『野獣の森』入り口から進む従魔少女達。
ケロ子、みみっくちゃん、ハチ子、ハチ美。
これに加えて案内のユキト。
彼女達が先に進む事になったのだ。
ショウマ、コノハ、タマモ、エリカ、ミチザネ、コザルは一度冒険者組合に行く。
チームに登録をするのだ。
本当はエリカ、ミチザネ、コザルに別チームとして動いてほしかったショウマだ。
「キューピーおじ様から言われてるんです…」
「このミチザネ、ショウマさんの護衛を主人より言いつかっております。
ショウマさんから離れる訳には行きません」
「だからミチザネ、アタシを押しのけないで!」
そんなこんなで彼らは離れなかった。
従魔少女達もショウマと離れたがらなかったが、ショウマの指示だ。
しぶしぶ別行動している。
「組合に全員で行くのは時間のムダすぎるよ。
他のメンバーと僕はチーム編成してくる。
みんなは無理に突き進まないで。
今日は様子見でいいからね。
明日からは交替でメンバーを入れ替えよう」
そんな訳だ。
『野獣の森』の入り口。
「ゲートって言われてるよ。
気を付けて、
一歩中に入った途端襲われる場合も有るんだ」
ユキトが説明してくれる。
入り口は白いモヤ。
木と木の間に白いモヤに包まれた空間が有るのだ。
冒険者は普通に入って行ける。
魔獣は通れない。
通れないハズなんだけど、どうしたハズミかたまに溢れてくるのだ。
「よし先頭は私が行こう」
「ケロ子も一緒にいくよっ」
ハチ子とケロ子が先陣を切る。
ゲートと呼ばれた空間は通れて二人が限界。
大柄な戦士、キバトラなら一人でいっぱいだろう。
続いてみみっくちゃん、ユキト。
最後にハチ美。
一歩『野獣の森』に足を踏み入れる。
それだけでハチ美は頭痛に襲われた。
「これは凄い数の魔獣の気配です」
「うむ。これは気配を感じるドコロでは無いな。
そこら中魔獣だらけだ」
そう、
既に従魔少女の目の前に魔獣が現れてる。
“双頭熊”。
二つの頭を持ち、人間の体格を大きく上回る魔獣が少女達を睨みつけていたのだ。
「グゥアーガアアアーー!」
「“双頭熊”!“双頭熊”!。みみっくちゃん知ってます。あれは“双頭熊”ですよ。
二つの頭を持ち、四本の腕で攻撃してくる恐ろしいヤツです。『野獣の森』でも最強クラスと言われてます。有名な手強い魔獣ですよー」
ケロ子が前に進み出る。
軽いフットワーク。
跳び蹴りの準備。
みみっくちゃんはその後ろにピューっと隠れる。
“双頭熊”は四本の腕に爪をキラめかせている。
二つの頭、四つの目玉で少女達を睨みつけてくるのだ。
「いきなりの大物か!」
ハチ子も槍を構える。
でもハチ美は何も言わずに弓を放つ。
一本だけ。
魔獣の足元の方。
キュー。
そこには小柄な獣が倒れていた。
辺りには先ほどいた威圧的な魔獣は影も形も無い。
「“化け狸”だ」
「こいつ。良く“双頭熊”に化けるんだ。
戦士達は驚いて逃げ帰るか、
戦うんでも一斉にスキルを使って魔力を消費させられる。
イヤなヤツだよ」
「どういう仕組みで化けるのかは分からないが、
我らの感覚までは誤魔化せなかったようだな」
「イヤ、ハチ子はビビッてたですよ。
ハチ美の手柄を如何にも自分のコトの様に言うのはカッコ悪いですよ、ハチ子」
「な、ビビってなどいない。
気配は感じていたぞ。
目で見えるモノがあまりに違うので驚いただけだ」
驚いていたコトは正直に言ってしまうハチ子である。
「気を付けて、まだ近くにいます」
ハチ美だ。
その言葉と同時に、何か木の上から降ってくる。
蛇だ。
尻尾が槍の様な金属状、光ってる。
その槍をハチ子に向けて飛び掛かってきたのだ。
