散文詩集『ランタン』

仮題
紫夏 伊乃
紫夏 伊乃

夏を嘆き

夢想

公開日時: 2022年8月11日(木) 22:57
文字数:382

許して、許さないで。

愛して、愛さないで。

笑って、笑っていて、私のことは嗤って。

泣いたりはしないさ。

罪人にも涙を流す資格はあるが、それでは私が私を許せない。


もし会えたら、まずは笑いたい。

以前のようには笑えないけれど、笑いたい。

そうして、謝罪をして抱きしめて、

君は私の頬を引っぱたいてくれれば良い。

謝って許されることではないのだと言って、

きつく睨んでくれれば良い。

私は、君が呆れたように吹き出して笑みを浮かべるまで、

足元に縋りついて謝り続けよう。


叶わない夢は、やはり持ち続けるような物ではない。

現実に溶け込めない色を持つのが、叶わない夢というものだ。

夢を抱くこと自体は悪くない、はずなのに、

存在しない物に手を伸ばし続ける愚行は、

ただ時間を浪費し、己を壊すのみだ。


さぁ、夢に囚われた少女は一人、

部屋に篭って“話しかける”。

「お願い、今日も謝らせて」

ね?馬鹿みたいだろう。

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