俺と信長が初めて出会った日。俺は信長に連れられるがまま信長のこの頃の拠点・那古野城へと誘拐されてしまった。
「若様‼」
城に入ってから3つ目の門をくぐった時、背後から老人の怒鳴り声が聞こえた。きっと、いや確実に信長に向って叫ばれたものだ。
「なんだ爺。」
恐る恐る俺も振り返ってみると、そこにはもうそれはそれは怒っている背の高い老人がいた。地味な着物を身にまとっているが、その味が逆に彼の彼らしさを際立てていた。
「いつもこの正秀が申しておりますが、もう若様は15歳。このようにかぶいて城外に出られるのはおやめください。」
「平手の爺は厳しすぎるのだ。まだまだ父上はご健在。俺はもう少し遊んでいても良いだろう。」
怒っている正秀を相手に、信長は一歩も譲らない姿勢を見せた。あぁ、これはとんだ修羅場に巻き込まれてしまった。
「今日は。これぐらいで済ませましょう。そういえば若様。この者は?」
しばらく二人が口喧嘩をしてから、正秀がそういった。やっと俺のことに話題が移った。
「こいつは木下秀太。この信長第一の臣じゃ。」
「犬千代たちとはどう違うのですか?」
正秀が少し信長の上げ足を取るように質問した。きっとどこの馬の骨かもわからない俺が信長に近づくのが嫌なのだろう。
「犬千代たちは俺の部将だ。秀太は家来で俺の友じゃ。」
そういうと信長は俺の手を引いて駆け出した。「まだ話は終わっていない。」と言いたげにあきれた正秀だけがその場所に置いて行かれた。
それからしばらく走って、大きな建物の前までやってきた。
「ここが御殿だ。俺の住処で、今日からはお前の住処でもある。」
「は、はぁ。」
俺はこの那古野城の本丸御殿の4畳半の一室を信長から貰って住むことになった。いよいよ本当に信長の家臣として俺の第二の人生が始まることになった。
俺は戸を閉めて、ポケットからスマホを出す。それからワキぺデア(インターネット大辞典)の織田信長についてのページを開く。
「肖像画って結構適当だな。」
織田信長張本人に出会ってみると、結構肖像画との違いがみられる。高校生のみんな。教科書に髭の落書きとかしてるかもしれないけど本物はもっとイケメンだからね。
それから、今時点での信長の将来について調べてみた。この時点では、まだあまり信長の人生に変化は見られない。俺はそのページを全部スクリーンショットを取って保存した。
「もし、もし俺が本当にタイムスリップしたのならば、信長と出会って家来に慣れたのなら、信長と、信長に天下を取らせよう。」
織田信長の家来となった高校生の俺に、一つの夢、目標ができた瞬間だった。
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