ハチ子は咄嗟に反応できない。
槍がハチ子に刺さる直前。
ハチ子の目の前で蛇がいきなり方向を変える。
上に跳ねとんでいた。
ケロ子のハイキックだ。
蛇は上空に跳ばされてる。
「ハッ」
ハチ美の矢が空中の蛇に突き刺さる。
蛇は動かなくなり、地面に墜ちる。
「ナイスだよっ。ハチ美ちゃん」
「ケロ子殿こそ、さすがです」
「これは“飛槍蛇”(ヤクルス)ってヤツ。
『飛槍蛇の槍』がドロップするから悪くないエモノだよ」
「うむ。さすが『野獣の森』だな。
ここでは一瞬も気を抜いてはいかんというコトだ。
勉強になったぞ」
冷や汗をかきつつカッコつけるハチ子である。
そんな従魔少女達をユキトは見てる。
いや正確にはその中の一人を見つめてる。
ケロ子さん。
やっぱりカッコいい。
『野獣の森』は一本道ではなかった。
広い森、何処を通っても自由なのだ。
木が生い茂って通れないところも有るが、そんなに多くない。
従魔少女達はとりあえずまっすぐ進んでる。
ユキトはところどころ目印を付けていく。
目立つ赤い布を枝に巻き着けてる。
帰る時はそれを目印にするらしい。
その間も従魔少女は戦った。
戦いまくりである。
“火鼠”が出てくる。
体は小さいが、火魔法を使ってくる。
『氷撃』
みみっくちゃんが魔法で対抗して見せた。
ネズミの体を槍が貫く。
ハチ子が本体を仕留めたのだ。
“鎌鼬”が襲ってくる。
風魔法を使ってくる。
ハチ美は避けた。
避けたけど肌にかすめてしまったらしい。
肌に傷がついてる。
そんなに深い傷ではないが、切れれば痛い。
「乙女の肌に傷を…許しません」
『矢の雨』
ハチ美が怒り狂って一掃する。
“妖狐”が出てくる。
「あれ?
タマモ?」
違う。
タマモの毛並みは茶色と白。
手入れされてキレイだ。
目の前に居るのは黒と茶色。
ところどころ汚れている。
こちらを見て唸り声をあげる。
「グゥーグルルゥー」
ハチ美が矢を構えるがユキトが止める。
「大丈夫、手を出さなければ逃げてく」
その言葉通り“妖狐”は体を翻して去って行った。
「“妖狐”や獅子山羊(キマイラ)なんかは手を出さなきゃ、
襲ってこないから大丈夫」
「後、“森の精霊”(フンババ)様や
“翼有る蛇”(ケツァルコアトル)様には手を出さないで。
人間を助けてくれるんだ。
神様だって思ってる人もいるんだよ」
「む。いっぺんに言われても覚えられないな」
「とりあえず、
向こうから襲ってこなければ戦わない。
ってコトでいいのかなっ?」
「いやそれだと、こちらが後れを取ります。
攻撃魔法を使ってくるような魔獣もいるようですし、
ダメージがバカになりません」
肌に傷を付けられて、怒ってるハチ美である。
「“森の精霊”“翼有る蛇”は戦っちゃダメ、“妖狐”“獅子山羊”は向こうが逃げてく。
後、みみっくちゃん達が注意する魔獣は有るですか?」
「なんだ、みみっくちゃん先輩。
魔獣に詳しいのでは無かったのか?」
「みみっくちゃん地下迷宮産“宝箱モドキ”ですよ。『地下迷宮』には詳しいですが、『野獣の森』に関しては有名な魔獣くらいしか知らないですよ」
「キサマのとりえはそれくらいだろう。
魔獣知識が無ければタダの箱では無いか」
「ハチ子。今日いいところを見せられてないからと言って、みみっくちゃんに当たるのはカッコ悪いですよ」
「うーん。いろいろいるんだけど、“鴆”は猛毒を使ってくるから、『毒消し』が無かったら近付いちゃダメ。“蛇雄鶏(コカトリス)”は石化を使うけど、奥まで行かなきゃ滅多に出くわさない」
「まだいるですか?これは確かになかなか簡単に進めそうにないですよ」
「『毒消し』持ってないよっ」
