クズ度の高い少年が モンスターと戦って倒すと、倒したモンスターが美少女になって、倒した相手に絶対服従してくれる世界に行ってみた。

くろねこ教授
くろねこ教授

第二章 迷宮都市はオドル

第36話 後始末その1

公開日時: 2021年9月5日(日) 17:30
文字数:5,348

地下迷宮に朝が来た。

昨日はステータスもドロップコインも確認せず、寝てしまったショウマ。

疲れてたし。

疲れたら寝るよね。


といいつつ寝る前にハチ子と疲れる事をしたショウマだ。

詳しくは書けない。

でも少しだけ。


ハチ子はキレイだった。

金髪に白い肌。

引き締まった肉体。

そして積極的だった。

女性からグイグイ来られる。

そういうのもたまにならいいな。

そう思ったショウマだ。



ショウマが起きていくと既に朝食の用意がされてた。

ケロ子が調理、ハチ美が配膳を手伝ってる。

ハチ子は部屋の隅でトレーニングしている。

膝を使って屈伸。

スクワットだ。

金髪と上半身が上下に動いている。

こうしてキレイな身体が作られるんだな。

ちょっと昨日の夜を思い出すショウマだ。

ショウマがイスに座る。

とハチ美が料理を差し出してくる。

今日はスクランブルエッグにベーコン。


「どうぞ。ショウマ王」

「ああ。

 ありがとねー」


ハチ美がニッコリ笑って去ってゆく。

なんかいいじゃん。




さてステータス確認のお時間だ。

全員揃って、チーム編成をする。


それからステータスチェック。

まずはハチ子、ハチ美だ。




名前:ハチ子

種族:亜人/従魔


冒険者LV:5


体力:116

魔力:52


攻撃力:90

魔法攻撃力:20

防御力:58

魔法防御力:26

行動速度:67


職業

 槍戦士 ランク2

 

スキル

 特殊攻撃

  必殺の一撃 ランク1

  足払い ランク1  

  

 種族特性

  飛翔   

  超感覚(小) 





名前:ハチ美

種族:亜人/従魔


冒険者LV:5


体力:107

魔力:53


攻撃力:83

魔法攻撃力:25

防御力:54

魔法防御力:26

行動速度:71


職業

 弓戦士 ランク2

 

スキル

 特殊攻撃

  一点必中 ランク1

  矢の雨 ランク1

    

 種族特性

  飛翔   

  超感覚(中) 



ショウマはノートに書き留める。

ハチ子もハチ美も安定してるなぁ。

似たようなステータスだけど多少のズレはあるね。

2階では即戦力、二人だけでも勝てそう。

4階だとまだ二人じゃ無理。

そんな風にショウマは当たりを付ける。


二人はスキルも持ってる。

槍戦士、弓戦士のスキルだ。

ケロ子は最初、『体当たり』一つだった。

いつの間にか二つ目『空中蹴り』覚えてた。

ハチ子、ハチ美は現時点で二つずつ。

LV5くらいで覚える?

それとも職業ランク2?

何とも言えない。

ステータスに影響されるのかもしれない。


後は種族特性『超感覚』。

重要だろう。

昨日も活躍したスキルだ。

ハチ美は超感覚(中)、ハチ子は超感覚(小)この差は大きいかもしれない。

いずれ超感覚(小)から(中)へ成長したりするのだろうか。


「ハチ子

 その槍、見せてくれる?」

「王ならもちろんかまわない」


考えてみたら、まともな武器を持ってる従魔少女は初めてだ。

ハチ子の槍は木製、鏃の部分が金属だ。

長さはショウマの背丈と同じくらい。

てことは170cm前後。

この世界に来てから身長、図ってないや。

まぁ日本の翔馬と似たようなもんだろう。


「えーとランスって言うのかな?

