僕とひよしさんは、花火とバケツを持って、近くの公園に行った。
小さな公園だから、夜は人が全くいない。
僕らは花火セットの中身を開け、オーソドックスな手持ち花火に火をつける。
バチバチバチと色とりどりの火が踊る。
「綺麗だね」
「だな。たまにはこういうのもいいよな。つーか空、いつまで制服着てんだよ」
「なんかもう着替えるの面倒くさくて」
「空ってさ、キチッとしてんのか面倒くさがりなのか良くわかんねーよな」
「そうかなぁ?ひよしさんは100パーセント面倒くさがりだよね」
「んだとコラ。ロケット花火、お前に向けて発射するぞ?」
「…いい大人でしょ…」
発言が中学生だよ、ひよしさん。
ひよしさんの花火が終わったので、新しいのを取り出しながら僕に「火、もらうぜ」と言って近付く。
僕の手持ち花火から火を移そうとするとき、ふいにひよしさんの腕が僕の腕に触れる。
そのままひよしさんはじーっと花火の先を見つめる。
「ひよしさん、もう火ついたよ?」
ひよしさんの花火にも火がついたのに、僕に密着したまま離れないひよしさんに言った。
「なぁ、空」
「なに?」
「空の制服姿を見ていられるのもあと1年半くらいなんだな」
僕は高校2年生で、今は夏だから、卒業までは確かに約1年半だ。
「急にどーしたの?」
「別に。ふと思っただけ。」
なんか珍しくひよしさんが物思いに耽ってるから、僕も珍しく自分からひよしさんの広い胸に顔を寄せてみた。
「急にどーした?」
「別に。そういう気分だっただけ。」
そうして僕ら2人は暫く花火を見つめていた。
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