王子の妹君を虐めて婚約破棄される私

実家で療養の為にお屋敷を貰い そこの領主となったのでのんびりスローライフを満喫したい
一ノ瀬 彩音
一ノ瀬 彩音

天使のリンゴ

公開日時: 2022年8月28日(日) 02:05
文字数:2,328

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」


と気持ち良さそうに声を上げています。

その様子を見たエリナがクスクスっと笑いだすと


「あはははは、ミレナ様って本当に可愛いよね?」


そう言うと、クスクスっと笑うのでミレナは、そんな皆の様子が面白くなくて、

むすっとしながらカナエが差し出した紅茶を飲み干すと、むせてしまい、ゴホンゴホンと咳き込んでしまうのだった。


それを見たカナエがクスクスっと笑うと、


「ミレナ様大丈夫でございますか?  はいお水」


そう言ってお水をミレナに手渡すと、ミレナはそれを受け取り飲むとむせる。

むせた後、顔に涙をためながらカナエを見ると


「ミレナ様、落ち着いてください、お話は、ゆっくりで良いんですよ」


そう言いながら優しく微笑むと、ミレナの手から空になったカップを回収されると、新しいお水が手渡される。

それをまた受け取ると、こくりと飲んで一口飲み、むせた後はカナエを見つめてから、


「えぇありがとう」


とだけ言いながら受け取ったグラスを置くと、エリスがじっとミレナの事を見ながら、

くすっと小さく笑っていた事に気付いて、むぅ~と口を尖らせるとエリスを睨み付けるのです。


それに気付き慌てるエリス、それを見てまたミレナはむぅ~としてしまうのでした。

ミレナは、椅子に座ってむぅとしています。


「あのぉ」


そう言われて振り向くとさっきの男性、アルドがミレナの方をじぃーと見ながら、座ってこちらを向いている。

それを見たミレナは立ち上がります。


立ち上がって、ふふん、これで、貴方はもう逃げられないのよ?  そう心の中で思いながら


「それで、御用件は?  私は今とても機嫌が悪いのです、だからあまり手短にお願いしたいものね」


そう言うとう~んとうなりながら悩みだし、暫く考えてはっとした表情でミレナの方を向いてくる。


「そっそうだ!  俺はな!」


そう言った時にミレナが、机の上に肘をつきながら顎を乗せて、頬杖を付くとギロッと彼を見ると


「ひっ」


と小さな悲鳴を上げる。

それからミレナをジーと見ていたのを気にしないフリをしたままお茶を飲む。


「ミレナ様」


「はっはひゃいっ」


変な返事をしてしまった事で、周りでエリス達がお腹を抱えて笑っていて、

ミレナは、はっとして恥ずかしくなって、頬を赤く染めてしまう。


「はっ、はやく、いいなさい」


そう言えば、


「はい」


そう言いながら話し出してきた。


「おっ俺は、アルイライムから来たのですが……」


そこで言葉を切る。

それを見ているとどうやら彼が、言いたいことは分かるような気がするのだが、はっきりしてほしいと思いミレナは、早くと促せば、


「天使のリンゴはいかがでしょうか?」


「……」


沈黙が流れた。

それはそうだろう、だって誰もそんなものは知らないのだ。

まして、ここに来て数日しか経っていない。


それどころか、そもそも街にさえ、殆ど出ていない状態なのだから、知っていても答える事が出来ないのである。

それにミレナ達は、知っているはずだと思って言っているはず、だがミレナ達の事を見ている彼の目は期待をしている目ではなく、


「あれ?  もしかして?」


という表情をしていた。

つまりは、この街では余りにも当たり前すぎて、わざわざ口にする事も無いくらい有名な特産品であり、誰もが知っていて当然と言う認識のようだ。


確かにそうかもしれない。

今までそんなことを聞くことも無かったし、聞かなくても何とかなっていたので、そこまで考える必要もなかったのも事実ではある。

そして、改めて考えれば、ミレナ達にとっては、初めて知る天使のリンゴは興味深かったので、

聞いてみることにするとエリスもメリーも楽しそうに会話に加わっていく。


「そうね、それなら、私に任せてくれないかしら」


そう言われて目を輝かせているのをカナエは、苦笑しながらも見守るのでした。


「さて、今日はこの辺りにしましょう」


そう言うと、メリーは不満そうな顔をしている。


「でも、まだ仕事が」


そう言われてミレナは、メリーの頭を掴むとその髪をグシャぐしゃにして撫で回して、


「ほら、明日は朝早いのでしょう?」


そう言われると、はぅうと情けない声で、ミレナ様酷いですと言いながらも、大人しく仕事を終わらせる。

そうしてミレナは部屋に戻っていき、カナエはそれを見送ると自分も部屋に戻り、寝間着を着てベッドに入り込み、


「やっと終わったよ」


そう呟きながら布団を被ると疲れていたのか、直ぐに眠りについたのでした。

ミレナ様は自室に戻るとすぐに就寝されたのです。


翌日早朝、日の出前にミレナは目覚めて、支度を整えると食堂へと向かいます。

そこには、既にミレナ様の付き人である二人もおりました。

その二人がミレナ様をみると笑顔になって駆け寄って来ます。


「おはよう御座いますミレナ様」


「おはようございます」


そう挨拶されましたので、ミレナ様も同じように返すのです。


「お二人は、早起きですね」


そう聞けば、


「はい、お嬢様が少しでも安眠できるようにとの配慮なのですが」


「そうです」


「なるほど」


そう話している内に朝食が、運ばれてきました。

三人で仲良く食事をしながら雑談をしておりました。

食後の珈琲タイムになると、ミレナ様は少し疑問に思っていたことを尋ねてみたのです。


「ところで、エリスさん」


「はい?」


「どうしてこの屋敷に使用人が少ないのですか?」


そう聞けば、困った顔をして


「いえ、決して少ないわけではありません」


そう答えられてしまい、ミレナは首を傾げていると続けて話す。


「そうですね、多い時など、20人ほどが働いていましたが、最近は何故か急に減り、現在は12人程度になります」


「そうですか」


ミレナは、それだけ聞くとそれ以上は何も聞けなかった。

その後、朝の日課をこなすと部屋で少し休んでから準備をすると、馬車に乗り込むのでした。

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