 スピアだっけ」


ゲーム知識以外あまり武器に詳しくないショウマだ。


「ランスってのは馬に乗ってる人が持ってるデカイ槍だったかな」

「そうですね。ご主人様。ご存じじゃないですか。ハチ子のはショートスピアですね」


みみっくちゃんのウンチクキター。


「地下迷宮に入る槍使いはほとんどショートスピア装備してるですよ。

 何故か分かりますか、ご主人様。そうです。せまい通路も有りますからね。どでかいランス持ってたらジャマでしょうがないです。

 一般的に2M以下からショートスピアと呼びます。2M以上でスピアって事ですね。

ランスに至っては5M越えるようなのも有るそうですよ。持つだけで一苦労ですよ。

 たまにジャベリン持ってる人もいるです。手投げ槍ですよ。ただやっぱり破壊力も命中率も低いんで主装備じゃなくて、副装備ですね…」

「固有の特殊装備だったりしないのかな」


最後まで聞かないショウマだ。


「うむ、とくにその槍にコダワリは無い。

 もっと良い槍が有るならいつでも交換するぞ」


ハチ子のセリフだ。

特殊装備じゃなさそう。

勇者が最初から持ってる木の棒みたいなモノかな。



「どうぞ王よ。ご覧ください」


ハチ美の弓矢も見せてもらう。

これは木製。

長さはショウマの背丈を越えてる。

サイズの割に持ってみたら軽い。


「アーチェリーより弓道の弓に見えるな」


ショウマの学校に弓道部は無かった。

テレビで見ただけの知識だ。


「はい。弓にも種類がありますですよ。ハチ美のは長弓。

冒険者が使ってるのに多いのは1Mくらいの取り回しが良いタイプです。その方が番えて射るのに時間がかからないのがメリットです。

ハチ美のは大きいだけじゃなくて左右非対称なのも特徴的ですね。これは射るのに時間はかかるけど、命中性能はおそろしく高いと言われてるタイプですよ…

「ハチ美、ありがとねー」


「ショウマ王。こんな物で良かったらいつでもお渡しします」


もちろんウンチクを最後まで聞かないショウマ。


「矢が消耗品だし。

 数に限りが有るのが問題?

 あ、そっか。

 たくさん買ってみみっくちゃんに飲み込んで貰えばいいんだ。

 問題解決」


「イヤですよ。ご主人様はみみっくちゃんの扱いが雑だからイヤです」


だって職業:運び人だし。






カリンは神官だ。

母なる海の女神教団の神官の一人。

今日も今日とて呼ばれて出かけてゆく。

『聖女の塔』

聖女様のために作られた塔だ。

選ばれた人しか入れない。


出入り口は教団戦士によって厳重に警備されてる。

カリンはいつも思う。

神官はともかく、戦士まで青一色にしなくていーのに。

厳つい男の人が鎧を着けて立っている。

その鎧が全部青く塗られているのがなんか笑える。

センスが無い。

ベッタリ塗られてるのだ。


カリンの神官服だって青だけどこっちは白が中心。

ところどころに青が使われてる。

キレイな衣装。

神官になる前は憧れた衣装だ。

手元に青いラインが入ってる。

これは神官の階級を現してる。

カリンのは三本ライン。

神官服の着用を許された中で一番下っ端。

『聖女の塔』に入れるのは一本ラインの人だけだ。


「失礼します。

 三級神官カリン、入ります」


警備の人に名乗って、入って行く。


「おい、今の娘は?

 ここに入れるのは一級神官だけじゃないのか」

「ああ、カリンは『聖女』さま直属の側女だ」


「そっそうか。なかなかカワイイ娘じゃないか」

「アホウ。口説いたりするなよ

 そんなの『聖女』さまに知られてみろ。

 破門だぞ、破門」


『聖女』さまに言いつけたりはしないよ。

入り口を後にしてカリンは思う。

そんな話したらめんどくさい事になるのはカリンの方だ。


「なによそれ、ラブなの。ラブチャンスなのね。

 カリンにラブチャンスが有って、何でアタシには無いの」

 

今にもそんな声が聞こえてきそうだ。



「カリン、遅いじゃない。」

エンジュがカリンを出迎える。

今日は聖女の衣装じゃない。

ここはエンジュの個室。

だけど、適当な布の服を着るのは許されないのだろう。

女性神官の服装。

白に青。


「エンジュ、これでも急いで来たの。

 本当は今日非番なのよ」


「ゴメン、ゴメンね。カリン」

「んで、どうしたの?

 緊急の用事だなんて」


「あのね、あのね。

 もう2巻目読み終わっちゃったの。

 3巻目は?」

「それかーい!」


もしかしたらと思ってたけどやっぱりそれか。


絵物語だ。

子供向け絵本と大人向けの読み物。

その中間として今売れてるのだ。

いろんなジャンルが有り、老若男女を問わず人気だ。

特に、西方神聖王国首都スクーピジェから聖都市テイラーサにかけて。

この辺の街では教団の教会が多く、識字率が高い。

教会が年少の子供たちに無料で教育を施しているのだ。


迷宮の件かもと思ったのがバカみたい。

昨日から街では新しい迷宮が出来たって大騒ぎ。

良く考えたら迷宮の件ならカリンを呼ばない。

迷宮探索をしてる教団戦士を呼ぶだろう。


「エンジュ。貸した時言ったでしょ。

 まだ出てないの。

 2巻が出たのが今月。

 3巻はまだ予定も立ってないの」

「えーっ。

 あんなところで終わってるなんてあんまりよ。

 続き。続き~。

 今読みたい、すぐ読みたい」


子供のように駄々をこねる。

これが聖女サマなのだ。

非番の日に。

聖女様が緊急の要件でお召しだ。

そう言われて来てみれば…。

こんなとこだろうと思っていた。


「替わりに別の絵物語。貸してあげる。

 今はそれでガマンして」


予想していたカリンはちゃんと用意している。

別の絵物語。


「その本面白かったでしょ。

 同じ作者のよ。

 新人作家なの、エーデルワイスさん」

 

