クズ度の高い少年が モンスターと戦って倒すと、倒したモンスターが美少女になって、倒した相手に絶対服従してくれる世界に行ってみた。

くろねこ教授
くろねこ教授

第123話 野獣の森ラスボスその3

公開日時: 2021年12月1日(水) 17:30
文字数:4,571

えっ。

ショウマは足を踏み出した。

舞台へ。

ラスボスステージ。

予想とラスボス違ったけど。

獅子の仮面をかぶった女性。

“森の精霊”フンババさん。

女性と従魔少女の女子だけバトルになるんじゃなかったの。

嬉し恥ずかしキャットファイト。

戦ってるうちに鎧がはずれちゃったりして。

ポロリもあるでよ。

みたいな。

そーゆーの。

違ったの。

サギじゃん。

んじゃ何のためにここまで来たのさ。

いや、何のためにかは決まってるんだった。

そう。

ショウマには目的が有るのだ。

『野獣の森』その奥の最奥まで来た目的。

しかし。

舞台へ足を踏み出したショウマ。

なんか違う処にいる。

ここどこ?

さっきまで見えてた石斧巨人はいない。

というかショウマの前方を歩いてた従魔少女達もいない。

みんなっ?

何処へ行ったの?


「来てくれたんですね」


誰かが言った。

獅子の仮面をかぶった女性。

“森の精霊”フンババさん。

神様と思ってる人もいる。

そうザクロさんが言っていた女性。

女性がショウマの目の前に立っていた。




「マズいですね」

「どうしたよ、ムゲン」


チェレビーは訊く。

訊きながらも前線を見ている。

ケガや疲れの多い戦士を後ろに下げて、回復させる。

替わりに回復終わった戦士で前線を支える。

何時の間にか監督のポジションになってる男だ。


「弓兵の部隊です」

「ああ、そう来たか。

 まあいずれ来ると思ってはいたが」


帝国軍だってシロウトじゃない。

自分達より圧倒的に数の少ない戦士達。

亜人の戦士に阻まれて何もせずにいるハズが無い。

何かの手は打ってくるだろう。

そう思ってはいた。

むしろ対応が遅すぎるくらいだ。


「道が狭くて兵士が詰まってますからね。

 帝国側もそう簡単に隊を移動できなかったんでしょう」


前では亜人の戦士達が帝国兵と戦っている。

人数差は圧倒的。

しかし道は狭い。

前列で戦えるのは5人程度。

状況はギリギリ拮抗状態。

亜人の村の戦士達はタフだ。

タケゾウやキバトラ、強者がいる。

ムゲンによる弓の支援。

戦線が崩れそうになればコザルがフォロー。

キズを受けたものは交替で後ろに下がる。

チェレビーが薬で回復。

それで保たせてきた。

そこに帝国軍が弓部隊を導入してきたのだ。

現在でこそなんとか戦士達は戦列を保っている。

しかし後方から弓で狙われ出したら。

後方にいる回復中の戦士やチェレビーも狙われる。

これ以上保たせるのは厳しいだろう。


「逃げようぜ。

 女達はもう逃げただろう。

 俺達も逃げっちまおう」

「無理でしょう。

 帝国軍が行かせてくれないですよ」


「んじゃあどうすんだよ。

 ムゲン、アンタだって時間稼ぎしたら逃げるつもりだったんだろ」

「さあて、そこまで考えてませんでした」


「嘘だろ!」


そこに弓矢が降ってくる。

観察していた通りである。

帝国の弓兵は自分達の同僚は撃ちたく無いのだろう。

前面で切り結んで出る所を越えて後方を狙う。

弓なりに上空に向かい矢を飛ばす。

落ちてきた矢が亜人側の後方を襲う。

この撃ち方では正確に狙いを付けることは出来ない。 

しかし帝国軍は数がいるのだ。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるのである。


「やべぇ」


チェレビーの近くの地面に矢が刺さるのだ。

続けて矢は何本も降ってくる。


「冗談じゃねえよ。

 オレは逃げるぜ」

「分かりました。

 お好きにどうぞ」


「被害を受けそうな女が逃げる時間は稼いだんだ。

