「ザクロさん。
『冒険者の鏡』借りるよ」
目標は達成した。
ハチ子、ハチ美だけじゃなくてコノハまでLV10に達したのだ。
ショウマ達はそのまま組合に来ている。
「ん-、なにー。『冒険者の鏡』ー。
好きに使ってー」
「ありがとうございます。
ザクロさん」
「他に人もいないからいーよー」
冒険者組合の受付ザクロはテキトーにOKしてくれた。
「待て、待て!
ザクロさん。
『冒険者の鏡』は貴重な品物だ。
好き勝手に使わせちゃいかん」
奥の仕切りから人が出てくる。
支店長と呼ばれてた人だ。
「えー、支店長ケチンボ」
「ケチではない!
これは『失われた技術』と帝国の魔道具技術が注ぎ込まれた貴重なモノだ。
もし壊しでもしたら、私もキミもクビではすまないぞ。
一生モノの借金を背負わされる。もしかしたら鉱山で強制労働だ」
「別に壊しはしない。
コレは冒険者のためのモノだろう。
我らが使いたいと言うのになんの問題が有る?」
ハチ子が正論を言う。
「まぁ、それはそうだが。
しかし、何に使うのかね?」
「ソレはだな……」
真面目な顔で支店長と対峙していたハチ子が黙る。
「………」
クルっとショウマの方を振り返る。
「ショウマ王。
何でしたっけ?」
目的を全然理解してなかったハチ子であった。
仕方ないのでショウマが話す。
「三人LV10になったんだ。
職業Ⅱを選びたいなと思って来たんだ」
「職業Ⅱ?
確かにLV10を越えるといつの間にか職業が増えてる場合が有ると聞くが、
職業が増えているか確認したいと言う事かね?」
「いや、
そうじゃないんだけど」
あれ、もしかして職業ってフツーは選べない。
うーん。
「うん。
やっぱり、そう。
ステータスを確認したいだけなんだ」
「そのくらいならいいだろう。
ただし、私も同席する」
ええ、いらないよ。
ショウマは露骨にジャマだという顔をする。
「支店長さん。
女性としてステータスを見られるのって
少し恥ずかしいです」
ハチ美がいきなり、支店長に接近している。
「だって、ステータスを見られたらハチ美の事が全て分かってしまうんでしょう」
支店長の手まで握っている。
両手を握って続けるハチ美。
「支店長のような殿方に、
ハチ美の全てを知られるなんて恥ずかしい」
「わ、分かった、分かった。
わかった~。
私は表に出ていよう」
「ザクロさん。
壊さないようにキチンと見ててくれよ」
真っ赤になった支店長は出ていった。
意外と純情みたい。
建物まで出なくても。
離れててくれればよかったんだけど。
まあいい。
好都合。
「じゃあコノハさん。
ステータス見せてもらってもいい?」
「はい」
コノハは鏡の前に立つ。
「えへへー
やっぱり少し恥ずかしいですね」
名前:コノハ
種族:亜人
冒険者LV:10
職業
従魔師 ランク2
薬師 ランク1
あれ。
それしか見えない。
ショウマが従魔少女達を鏡の前で見た時にはもっといろいろな項目が見える。
攻撃力、防御力、スキル、などなど。
その辺が全く見えないのだ。
「うん。
そうだよー。
アタシからなんて名前とLVしか見えないよ。
種族、職業が見えるのはチームリーダーだからだよ」
ザクロが教えてくれる。
そうなのか。
ショウマから従魔少女のステータスが全て見えてたのは特殊だったらしい。
なんと。
今になってこんなことが分かるとは。
というか、普通の冒険者はみんな知ってたのか?
知らなかったのショウマだけ?