そこへ女性神官がお茶を持ってくる。

聖女エンジュはもちろんカリンの分までだ。


カリンは神官に頭を下げる。

相手は一級神官、カリンより偉い人なのだ。

神官の老女はカリンをジロリと見たけど、特に何も言わず出て言った。


「はぁー、緊張する」

「そんなに気になるんなら、

 カリンも一級神官になれば。

 多分アタシが言えばなれるんじゃない」


「イヤいい。やめて。

 本当にやめてね、エンジュ」


エンジュが言ったらホントウに一級神官になれてしまうかもしれない。

そんなんなったら陰でイジメられるに決まってる。


後は二人でガールズトークだ。

絵物語のどっちの美青年がステキか論評。

カリンはヒロインの幼馴染の騎士が贔屓だ。

一巻目ではついに幼馴染同士の気持ちが通じ合ったと思った。

そしたら二巻目で騎士に親の決めた婚約者が現れてしまった。

傷心のヒロインを慰めるのが大臣の息子の美青年だ。

その美青年と一緒に舞踏会で踊っている所を幼馴染の騎士に見られてしまった。

そんなシーンで二巻目は終わってる。

エンジュは大臣の息子の方が贔屓らしい。


「だって騎士様の方はもう騎士なのよ。

 手に職よ。一人前じゃない」

「大臣の息子だって、父に替わって領地を治めてるって言ってたでしょ。

 領地持ちなの。

 今は領地経営を学びつつ将来の大臣よ」


「そんなの口だけじゃない。

 どこまでホントか」

「それは騎士だって一緒でしょ」


「一緒じゃないよ。

 演習所に差し入れ行くシーン有ったじゃない。

 騎士隊長にだって認められてたわ」

「でも今はただの見習いでしょ。

 将来もいいとこ騎士隊長止まりよ。

 それに比べてこっちは大臣よ、大臣」


「だって騎士様の方が、サービスシーンも有ったしな」


一巻では騎士が鍛錬の後、汗を吹くために上半身はだけたシーンをヒロインが見てしまう。

もちろん絵の方もじっくり描かれてる。

挿絵がいいのだ。

美形で細身の騎士様。

脱いだら意外と筋肉質。

さらに後半には抱きしめられるシーンも有るのだ。

そこの絵もステキな仕上がりである。


「その武術練習してるシーンがヤなの」

「えー、露出嫌いだっけ?」


「露出じゃ無くて、武術練習とか筋肉とか」

「そうだっけ?」


「そう。だいたいあんなスマートな騎士いないわよ。

 実物はもっと汗臭いの」


うーん

騎士の知り合いはいないけど警備をしてる教団戦士は確かに汗臭い。

革鎧は汗を吸って臭くなる。


「そうね、革鎧はちょっと…」

「でしょ。

 アタシやっぱ、戦士よか大臣とか頭脳派の人の方がいいな」


「分かった。

 あれがイヤなんでしょ」

「分かるでしょ。

 やっぱりそうでしょ!」


「名前がバカだしね」

「でしょ。

 大地の神は父さんだよ教団

 信じられない!」


エンジュがイヤがってるのは、大地の神は父さんだよ教団の連中。

大地の神は父さんだよ教団。

バカみたいな名前だ。

少し名前を変えようとか思わないんだろうか。

さらに教団の人たちも大分アレだ。

みんなマッチョマンなのだ。

上半身ハダカで、胸筋肉をヒクヒクさせたりしている変態集団だ。

母なる海の女神教団の魅力は癒しと回復だ。

大地の神は父さんだよ教団は闘士の力だ。

素手の身体能力が上がるらしい。

カリンは思う。

イヤ、それ神の力じゃなくて筋トレしてるからだろ!


まぁ他人の教義に口を挟みたくない。

できれば大地の神は父さんだよ教団とも関わりたくない。

でも母なる海の女神教団と大地の神は父さんだよ教団は近しいのだ。

神話上、海の女神と大地の神は兄妹なのだ。

教団も昔は同等の関係だったらしい。

でも今では母なる海の女神教団は大陸最大の教団。

大地の神は父さんだよ教団は規模で言うと10分の1以下。

実質女神教団の下部組織みたいなものだ。


そんなこんなで教団でイベントが有ると必ず大地の神は父さんだよ教団からも人が送り込まれてくる。

みんな上半身ハダカで胸筋肉をヒクつかせながら。

そりゃ筋肉も嫌いになるよな。


それにしても。

カリンは思う。

エンジュが男性と交際するなんてあり得るだろうか?

彼女は『聖女』さまだ。

カリンと話すときは普通の女の子だけど。

いや。

友達と付き合う経験の少なすぎる女の子だ。

いまだに彼女は同年代の娘とお買い物に行った事が無い。

男性と二人で食事に行った事も無いハズだ。

『聖女』さま。

この世界で唯一の神聖魔法 ランク5を使える可能性が有る女性。

カリンにはランク5がどの程度の価値か良く分からないけど。

教団では500年ぶりの奇跡とか言われてる。

教団が彼女に結婚や、男性との交際を許すんだろうか。

エンジュの事が心配になるカリンだ。



【次回予告】

大地の神は父さんだよ教団

誰からも愛される教団だ。そう教徒たちが言っている。

何せ彼らは心身ともに健康だ。鍛え続けているのだ。腹直筋を。

大臀筋を。脊柱起立筋を。上腕三頭筋を。

愛されない筈が無いではないか。

「ランク5の魔法や、早く使ってーな。じれったいで、頼むわ」

次回、ショウマの選択は… 

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)


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