 充分だろ」


そう言ったがチェレビーはウロウロしたまま。

亜人の村の戦士は逃げない。

ムゲンも降ってくる矢を避けながら弓矢を構える。

後方の弓兵を少しでも減らすつもりのようだ。

タケゾウは変わらない。

最初から嬉々として前線で刀を振り回している。

チクショウ。

何でコイツら逃げねーんだよ。


「あーもう、クソッ」


言いながら矢傷を受けた亜人の戦士の治療をする。

矢を革鎧から引っこ抜き、消毒液をぶっかける。


ヒュッ。

上から降ってくるモノを小柄な人影が受け止める。

顔まで布装束で隠した忍者。

コザル。

チェレビーに当たる軌跡を描く矢。

そいつを受け止めたのだ。


「逃げるなら今のウチだ。

 弓兵が更に追加されている」

「何だと。

 やべーじゃねーか。

 お前こそ逃げろ」


「コザルは平気だ。

 イザとなったら一人でも逃げられる。

 自信がある」

「あのな」


チェレビーがコザルを引き寄せる。

2人にしか聞こえない声で囁く。


「お前女だろ。

 可愛いムスメは戦場じゃろくな目に遭わねえ。

 相場は決まってんだ」

「な、ななな…」


薬師のチェレビー。

医者の真似事もしている。

体形や歩き方を見れば男か女かくらい分かるのだ。


「チェレビーも一緒に逃げるのか」

「いや、オレは男だからな。

 一人だけ逃げるようなカッコワルイ真似できるかよ」


「ならば自分も逃げない。

 忍者だからな。

 任務が最優先だ」


そんなもんか。

自分がカッコワルイ真似できねー。

そう言ってるのであまりしつこく言えないチェレビー。

コザルが主人キューピーから言い使っている任務はエリカの護衛。

ついでにショウマから目を離すな。

その二つだ。

どちらともあまり関係ない事をしている。

そこまではチェレビーには分からない。


「分かった。

 イザとなったら本当に逃げろよ」


そう言おうとしたチェレビー。

ヒュッヒュヒュヒュッ。

矢音、しかも複数。

上も見ずに目の前の小柄なムスメを抱きしめ自分の身体で守る。

上から覆いかぶさったのだ。


ムゲンも見上げる。

多数の矢。

マズイ、これは誰かしら喰らう。

だが。

ビュッ。

風を切り裂く音がする。

矢音では無い。

頭上の空間を走る唸るモノ。

あれは革鞭か。

広い空間を革鞭が薙ぎ払う。

矢のほとんどを払い飛ばす。


「うふふ。

 こんにちは。

 手練れのお姉さんの助けは要るかしら?」


革鎧の上にコート。

両手に革鞭を持っている女冒険者。

マリーゴールドであった。

誰だか知らないがムゲンは答える。


「ええ。

 ちょうど必要としてた処なんです」



それはそれとして。

布装束の忍者コザル。

コザルは上を見ている。

今なにが起きた。

男に可愛いムスメって言われた。

そのまま男が自分を抱きしめた。

男は自分に覆いかぶさっている。

これは一般的に押し倒されたと呼ぶのでは。

今、もしかして自分は。

男に可愛いと言われて押し倒されたー?!


 


「あれあれあれーっ」

「なんでなんで」


「ショウマ王、いずこへ?」

「ショウマ王、何処へ行ったのです?」


「ショウマ?、ニオイもしないよ」


ケロ子達はパニック。

ショウマと一緒に舞台に入ったのだ。

なのにショウマがいない。

影も形もないのだ。


「ハチ美、お前は王のとなりに居たハズだ。

 王はどこへ行かれたのだ?」

「分かりません、姉様。

 ついさっきまではいたのです」


「分からんで済むか。

 王のとなりに居たのだろう。

 王の一番近くを任じられたのだ。

 王の護衛を任されたも一緒だろう」

「それは、私だってショウマ王を見てはいました。

 舞台に入るまで橋の上にいた時は間違いなく隣にいらした。

 それが舞台へ足を踏み出した途端、気配が無くなったのです」


WWOOOO!WOWOWOWWOOOO!

