「実は僕、創作小説を書いてるんだぜ」
午前中の授業で疲れた生徒たちによる天国な休息、教室でのお昼休み。
突然、蛭矢君が眼鏡を光らせながら、とんでもないことを言い出したよ。
「大丈夫、この暑さで頭やられて熱中症になったん?」
そんな心配性な美伊南ちゃんが彼にうちわを扇いでくれている。
「違う、僕は真面目な話をしてるんだよ!」
「だから妄想絵日記ごっこもいいけど、たまには水分補給もきちんとしなよ。まあ、今日は美伊南が色々持ってきたからさ」
トマトジュース、
おしるこ、
コーンポタージュ、
おでん缶、
めんつゆ、
スパゲティーミートソースなど……。
彼女の紺色の四次元スクールバッグから様々な物がポンポンと飛び出てくる……。
「美伊南ちゃん、でもこれほとんど飲み物じゃないですよね?」
「そして極めつけは……、
じゃーん、一晩煮込んだビーフシチュー♪」
「あの、人の話聞いてますか?」
美伊南ちゃんが私の話をそっちのけで、赤の1リットルサイズなステンレスの水筒をさらけ出す。
「美伊南ちゃん、シチューは食べ物ですよ!?」
「大丈夫、英子。じっくりガンガン煮込んで具材は溶けきっているから。
──それにこんな昔話があるんだよ」
……ふむ、それなら詳しく聞かせてもらいましょうか。
私と蛭矢君が教室の机を美伊南ちゃんの机に繋げて座り、彼女の昔話に耳を傾ける。
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──昔、あるところに空腹でひもじい男がいた。
男は昨日、とあるギャンブルにハマって一文無しになり、帰宅して冷蔵庫を開けた手元にはビーフシチューのルーとタピオカミルクティーしか残っていなかった。
そこで男は考えた。
もしかしたらこの二つを都合よく組み合わせたら最強の栄養ドリンクが完成するかも知れないと。
喉の乾きを抑え、さらに空腹さえも満たす──これはノーベル賞ものの一石二鳥な最高傑作になるかも知れない……。
****
「──そして男は知ったのよ……タピオカじゃないアクセントの方が良かったと」
「それで飲んで効果はありました?」
「熱で固まったタピオカを喉に詰まらせ、丸一日狂って病院に運ばれて──たわ言で愛媛のミカンにしとけば良かったと言っていたらしいよ……」
その話を横で聞いていた蛭矢君が急にガバッと立ち上がる。
それからすぐさま、覚悟を決めた顔つきでタピオカビーフシチューの入ったボトルのカップを我が手に取り、勇ましき勇者にも見えるよ。
でも大変。
あれはバ○ルスライムみたいな怪しげな液体だから彼を早く止めないと。
「待って、蛭矢君。それは飲まないで下さい!」
だけど、時すでに遅し。
どうしよう。
彼はあっという間にグイグイと飲んでしまったよ。
ああ、もう知らないよ……。
「中々、旨いじゃんか♪」
すると予想外の反応。
へえ、これ見た目だけで実は美味しいんだ?
──そこへタイミングよく大瀬君が通りかかる。
「そうなのか? 俺も喉カラカラなんだ。ちょっと飲ませろよ」
「……うくっ」
『バタン!』
あれ、そのまま固まった体勢で大瀬君が地面に倒れたよ!?
「あはは、効果には個人差があるから気をつけてな」
ようするに、とてつもない味で蛭矢君は運動音痴の他に味覚音痴であるということも分かったよ。
大瀬君、物凄い顔で白目を剥いて気絶していたし……。
このあと、蛭矢君は元気全開になり、タピオカビーフシチューはスタッフで犠牲者が出ながらも美味しくいただきましたとさ……。
みんな、食べ物は粗末にしては駄目ですよ。
第4話、おしまい。
人間の体はとにかく水分補給が大事で、何もしなくても一日約二リットルの水分を消耗します。
特に夏場は注意が必要で、体温を下げるために汗をかきますから水分補給を怠ると倒れます。
農家の人とかがよくやりがちなんですよね。
近くにお手洗いもありませんからまともに水分補給をしない人々も多数。
体を巡る血液も細胞も水でできているのにその偏見には困ったものです。
でも普通に飲む分には影響は少ないですが、水の飲みすぎも悪いんですよね。
血液が薄まって、意識を失う。
俗に言う水中毒という代物ですね。
飲むのは個人の自由ですが、飲むにせよ、程ほどにして欲しいものです。
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