


「いくら召喚しても、全て倒すだけだ」

「勇ましいですね。ですが、倒しきるその前にあなたの魔力が尽きるのが先だと思います」

「ーーっ」


かなめの意味深な微笑みに、後ずさった勇太は困惑したように驚きの表情を浮かべる。


「マスター。さらに、モンスターが複数、出現するのを感知しました」

「『レギオン』と『カーラ』が新たに喚んだモンスターか。このままだと、僕達の魔力が尽きた途端、身動きが取れなくなる可能性が高いな」


プラネットの警告に、奏良は不満そうに前方から視線を逸らした。


『エアリアル・アロー!』


奏良が唱えると、無数の風の矢が一斉に、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達が召喚したモンスター達へと襲いかかった。

HPを示すゲージは0になったものの、ベヒーモス達はすぐに完全復活して青色の状態に戻ってしまう。

ベヒーモス達を薙ぎ払っていた望とリノアは、咄嗟に焦ったように言う。


「有、このままじゃ埒が明かない」

「有、このままじゃ埒が明かないよ」


望とリノアの指摘は、正鵠を射ていた。

かなめ達との戦いは、次第に劣勢になってきていた。


「奏良、プラネット、妹よ。このままでは、まずいぞ」


有達が後手に回るのを見計らって、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバーの手によって次々と壁を作るようにモンスター達が召喚される。

壁のように迫り来る様は、まるで密集陣形のようだ。

四方八方から、ベヒーモスとモンスター達が望達へと襲いかかる。


「お兄様の時と同じ戦法では、私達を倒すことは叶いません。私の『明晰夢』の力は……少し特殊ですから」


イリスと相対しつつも、かなめは先程、口にした言葉を反芻した。

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