サンストーンへ愛の讃歌を

オリジナルBL小説
べべ
べべ

再会

1話

公開日時: 2022年2月22日(火) 16:36
更新日時: 2022年2月22日(火) 16:40
文字数:1,372







冬木 藍 (フユキ アイ)


高校2年生

生徒会長

眉目秀麗

文武両道を地でいくタイプ






秋元 奏 (アキモト カナデ)


高校2年生

冬木の学校へ転校する

眉目秀麗、橙色の瞳が特徴的















 所々に付いた雫でキラキラと輝く木に1羽の鳥が止まる。大きさと特徴的な鳴き声からすると鳩のようだ。

暫くの間その場で羽を休めていた鳩はこちらを一度見た後、再び青く広がる空へと飛んだ。鳩に習って大きく腕を広げてみたが当然人間の自分が飛べるわけもなく、溜め息をついて視線を地面へと戻す。昨日降った雨でできた水溜まりに眉間にしわのよった顔が見えた。そいつの橙色の瞳は不気味で気持ち悪く、鳥肌がたった。嫌いだ。

小さな子供のように水溜まりを蹴る。何重もの波の輪がそいつの顔を歪めたのに、橙色だけは何時まで経っても消えなかった。

雨の日より雨の翌日の方が気分が下がる。視界に何度もそいつが現れる。現れる度に蹴り飛ばしているものだから目的の場所に辿り着くまでに時間がかかる。鳩はいつの間にか居なくなっていた。

 漸く見えてきた建物は今日から通う学校。まだ出来てそれほど経っていない校舎は前まで通っていた所より綺麗な見栄えだ。壁はくすんでいないし亀裂も出来ていない。いや、あの亀裂は早々に直した方が良いと思う。転校する前に校長にでも言ってあげるべきだったかとするつもりなんて毛頭無いことを思う。

 正面玄関から入って事務所の人に職員室まで案内してもらう。父の仕事の都合上この学校へ転校してきたが、外から見たものと同じように校舎内も随分と綺麗であった。廊下から聞こえる生徒の声も、職員室内に居る教師達の視線も嫌で嫌で仕方がない。込み上げてくる吐き気を必死に抑えながら、担任だと言う男性教師の話を何とか聞き取る。自分のクラスには非常に優秀な生徒会長が居るから安心してくれと、分からないことがあったら彼に聞くと良いと話す担任に、心が落ち着くことなどなかった。まだ新年度が始まったばかりだと言うのに2年生で生徒会長、優秀だと言うのは本当のようだ。だがそんなことなどどうでもいい。ただ静かに過ごしていられるのなら、そんな資格が自分にあるわけがないのにこんなことを思うとはなんて醜悪。

 自己嫌悪に浸っていればもう目の前には教室が。ここが今日から過ごす教室。脳裏をかすめる景色に目の前がグワングワンと揺れる。気持ちが悪い。

おぼつかない足取りで教壇に立つと担任が自分のことを紹介してくれた。今までの自分の様子から上手く自己紹介など到底できないと察してくれたのだろうか。よく喋る人だが気が利くようで有りがたかった。だが感謝するほどの余裕なんてなくて、集まる視線、視線、視線。見えるのは自分の足元だけなのにまるでナイフに刺されたかのように痛くて苦しい。震える手をもう片方の手で押さえても、どのみちどちらも震えているのだから意味なんてなかった。


「秋元は冬木の隣の席な、先程言った生徒会長だ。冬木、よろしい頼むぞ。」


「はい。」


 担任の言葉に答える澄んだ声に顔を上げる。自分の席が何処なのか確認しなくてはならない。確認したらすぐに元に戻そうとしたが、体はまるで石のように固まって動かなかった。席が分かるように手を挙げている生徒会長と呼ばれたその男はかつて自分がいじめた同級生だった。俺の最も後悔した記憶、謝罪してもしきれない相手。許されない罪。その男もまた、こちらを見て目を見開いていた。あぁ、彼も自分を覚えている。きっと心の底から俺を憎んでいるんだ。震えが強まり、呼吸が浅くなった。左腕に激痛が走った。















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