「おいおい何だこれ。冗談だろ…………冗談じゃないなら早く皆逃げよう」
クラスメイトの男子1人が入り口のドアへ走る。背の高いリーダー格の男子だ。それを合図に同様の考えの者も数人入口へ向かった。
けれど、デスゲームを始めるような相手がそれを許してくれるわけもなく……。
「カギは閉まっテるよ。もちろん窓も全部。無理やり出るこトもできるかもしれないけド、おすすめはしない。ついでに説明しとくト、このゲームから逃げ出すことも他者に助けを求めることも禁止だからネ。禁止行為をすることも死ぬこトに繋がるから注意しよう。さあ、席に戻っテ。ゲームはもう始まっテる」
「ふざけんなよ。そんなゲームには俺達誰も参加しないって。化け物め」
「うるせえナ。さっさと席に戻れよモルモット。今死ぬカ?」
ミニ人体模型が手を伸ばして、再び指の間から電流をちらつかせる。リーダー格の男子の顔が引きつった。
しかし、その男子は近くにあった丸椅子を掴んで戦う姿勢を見せた。クラス中に緊張が走る。
「――とりあえず、ゲームの内容を聞いてみようぜ。ここは大人しくしといたほうがいい」
その手を止めたのは近くにいた他の男子。やけに落ち着いた様子で逃げようとした連中を席に戻るように促した。
僕は現在既にこのデスゲームの攻略法……ゲーム脱出への道が見えている。だから逃げるも止めるも頭に無くて、とにかく行動を起こさずにその時が来るのを待つ構えだった。
大丈夫。僕にはあれがある。最初のゲームさえ乗り越えれば僕の勝ちだ――。
「気を取り直しテ最初のゲーム、ブラックボートの説明をするヨ。大げさな名前をしテいるけど、このゲームは簡単に言うと多数決サ。ここにいる全員が誰を殺したいかをそれぞれ投票しテ1番獲得票数の多い者が敗北者として殺されル。投票はこのボックスの中で1人ずつの決まりネ」
とりあえず事なきを得た化学室でミニ人体模型が嬉々として話す。ミニ人体模型が指を鳴らすと部屋の後ろで物音がして、振り返るとそこにはいつの間にか電話BOXサイズの真っ黒な箱があった。
「期限は次の化学の授業まデ。投票をパスするのは禁止で、期限までに投票していない人は得票数に関係なく追加で敗北者トなるよ。それトお助けルールがもう1つ最多得票者を同率で2名以上にできれば敗北者は生まれず、全員が生き残れるヨ」
そこまで聞いた段階で僕は勝ちを確信した。
「最初のゲームだからシンプルで簡単でショ。それじゃあ話し合うのは自由だからここからは思うようにドうぞ。ちなみに僕からのアドバイスを1つ。このゲームは全編通して生き残ることを最優先に考えるのがおススメだよ。他者が死ぬことよりも自分が生きることを優先。ゆえにバースゲーム――」
誰か1人は確実に死ぬルールかもしれないと思ったが……誰も死なない道があって良かった……。
そこから僕のクラスでは死者を選ぶ会議が始まった。
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