「そういえば回復薬というモノを我らは一つも持ってないな」
「一つも持ってないのです」
「ええっ。姉ちゃん達。
薬を一つも持ってないの?!」
「ここで合ってるの?」
ショウマは困惑してる。
目の前に有るのはボロっちい建物だ。
小さい。
コノハさんの家より小さいかもしれない。
「はい。
ここが亜人の村の冒険者組合です」
「うーん。
築50年以上資産価値ゼロ
みたいな」
コノハはボロ家の扉を開けて入って行く。
「どう見てもボロ家よ。
入って大丈夫なの」
「エリカ様。そうハッキリ言うモノではありません」
「崩れそうな気配は無い。
平気だ」
エリカ、ミチザネ、コザルだ。
コノハに続いて建物に入る。
建物はショウマ、コノハ、エリカ、ミチザネ、コザルが入ったら既にいっぱい。
タマモまでいるのだ。
部屋は一室だけ。
机に人が座ってる。
迷宮都市の組合に有るカウンター受付じゃない。
普通の事務机が一つだけだ。
奥の方に棚が有って、軽く仕切られてる。
そこにも人がいるみたい。
だけど正面に見える人は一人だけ。
「あれ、コノハ。
帰ってたの?」
「はい、ザクロさん。
お久しぶりです」
「薬師の勉強に行ったんじゃなかったっけ。
終わったの?」
「いえ、まだ全然です。
ちょっと事情が有って戻って来ました」
中に居たのは女性らしい。
らしいと言うのは仮面をかぶっていて顔が分からないからだ。
「ここの冒険者組合の方、
ザクロさんです」
コノハが紹介してくれる。
やはり女性かな?
ザクロと呼ばれた女性は仮面をかぶってる。
獅子を象ったような仮面。
リアルなタイガーマスクみたいなのじゃない。
抽象画みたいなの。
南米土産みたいなのだ。
「冒険者のショウマさん達です。
チーム編成をしたいんです」
「へーっ 冒険者。
ここに来るなんて物好きだねぇ」
「?」
「アンタら、冒険者ならドロップ品はここに収めない方がいーよ。
ここの買取価格はベオグレイドの10分の1だからね」
10分の1?
「何よそれ。
なんでそんな横暴な価格になるのよ!」
文句を言ったのはエリカだ。
「知―らない。
だってそうなんだもん」
「ザクロさん!
その話はするなと言ったじゃないか」
部屋の奥の方に居た人がでてくる。
ザクロさんに注意してる。
「えーっ、支店長。
だってホントウのコトだもん。
ザクロがわざわざウソつかなきゃいけない理由がないもん」
「ウソをつけとは言ってない。
聞かれてもいないのに、価格をわざわざ言うなと言ってるんだ」
「支店長。
ムズかしくて良く分かりませーん」
「何もムズかしい事は言っておらん!」
いいからとりあえずチーム登録してくんないかな。
【次回予告】
熊。陸上、最大級最強クラスの獣と言われる。日本にいるのはツキノワグマとヒグマ。本州にいるのはツキノワグマだ。体長100~130CM。クマとしては比較的小さい。食料も肉より木の実などを好んで食べると言われる。
北海道に現れるのがヒグマ。こちらは体長200CM。木の実やハチの巣なども食べるがそれだけでは無い。エゾシカを襲って食べるのだ。
世界的に有名なのはアメリカのグリズリー。ヒグマの一種だ。
最大級と言われるのがアラスカのコディアックヒグマ。
平均体長は240CM、体重500kg。
後ろ足で立ち上がると高さは3Mを越すと言う。
「なーんだ」
次回、エリカは言う。
(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)
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