止まらない……。自分の心に嘘をつきながら過ごす毎日。呪いのように頭から離れない結果への執着。やり場のない怒りが向く先は川村……。
今日の放課後、私は川村に今までで最も非道な仕打ちをしてしまった。制服が破かれるほど川村を踏みにじり、唇を切り出血するまで殴った。酷いことをしている。実感はあったのに、もう自分で止めることは叶わない。仲間がいたから陰湿に笑ってみせたが、心中はまるですっきりしていなかった。
瞼の痙攣も止まらない。先生も私を見て見ぬふりしているだけ。もう、勉強もしたくない。家にもいたくない。居場所だと思っていた学校は、嘘で塗り固めただけの箱部屋。
私にはもう何もない……。
私には、もともと友達なんていなかったんだ。人より秀でているところなんて、ないんだ。上には上がいるって、分かってるはずなのに。世の中は、全部が思い通りにいくほど甘くないって、もう知っているのに。なのに川村に八つ当たりして……。最低だ。私は最低だ……。
私なんて、消えてしまえばいいのに。
家に帰ると、いつものように家族はリビングにいる。食卓には食後の皿が置かれたままだ。私のご飯は用意されていない。洗濯物も私の分だけ残されている。……虚しい。普通の家なら、「お帰り」と言ってくれるんだろうか。
ご飯、作らなきゃ……。
ふらつく足取りで、キッチンに向かう。その時、視界に包丁が映った。まるで霧がかかったような思考で、包丁を手に取る。包丁の刃が手首に近づく……。死ねば……死ねば楽になれるかな……。
その時、向こうの部屋から笑い声が聞こえてきた。お父さんとお母さん、お姉ちゃんの笑い声……。今、あなたたちのすぐそばで、私が何をしようとしているのかも知らずに……。
死んだら、みんな私を見てくれるかな……。
刃が手首に触れた。これを引けば……これを引けば、私はたちまちこの世の理から、不条理から解き放たれる。
しかし……。私は、包丁を手首に当てたまま、それ以上の身動きができなくなっていた。ただプルプルと、その状態で小刻みに震えるだけ。
やがて、手首に何かが滴った。ぽたりと、生暖かく私の手首を濡らしていく。
泣いてるの? 私……。目から止めどなく溢れるそれは、私の頬をゆっくりとつたい、優しく手首を濡らしていく。やがて私は、その場にうずくまってしまった。
私には死ぬ勇気もない……。誰かに助けを求める勇気もない……。
その日は何も食べずに寝た。次の日、気づけば教室にいた。登校してきた記憶もない。瞼の痙攣だけは相変わらずだ。今日も川村に嫌がらせをしている。机に死ねだの、バカだのと落書きをして、仲間と一緒になって陰湿に笑う自分がいる。これは本当の私ではない。私ではないんだ。そう分かっていても、止まれない。もう、このまま止まることなく、私は潰れていくのかな。誰かに助けも求められないまま、私は落ちぶれていくのかな。仲間と共に川村の机に落書きをして、満足そうに笑う私。そんな私を嗤う、私。ああ、虚しいな……。
誰か助けて……。
その時だった。
「おい、歯ぁ食いしばれ」
早田……? 振り返ると一瞬、確かに早田の顔が確認できたその瞬間、私の顔面を鈍痛と衝撃が襲った。
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