「ワタシもこの前まで知りませんでした。
地下迷宮で冒険者のチームに登録してもらった時、
初めて知りました」
なんせ、ショウマである。
他の冒険者と話したことないのだ。
知らない事だらけである。
コノハはすでに職業Ⅱ取得してた。
薬師。
そういえば薬師の勉強していたと言っていた。
なにか薬師のスキル有るのかな。
「スキルに『薬効果上昇(小)』とあります」
薬を使う時効果が上がる。
分かり易くていいね。
「ステータスは前に見た時より上がってます」
前に見たのがLV3の時らしい。
名前:タマモ
種族:妖狐
冒険者LV:10
「コノハさんとタマモはLVが一緒なんだ」
「いつも一緒に戦ってますから…」
そりゃそうか。
とすると、MVPに経験値アップとかそーゆーの無さげ。
「タマモのステータス、
コノハさんには見えるの?」
「見えます。
えへへー。
こんな事が出来たんですね。
知りませんでした」
ショウマからは見えないのだ。
とすると、従魔のステータスがその主の従魔師からのみ見えるという事だ。
さてこれからが従魔少女。
最初はハチ子だ。
名前:ハチ子
種族:亜人/従魔
冒険者LV:10
体力:242
魔力:105
攻撃力:183
魔法攻撃力:42
防御力:123
魔法防御力:179
行動速度:137
職業
槍戦士 ランク2
スキル
特殊攻撃
必殺の一撃 ランク2
足払い ランク1
種族特性
飛翔
超感覚(小)
なんだか大分ステータスの数字が上がってる。
相当頼れる雰囲気になって来た。
今回のお楽しみは職業Ⅱ。
「ハチコはLVが10を越えました」
「職業Ⅱを習得できます」
剣戦士、盾戦士、弓戦士、重戦士、軽戦士、槍士、騎士、衛兵、守護者、聖戦士、狩人、闘士、野伏……
気になるのが有った。
聖戦士。
聖戦士ってなんだ。
相当気になる響きだ。
「コノハさん。
聖戦士って職業、知ってる?」
「聞いた事は有りますけど、
どんな職業かは…」
「知ってるよー」
ザクロさんだ。
さすが組合の人。
テキトーなようで抑えてる。
「ああでも、アタシも具体的にどんな職業かは知ーらない。
ウワサで言われてるのは西方神聖王国の王子だよ。
有名な第一王子が聖戦士って職業なんだって」
「ショウマ王。
もしかして私が聖戦士になれるという事ですか」
まだ選択肢に聖戦士があると言ってないけど、ハチ子の目がキラキラしてる。
まあそりゃ分かるよね。
「うん、そう。
他にもいくつか選択肢有るけど…」
「聖戦士でお願いします」
ハチ子は前のめりだ。
確かにときめく響きだ。
聖戦士。
昆虫っぽいロボットに乗って戦いだしたりしないだろうな。
アレって異世界に召喚される勇者みたいな創作として相当先取した作品だよね。
召喚した側が善人じゃなかったり、召喚された者同士の戦いや裏切りが有ったり。
ダン〇イン。
話が逸れてしまった。
「じゃあハチ子は聖戦士」
職業に聖戦士の文字が現れる。
聖戦士・槍
スキルが加わる。
聖槍召喚
なんかキター!
聖槍。
しかも召喚?
試したい。
試したい。
「ハチ子、後でスキル試そう」
「はいっ。ショウマ王」
ハチ子もウズウズしてる。
でも組合出てからね。
ハチ美が終わってから。
名前:ハチ美
種族:亜人/従魔
冒険者LV:11
体力:231
魔力:110
攻撃力:199
魔法攻撃力:61
防御力:131
魔法防御力:58
行動速度:162
職業
弓戦士 ランク3
スキル
特殊攻撃
一点必中 ランク1
矢の雨 ランク1
種族特性
飛翔
超感覚(中)
剣戦士、盾戦士、槍戦士、軽戦士、騎士、弓士、衛兵、狩人、狙撃手、野伏、斥候、忍者、踊り子……
悩ましいカンジだ。
ハチ子の聖戦士ほど、ピンとくるモノは無い。
気になるのは忍者。
コザルと同じ。
あの人はかなり実力者っぽかった。
踊り子も少し気になる。
何が出来るの?
