不可解な空気に侵される中、花音が二人の間に割って入る。
「もう、プラネットちゃん、イリスちゃん! 望くんと愛梨ちゃんとリノアちゃんのために、二人で仲良く守ろうよ!」
「はい」
「仲良くはともかく、必ずお守り致します」
花音のどこか確かめるような物言いに、プラネットが嬉しそうに、イリスは不快そうに顔を歪める。
気まずげな雰囲気が漂う中、有は改めて切り出した。
「プラネット、イリスよ、助かった」
「はい」
有が代表して感謝の意を述べると、プラネットは照れくさそうに答える。
「この状況から脱するために力を貸してほしい」
「有様、お任せください」
「もちろんです」
有の発言に、プラネットとイリスはそれぞれの表情で応える。
そこで鞭を構えた花音が不思議に首を傾げた。
「プラネットちゃん、何だか嬉しそうだね?」
「イリス様に感謝されました」
プラネットは表情を綻ばせると、イリスが発したその一言一句を胸に刻む。
イリスがどのような意味合いで言ったのかは解らない。
単純に言葉どおりの意味だったのかもしれない。
だが、イリスの言葉は、プラネットには額面以上の重みがあった。
イリスは思っていた以上に、同じNPCである自分のことを近しく感じてくれていた。
プラネットにとって、それは思いがけない喜びだった。
プラネットは居住まいを正して、真剣な表情で望達に尋ねる。
「マスター。私とイリス様で、この状況の活路を切り開いてみようと思っています。よろしいでしょうか?」
「……ああ。プラネット、頼むな」
「プラネットちゃんの想い、きっといつかイリスちゃんに伝わるよ」
望が言い繕うのを見て、花音は追随するようにこくりと首を縦に振った。
しかし、その様子を窺っていたニコットは単なる事実の記載を読み上げるかのような、低く冷たい声で宣告する。
「手嶋賢様。ニコットはこのまま、蜜風望達の妨害に徹します」
「妨害……?」
無邪気に嗤うニコットの発言を聞いて、望は嫌な予感がした。
しかし、望の驚愕には気づかずに、ニコットは淡々と攻撃態勢へと移る。
「まずは、そのための妨害対象を速やかに排除します」
「それは、こちらの台詞です。彼らとともに今すぐ、ここから立ち去りなさい」
「ニコットはこのまま、指令を続行します」
ニコットの一方的な要求に、今まで応戦していたイリスは表情を歪めたくなるのを堪える。
そのタイミングで、『レギオン』のギルドメンバーは厳かな口調で言い放った。
「ニコット、ここは任せた。俺達は蜜風望達を捕らえる」
「了解しました」
『レギオン』のギルドメンバーの指示に、ニコットは素直に従った。
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