まだ太陽の元気が良い午後、帰宅部の僕は自宅に帰ってきた。荷物を置いて、制服を脱いで、パーカーに着替える。帰宅が早い僕は帰宅してから在宅モードに入るのも早かった。

　手を洗うと、僕は自室に戻る。マイホームの中のマイホーム。ドアを閉めると心が落ち着く。

　今日の学校生活はあまり気分が良いものではなかった。黒いパソコンに自分のことを好きな女子がいないと聞かされたからだ。そんなにイケてないほうではないと思っていたのだが、現実は厳しいらしい。

　まあモテてるほうでもないと自己評価していたが、いざ0人と言われると傷ついた。教室ではどうせ誰も自分のことなんか好きじゃないんだからと、いつもよりも顔に力を入れずに過ごして、半ば睨むような視線で周りの女子を気づかれないように見たりした。

　そんな週末から続くちょっとした自暴自棄な生活。でも、そんなことはよくよく考えたら大したことじゃない……。

　収納の奥に押し込んだ黒いパソコンがまだそこにあることを確認したら、僕は部屋に帰って来た時よりもさらに大きな落ち着きを感じる。

　だって、これがあれば今の不幸なんて吹っ飛ばしてお釣りがくる程の幸福が得られるじゃないか。

　――例えば、分かりやすくお金という幸福を得ようと思えば。

　この未来も知れるパソコンをもってすればギャンブルで簡単に大金を当てることができよう。競馬や競艇、番号を自分で選ぶタイプの宝くじなんかは約束された勝利にできる。

　どの馬が勝つかを知ってからぶっぱできる。言葉の意味が違うが、勝ち馬に乗るという言葉をそのまま実行できるのだ。

　だから僕は勝者なのだ。何を落ち込むことがある。

　今日は数日何かを知る為だけに使った分、直接的な利益を得る為に検索を使いたい。して……どんなワードにしようか。

　ギャンブルの為に使えれば簡単だけれど、高校生という身分上それは難しい。やったことが無いからやり方も分からないし。邪な考えは不幸を知った頭からはいくつも浮かぶけれど、現実的に実行できるものとなると悩ましい。

　スマホを弄りながら考えて、浮かんだ第一候補はプレイしているソシャゲで大当たりが引けるタイミングを検索することだった。

　現代人が多くプレイするありとあらゆるソシャゲで、みんな大好き大正義ガチャ。様々なキャラクターやアイテムをランダムで入手するシステムで、ほとんどの場合は大当たりが引けるのは低確率だ。それを確定にする。

　欲しいキャラが手に入ると、僕も嬉しい……けど……それって虚しくないか！すごいパソコンを使って行う僕の野望ちっちゃ！

　待て待て。そんなこといつでもできるし、運が良ければ黒いパソコンがなくてもいいし、金を手に入れていっぱいガチャ引いたほうがいいだろ。

　でもでも。それしか思いつかん……。

　悩んだ僕は挙句の果て、「幸せ　今すぐ」と検索したのであった。