後は弓士。
これはハチ子にも槍士とあった。
おそらく弓戦士の上級職。
面白味には欠けるが、堅実な実力向上が狙えそうな気がする。
「ハチ美。
忍者と弓士、あと踊り子だったら
気になるのはどれ」
つい選択肢に踊り子も混ぜてしまうショウマだ。
だってハチ美がアラジンのジャ〇ミンみたいな服装をしたら。
おそらく破壊力抜群。
さっきの支店長じゃないけれど。
オトコ相手の交渉事だったら全て上手くいってしまいそう。
いや。
それは踊り子のする事じゃないか。
むしろ忍者、くのいちの仕事かな。
くのいち いーよね。
肌が透けて見える鎖かたびら。
黒ストッキングはこの世界にあるのかな。
しかし忍者と弓か。
遠距離支援の弓と素早さが武器の忍者は相性どうなんだろう。
でもコザルさんも苦無投げてた。
ショウマが妄想してる間、ハチ美は考えてた。
「弓士にしようと思います」
「前面に出て戦うのは姉さまやケロ子殿がいます。
私は遠距離支援に特化した方がバランス良いと思います」
おおっ。
ハチ美、えらい。
マイペースな人が多い中、こういうバランスを考える人も必要だよね。
自分の事は棚に置いて思うショウマ。
一番マイペースなのは間違いなくショウマだ。
名前:ハチ美
種族:亜人/従魔
冒険者LV:11
体力:231
魔力:110
攻撃力:209
魔法攻撃力:61
防御力:131
魔法防御力:58
行動速度:162
職業
弓戦士 ランク3
弓士 ランク1
スキル
弓命中率上昇(中)
弓攻撃力上昇(中)
特殊攻撃
一点必中 ランク2
矢の雨 ランク1
気絶の矢
種族特性
飛翔
超感覚(中)
攻撃力が微増してる。
弓命中率上昇(中)、弓攻撃力上昇(中)がスキルに加わっている。
さらに『気絶の矢』。
状態異常を起こさせる攻撃だろう。
いいカンジにパワーアップしてる。
「話を聞いてると、
アナタ彼女たちのステータスを見たり、
職業を選択できるの?」
ワクワクッ。
そんなカンジでザクロが尋ねてくる。
どうしよう。
教えていいのか。
「まあ。
そうかな」
アヤフヤな返事をするショウマだ。
だから知らない人と話すのニガテなんだって。
「フーン。
じゃあそうとう信頼されてるリーダーなんだ」
「?」
「聞いたコトあるよ。
リーダーがものすごくっ信頼されてると、
メンバーのステータスやスキルを見る事が出来るって。
さすが、聖者サマと呼ばれてるだけあるね」
ショウマもザクロに訊きたいコトが有ったのだ。
「ザクロさん。
その仮面って?」
森の中で会った女性の物に似てる気がするのだ。
でもザクロさんではない。
雰囲気が明らかに違う。
それにショウマ達は『野獣の森』を出て、そのまま冒険者組合に来た。
森で見たのがザクロさんならここに居ない筈だ。
「ああこれー。
ザクロは“森の精霊”(フンババ)様を尊敬してるんだー。
“森の精霊”の仮面だよ」
“森の精霊”(フンババ)?
「それってどんなの?
獅子に似た魔獣なの?」
「違うよー。
こんな獅子の仮面を付けた人間に似た格好の神様」
「神様?」
たくさんの人がそう思ってるらしい。
「『野獣の森』で戦士達が迷うじゃない。
魔獣たちと戦って、ケガをして。
疲れ切ってもう帰れない。
そう思った時、“森の精霊”に会うんだって。
そうするといつの間にか入り口のゲートに帰ってるんだ。
本当におかげで助かった人が何人もいるんだよ」
ならショウマが見たあの人は…
【次回予告】
フンババ。
メソポタミア神話に登場する巨人。たまにゲームのモンスターに使われたりもしてる。その外見は異形、口は竜、顔は獅子、胸は荒れ狂う洪水。どんなやねん!
すべての悪と呼ばれたり恐怖と言われたりもするがその像は魔除けに使われてもいる。本来は森の守護者であり、自然神なのだ。シュメール語だとフワワというカワイイ呼び名になるとか。この世界においてどんな存在なのかはまだ明らかでない。
「ショウマ王、何か出来そうな気がするのです」
次回、ハチ子は試す。
(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)
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