吠え声が上がる。

巨人である。

少女達の前には巨人。

石斧を担ぎ、少女達を睨む。


「みんな落ち着くですよ。まずアレを何とかするです。あんなのが居ちゃ落ち着いてご主人様も探せないです」


巨人は石斧を振りかぶる。

振り下ろす先はトーゼン従魔少女達だ。


「ハコ、キサマ王が心配じゃないのか。

 あんなの後回しで良いに決まってる」

「あんなの後回しで良いのです」


もうそこまで来ているのである。

石斧。

身長5、6メートル有る巨人が振るう石斧。



『ツタ縛り』


どこかから現れた植物のツタ。

ツタが巨人を縛り付ける。


「落ち着くですよ。舞台に上がるまでご主人様は確かにいました。それが今全く姿が見えないという事はですよ。フツーじゃない現象です。

 異常ですよ。異常はご主人様の専売特許です。得意技です。きっとご主人様が何かしたんですよ」


「ショウマ王が?!」

「ショウマ王が?!」


ケロ子は舞台から出ようとする。

橋の上に戻る。

見えないけど橋に戻ればショウマさまがいるのかも。

だけど。

出られない。

見えないカベの様なモノが邪魔をする。

舞台から出る事が出来ない。

土の地面までは降りられる。

その先に行けない。

すぐそこに見えている橋。

足を踏み出すことが出来ないのだ。


「ショウマさまっ」

「来るよ」


タマモが言う。

警戒の声。

巨人はツタに縛り上げられたが一瞬だけ。

すぐにツタを破り自由になった。

今度は巨大な足で踏みつけようとして来る。


「ハチ美、さっきご主人様と決めた計画が有った筈です。ご主人様は何と言ったですか」


「!、

 状態異常の攻撃を使えと」



『気絶の矢』


ハチ美の矢が巨人の顔近くを飛んでいく。

当てはしない。

ダメージを与えるのではない。

頭近くを飛んでいく。

その衝撃波で相手を昏倒させるのだ。

巨人は喰らった。

足を上げていた巨人。

そのままバランスを崩して横に倒れる。

ズッシーーーーーン!

スゴイ音が響く。


今だっ。


「ハッ」

ケロ子はジャンプ。

上から巨人の頭部へと足の裏で蹴る。

カカト落とし。

人間の体で一番固いと言われる場所を使った攻撃。


「このっ」

タマモはハルバードを振り上げる。

斧刃部分を打ち下ろす。

武器の重さに勢いを付けて。


「ハチ子ちゃんもっ」

ケロ子に言われてハチ子も動く。

王の事が大事。

だがコイツを倒さないと王の行方も探せない。

聖槍、隼風は消えてしまった。

時間切れ。

しかし普段から使ってる槍が有る。


『五月雨突き』


立て続けに槍が何度も巨人に突き刺さる。


WWOOOO。

吠えて巨人は頭を起こす。

体に攻撃していた少女達を手で払う。

ケロ子とタマモはさっと避ける。

スキルで攻撃してたハチ子だけぶっ飛ばされる。


「アイタタタ」

巨人は軽く手を払っただけなのに。

ハチ子は後方へ飛ばされた。

後方で待機してたみみっくちゃんの横までぶっ飛んでる。


「ハチ子、回復薬です」


みみっくちゃんが薬を差し出す。


「すまん、貰うぞ」


薬を飲み干す。


「ショウマ王はどうしたんだ?

 ハコ、お前は心配じゃないのか」

「心配です。みみっくちゃんご主人様が心配ですよ。ご主人様ーって叫びながらその辺を走り回りたい位ですよ。でもそんなコトしても役に立ちません。みみっくちゃんが慌てたらどうにかなるならみみっくちゃんこの舞台の上を3周でも4周でも走り回るです。

 ハチ子、さっきのケロ子お姉さま見てたでしょう。今みみっくちゃん達この舞台から出られません。

 まずあの巨人を倒すです。おそらくアイツを倒せば舞台から出られますですよ。そしたらご主人様を探せるです」


「そうか…。

 そのデクノボウを倒せばいいのだな。

 そしたらショウマ王に逢える。

 本当だな。

 ハコ、信じたぞ」


「いや、みみっくちゃん倒せばご主人様に逢えるとは…」


逢えるとは言ってないです。ご主人様を探すことが出来る。

そう言ったんです。

その言葉を飲み込む。

まあいいでしょう。


「はい、逢えます。参謀役を信じなさいですよ。だからまずはアイツを倒すです」




【次回予告】

帝国兵達は目を見張る。女が出てきたのだ。亜人の男達と戦っていた。蛮族だけにコイツラは力が強い。しかし人数はこちらが圧倒的に多いのだ。盾を前面に押し出し、隊列を組む。更に後方から弓で攻撃する。弓による遠距離攻撃で敵は崩れた。相手を潰せる。そう思ったら亜人の戦士達の前面に出てきたのだ。革鎧の上にコートを着た女。

「フワワさん。アナタに話が合って来たんだ」

次回、“森の精霊”フンババ名前を変える。 

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)

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