たったったーん
たかたったったたーん
たったたったたかたかたーんたかたかたかたかたたーん
Q.社長が企業をされた理由は?
「ホストクラブで豪遊したかったからです」
株式会社動物園社長・うさぎの素顔に迫る–––!!
9時30分。
株式会社動物園社長・うさぎの朝は早い。
「早い? あなた時計が読めないんですか? もう始業時刻ですよ。社長は最も遅いお目覚めです。どこが早いの? 『ぞうの朝は早い』に変えてくださる? 『社長』の部分はそのままでいいから」
彼女はうさぎの秘書、ぞ–––「秘書じゃありません。事務兼経理担当ですが『社長』でも構いません」は、はい……。
「社長、起きてください! まったく、10時にイノウエ様が来られるのに。すっぴん、パジャマで接待するおつもりですか?」
バァン!!
「おっはよーございまーす!!」
びっくりした……。玄関を破壊する勢いで開け、勇ましく登場した彼、とらは株式会社動物園の戦闘員1号–––「戦闘員? 1号? 他に誰かいんの? よくわかんねえけどかっこいいな! おっちゃんサンキュー」いえいえ、滅相もない。
「とら、うるさい。安眠妨害の罪で減給」
「めちゃくちゃ困ります! 今月ゲームに課金しまくって金がないんす! 俺破産する」
「前から思ってたんだけど、ゲーム控えた方がいいわよ。視力が落ちたり、依存症になったりしたら大変。1日1時間にしなさい」
「とらはもー手遅れー。はい、アーメン」
「しゃちょお、見捨てないで! 俺視力両目とも1.5だから! ゲームは1日1時間だとピーチ姫を救えねえ。ピーチ姫は俺の助けを待っている! でも努力してセーブするから!」
「あれミチオさんだ。取材、今日だっけ?」
……忘れられていたようだ。
「昨日私、リマインドのメールをしましたが。確認していないんですね」
「急いで準備しないとー。ささっ、仕事仕事」
「寝坊しておいて! あと15分でイノウエ様がいらっしゃいますよ!」
「社長、減給しないでえええええ」
「とら、玄関の警備をお願い。イノウエさんが来たら足止めしてー」
「全力で阻止します! だから減給しないでえええええ」
「ぞう、組み合わせは任せるからスーツ見繕ってー。あとコーヒー」
「承知しました」
「わたしは顔面を整えてくるー」
「また整形するんすか!?」
「メイクのことだよー。とら、減給」
「あああああああ」
「ねえ、ミチオさん」
なんでしょう。
「そこのデスクの下–––違うー、1番奥の、そうそう。潜り込んで隠れててー」
「イノウエ様はふたりで話をしたいとのご要望ですが」
「知ってる。ふたりで話すよー。ミチオさんは録音係。備えあれば憂いなしでしょー。いいカメラ使ってるじゃーん。声、きれいに残せそう」
「まあな。この日のために入手したSONYの最新型だ。画質も音質も保証するよ」
「盗み聞き係にはもってこいだねー」
盗み聞き係とは失敬な。–––このデスク狭っ! 背中が痛い。腰痛が悪化しそうだ。
しかし、うさぎの素顔を捉えるという任務を果たさなければならない。歯を食いしばれ、耐えるんだ、昭和の魂をなめるなよ!
「盗聴係さんうるさいわ。お静かに」
「せめて『盗み聞き係』にしていただきたい」
「略しているかいないかの違いで意味はまったく同じです」
「そーそー。こだわらないでー、気楽にやろー」
「社長は気楽すぎます! ワイシャツにアイロンをかけておきました。コーヒーはこちらに」
「おーけー、ありがと。これでいぬを呼び出してお茶してきてくれるー? 3時間くらい」
「勿論ですわ。そういえばいぬちゃん、この間サンシャイン通りの奥に新しく開店したイタリアンのお店が気になるって言ってたような……」
「はい、お釣りは好きに使ってー」
「まあ、そんなつもりはなかったのに! でもお言葉に甘えて、ありがとうございます」
「俺、絶対阻止する! オッス! オラとら! 負けねえぞ!」
「じゃあ減給にも負けないでねー」
「あああああああ」
ぞうの鼻歌。とらの断末魔。
ふたつを前に飄々としているうさぎの様は、まさしく「社長」であった–––。
完。
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