クズ度の高い少年が モンスターと戦って倒すと、倒したモンスターが美少女になって、倒した相手に絶対服従してくれる世界に行ってみた。

くろねこ教授
くろねこ教授

第28話 迷宮商人さんその1

公開日時: 2021年8月28日(土) 17:30
文字数:3,806

ショウマ一行は“動く石像”対策を練る。

まずショウマが『炎の玉』を“動く石像”にぶつける。

「氷の上から『石溶かし薬』かけても効きませんぜ」と商人が言うのだ。

まあそうだよね。

薬は氷にしか、かからない。

『炎の玉』で氷が解けたところにハチ子が『石溶かし薬』をかける。

石像の溶けた部分にハチ美が遠距離攻撃。

薬品は人がすぐに触れてはマズイらしい。

ハチ子、ケロ子は石礫に対応しつつ、

薬品の反応が終わったら一斉攻撃。

様子を見て苦戦するようならショウマが再度『凍てつく氷』を放つ。

そんな段取りだ。


「…みみっくちゃんの役割は…」

「みみっくちゃん。1000G出して、

 商人さんに払っておいて」


ドロップコインは重くなったので、まとめてみみっくちゃんに飲み込んで貰ったのだ。


「…みみっくちゃん、オサイフですか。そうですね。ご主人様はみみっくちゃんをオサイフにするつもりで拾ったんですね…」

「人聞き悪いなぁ」





『炎の玉』



凍り付いていた“動く石像”。

火を受け氷が半分溶けている。

ガタガタと動き出す。

が、まだ飛び回る事は出来ないようだ。

ハチ子が“動く石像”に近づく。

従魔少女の背中から透き通る羽根が広がる。

宙に飛び立つことなく、地上を走る。

羽ばたきから得る浮遊力を前進に利用している。

瓶から中の液体を石像にぶっかける。

ハチ子は近づいた時と同様、羽根を羽ばたかせ石像から離れる。

商人から薬品に触れないよう言われているのだ。


ガタガタアガタアガタガアタアガタ


“動く石像”が暴れている。

先ほどまでの飛ぼうとしている動きではない。

慌てたような暴れ方だ。

石像の表面は泡立ち、白いケムリが噴き出している。



「ハチ美」

「はい。姉様」


ハチ子が石像から距離を取るのを見計らっていたのだ。

ハチ美の手から矢が放たれる。

弓を構える従魔少女から直線に矢は飛び、石像へと吸い込まれる。

石の表面に跳ね返されていた矢が溶けだした石の内部に刺さる。


「やったっ。

 ハチ子ちゃん、ハチ美ちゃん。ナイスだよっ」


「まだこれからです。ケロ子殿」

「これからです」


ハチ美から次々と矢が放たれる。

一本も外すことなく無数の矢が“動く石像”に突き立つ。


ガタガタアガタアガタガアタアガタ


石礫が飛んでくる。

“動く石像”の悪あがきだ。

ハチ子は槍で叩き落す。

ケロ子も石を靴底で蹴り落としていく。


「ショウマさまっ、炎ですっ」


石像の口部分の氷が溶けたのだ。

そこから火が吐き出されようとしている。


「みんな~、

 しゃがんでて」



『氷の嵐』




“動く石像”から四方に飛び出す火。

それを氷が迎え撃つ。

火は消し去られ、氷は蒸気となって消えていく。


「何て言うんだっけ、

 こういうの。

 対消滅?

 カウンター攻撃?」



“動く石像”は宙に浮かび上がった。

戦闘前の流麗な飛行ではない。

彫刻はナナメになり、ガタガタと震える不自然な飛行だ。

石像を覆っていた氷はほとんど残っていない。

獅子の形であった彫刻は頭部から腹まで溶けて原型を留めていない。

そこに無数の矢が突き刺さっている。

飛行の高さも低い。

人間の胸程度の高さしかない。



「まだ動けるとは敵ながら見上げたものだ」

「見上げたものです」


「だがこれで終わりだ」

「終わりです」


ハチ子が槍を構え突撃する。

先ほど見せた羽ばたきの力を乗せた前方ダッシュだ。

その突進力を槍に乗せて“動く石像”へ突き立てる。


「どうだ?」

「どうです?」


“動く石像”に一撃を加え、離れるハチ子。

だがまだ石像は動いている。


う~ん

攻撃力が足りないのかな

強そうに見えてもハチ子もハチ美もまだLV4なんだよね

ショウマはのんきに様子見だ。


「じゃあ今度はケロ子の番っ」


ガタガタガタガタ


“動く石像”から石礫が飛んでくる。

それを器用に避けながら、ケロ子は進む。

避けながらも走る速度は上がっていく。

金属製の手甲を着けた腕で顔をガードする。

突進する。

もう石礫が飛んできても避けない。

腕で受け止める。



『体当たり』



宙に浮く“動く石像”に体ごとぶつかるケロ子。

石像は跳ね飛ばされる。

人間大の石の彫刻にそれを載せる台座。

大の男でも一人では持ち上げる事さえできない重量だろう。

そんな“動く石像”が少女によって跳ね飛ばされる。


ガンッ ガンッ ガン


跳ね飛び床に叩きつけられた“動く石像”。

既に彫刻は砕け、石像と呼べないモノと化している。



「おっ。

 ドロップコインキター。

 うわ、銀貨で何枚あるのこれ?」


『LVが上がった』

『ショウマは冒険者LVがLV15からLV16になった』

『ケロコは冒険者LVがLV9からLV10になった』

『ミミックチャンは冒険者LVがLV7からLV8になった』 




「ダンナ、ダンナ…」


「あ、商人さん

 助かったよ~。

 悪いけど、この銀貨数えてくれない?

