スマホで天下統一!?

戦国時代にタイムスリップしたので信長に天下取らせます
神部洸
神部洸

第三話 野遊び

公開日時: 2022年3月15日(火) 12:59
文字数:1,045

 翌日から、俺は信長とずっと行動を共にした。


 朝も、信長が俺の部屋に押しかけてきて無理やり起こし、朝食もあり得ないことだが共にした。城の外へと遊びに行くときも、川で泳ぐときも、畑から瓜を盗むときも、俺と信長はずっと一緒だった。


 信長といると、常に新しい何かを知った。令和の世界を生きてきたから、戦国時代との違いとかそういう話ではない。織田信長という少年は、唯一無二の存在なのだ。ただの暴れん坊のように思えるがそうではない。実は行動一つ一つを慎重に考えながら行っているのだ。


 例えば、畑から瓜を盗むとき。どうやれば主人に気づかれないように盗めるのかを研究していた。川で泳ぐとき、どうすれば服を着たままでも泳げるかを研究していた。そして地元の少年たちを集めて模擬合戦をさせるとき、どうすれば数の差があっても勝てるのか研究をしていた。


 彼の奇想天外な行動のすべては、彼のどうやって、なんで、そういった感情を埋めていくために必要な研究材料だったのだ。これもすべて、信長の夢を叶えるために必要だったのだ。



 ある日のことだった。その日は昼を過ぎても信長が外に出ないので今日は何もないと思っていた。信長がとっておきの場所に連れて行ってくれるといった。いつもは馬を飛ばして遊びに行くのに、この日は歩いていくといった。


 しばらく濃尾平野の広い平原を歩き、その後つぶれた山寺の階段を上り始めた。今見えているだけでももうすごい段数がありそうだ。


 結局階段を上るだけで二時間以上を使い、気が付けば那古野城を出発してから4時間以上が経過していた。たどり着いた場所は小さな山の頂上だった。もう夕日が見え始める頃だ。


「秀太。あれを見ろ。」


そういって信長が指さした方向には、今まで登ってきた山道に夕日がすっぽりと収まっているというとても美しい風景だった。


「奇麗だろ。この時期にしかこの風景は見られないんだ。」


 そう語る信長の背中が、身長以上に大きく見えた。やっぱりこの少年はすごい。


「いまから俺は独り言を言う。あくまでも独り言だ。いいな。」


「うん。」


「俺の夢は、尾張統一とか、マムシ(斎藤道三)に勝つとかそういう小さなものじゃない。俺は天下を取る。俺が自分の手でこの日本を作り替えていく。日本を俺の国にしたいんだ。」


「いいじゃないか。信長の国。俺も見てみたい。」


「秀太って二人になるとすぐに砕けるよな。」


「友達ってそういうものだろう?」


アハハハハと声を合わせて笑う俺と信長。二人の笑顔の間をまぶしすぎる太陽がゆっくりと沈んでいくのであった。

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