 その銀貨でさっきの『石溶かし薬』2、3本売ってよ」


「あぁ。それはもちろん、お売りしやすが…」


「あの、アッシ耳が悪くなりやしたかね?

 今LV8とかLV15とか聞こえたようなんですが…」


「そうだよ。

 僕、LV15から今LV16になったとこ」


「えええっ

 ええええええええええええええっ

 ええええええええええええええええええええええええええええ」





「4階を探索すると言ったら普通LV30からですぜ

 チームメンバーに低いレベルの者が加わるにしてもLV20は最低必要すよ」


「ほら、やっぱりご主人様は非常識です」

「ええっ。今のみみっくちゃんの事じゃないの。

 LV7で来てるんだよ」


「うむ、さすがは我らの王だ」

「さすが王です」


「ショウマさまっ。 

 もしかして商人さんが『毒消し』売ってるんじゃないでしょうか?」


「おおっ。

 ナイスアイデア、ケロ子。

 商人さん、『毒消し』の在庫有る?」


「『毒消し』…

 『毒消し』すか 」


商人さんはローブの中からメモを取り出す。


「『毒消し』無かったら、『毒消し』の材料になるモノでもいーや」


「『毒消し』…『毒消し』の材料になるモノ…

 と言ったら巨大なカエル…

 あれは…

 あそこに案内すれば…」


「どうしたの。

 商人さん」


「ああ、なんでもありやせん。

 ダンナ、『毒消し』でしたね。

 1本でいいすか?」


メモを見ながら聞いてくる商人さん。

ショウマは考える。

10本分の材料を5個=50本。

それがショウマがクラスアップのため、渡したドロップ品だ。

ケロ子、みみっくちゃんで100本。

いやハチ子、ハチ美も増えたんだ。


「200本くらい?」

 

「…

 そんなに持ち歩ける訳ないっすよ」






「キャッ」

従魔師コノハの横を矢がかすめる。


「気をつけろ

 “骸骨弓戦士”だ」


カトレアたち『花鳥風月』チームは2階を進んでいた。

ここで出会うのはアンデッド、だいたい“歩く骸骨”だ。

こいつらはホネだけのクセに意外とタフ。

ベテランが攻撃しても1発では倒れない。

しかし、動きがのろい。

注意さえしておけば反撃を喰らう事は無い。

複数現れても楽な相手だ。

問題は偶に現れる。

“骸骨戦士”や“骸骨弓戦士”。

特に“骸骨弓戦士”。

“骸骨戦士”は“歩く骸骨”より少しタフで武器を持ってるだけだ。

剣を持ってるヤツ、槍、斧を持ってるヤツもいる。

大した差は無い。

注意さえしておけば攻撃は避けられる。


弓を持ってるヤツは少し訳が違う。

ガイコツ自体の動きは鈍くても、放たれた矢が遅くなる訳じゃない。

さらに後衛から攻撃してくる。

前衛のガイコツと戦ってる中、後ろから飛んでくる矢を避けろと言われても無理だ。

加えて、チームの後衛も狙われる。

軽装備の魔術師が狙われることもある。

従魔師のコノハも同様だ。


カトレアたちが遭遇したのは“骸骨戦士”が前衛 “骸骨弓戦士”が後衛というチームだった。


カトレアは弓で“骸骨弓戦士”を狙う。

しかし前衛の剣戦士と“骸骨戦士”が戦っている。

後ろにいる“骸骨弓戦士”のみを狙うのはカトレアでも至難の業だ。


「チックショウ

 卑怯だろ」


“骸骨弓戦士”の方は平気で矢を放ってくる。

前衛のガイコツに当たる事を気にしてないのだ。


「タマモ

 あの弓持ってるヤツ やれるか?」


「クオーン」


コノハに寄り添っていた“妖狐”が進み出る。

戦っている戦士の脇をすり抜けて、“骸骨弓戦士”に頭から突進する。

体当たりだ。

“骸骨弓戦士”は一撃で崩れ去った。


コノハは自分の横の石壁を見ている。

先ほど自分の肩先をかすめた矢が突き刺さっている。

矢が当たっていたら?

ゾッとする。

革のマントを被ってはいるが、この矢は石に刺さっているのだ。

革でその矢を防ぎきれるのだろうか。

さらに頭部に当ったら。

コノハは肩からマントを被っているが、頭には何も装備していない。


先日防具屋に行った時男性と知り合った。

ショウマと名乗る男性だ。

彼は防具を丹念にチェックしていた。

一点一点念入りに組み合わせ方を変えその効果を計算していた。

自分の物だけではない。

チームメンバーの物までだ。

それが命を守る物だと分かっていたからだろう。

自分もあのくらい真剣に防具の事を考えなくてはいけない。


コノハがものスゴイ勘違いをしている事は誰も気づいていない。



【次回予告】

『失われた技術』時代はおよそ500年前と言われる。

現在帝国が得意としている魔道具のルーツはそれだ。

遺跡が、残された魔道具がその文明が有った事を証明している。

しかし残された魔道具は王国が仕組みを幾ら研究しても全てを解明できたとは言えない。一つ解明されればまた新たな謎が生まれるのだ。

「商人さん まだかかるならいいよ。通販にして。U〇er Eatsに届けてもらえないかな」

次回、ショウマは何かにきづく。 

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)


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