「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
と気持ち良さそうに声を上げています。
その様子を見たエリナがクスクスっと笑いだすと
「あはははは、ミレナ様って本当に可愛いよね?」
そう言うと、クスクスっと笑うのでミレナは、そんな皆の様子が面白くなくて、
むすっとしながらカナエが差し出した紅茶を飲み干すと、むせてしまい、ゴホンゴホンと咳き込んでしまうのだった。
それを見たカナエがクスクスっと笑うと、
「ミレナ様大丈夫でございますか? はいお水」
そう言ってお水をミレナに手渡すと、ミレナはそれを受け取り飲むとむせる。
むせた後、顔に涙をためながらカナエを見ると
「ミレナ様、落ち着いてください、お話は、ゆっくりで良いんですよ」
そう言いながら優しく微笑むと、ミレナの手から空になったカップを回収されると、新しいお水が手渡される。
それをまた受け取ると、こくりと飲んで一口飲み、むせた後はカナエを見つめてから、
「えぇありがとう」
とだけ言いながら受け取ったグラスを置くと、エリスがじっとミレナの事を見ながら、
くすっと小さく笑っていた事に気付いて、むぅ~と口を尖らせるとエリスを睨み付けるのです。
それに気付き慌てるエリス、それを見てまたミレナはむぅ~としてしまうのでした。
ミレナは、椅子に座ってむぅとしています。
「あのぉ」
そう言われて振り向くとさっきの男性、アルドがミレナの方をじぃーと見ながら、座ってこちらを向いている。
それを見たミレナは立ち上がります。
立ち上がって、ふふん、これで、貴方はもう逃げられないのよ? そう心の中で思いながら
「それで、御用件は? 私は今とても機嫌が悪いのです、だからあまり手短にお願いしたいものね」
そう言うとう~んとうなりながら悩みだし、暫く考えてはっとした表情でミレナの方を向いてくる。
「そっそうだ! 俺はな!」
そう言った時にミレナが、机の上に肘をつきながら顎を乗せて、頬杖を付くとギロッと彼を見ると
「ひっ」
と小さな悲鳴を上げる。
それからミレナをジーと見ていたのを気にしないフリをしたままお茶を飲む。
「ミレナ様」
「はっはひゃいっ」
変な返事をしてしまった事で、周りでエリス達がお腹を抱えて笑っていて、
ミレナは、はっとして恥ずかしくなって、頬を赤く染めてしまう。
「はっ、はやく、いいなさい」
そう言えば、
「はい」
そう言いながら話し出してきた。
「おっ俺は、アルイライムから来たのですが……」
そこで言葉を切る。
それを見ているとどうやら彼が、言いたいことは分かるような気がするのだが、はっきりしてほしいと思いミレナは、早くと促せば、
「天使のリンゴはいかがでしょうか?」
「……」
沈黙が流れた。
それはそうだろう、だって誰もそんなものは知らないのだ。
まして、ここに来て数日しか経っていない。
それどころか、そもそも街にさえ、殆ど出ていない状態なのだから、知っていても答える事が出来ないのである。
それにミレナ達は、知っているはずだと思って言っているはず、だがミレナ達の事を見ている彼の目は期待をしている目ではなく、
「あれ? もしかして?」
という表情をしていた。
つまりは、この街では余りにも当たり前すぎて、わざわざ口にする事も無いくらい有名な特産品であり、誰もが知っていて当然と言う認識のようだ。
確かにそうかもしれない。
今までそんなことを聞くことも無かったし、聞かなくても何とかなっていたので、そこまで考える必要もなかったのも事実ではある。
そして、改めて考えれば、ミレナ達にとっては、初めて知る天使のリンゴは興味深かったので、
聞いてみることにするとエリスもメリーも楽しそうに会話に加わっていく。
「そうね、それなら、私に任せてくれないかしら」
そう言われて目を輝かせているのをカナエは、苦笑しながらも見守るのでした。
「さて、今日はこの辺りにしましょう」
そう言うと、メリーは不満そうな顔をしている。
「でも、まだ仕事が」
そう言われてミレナは、メリーの頭を掴むとその髪をグシャぐしゃにして撫で回して、
「ほら、明日は朝早いのでしょう?」
そう言われると、はぅうと情けない声で、ミレナ様酷いですと言いながらも、大人しく仕事を終わらせる。
そうしてミレナは部屋に戻っていき、カナエはそれを見送ると自分も部屋に戻り、寝間着を着てベッドに入り込み、
「やっと終わったよ」
そう呟きながら布団を被ると疲れていたのか、直ぐに眠りについたのでした。
ミレナ様は自室に戻るとすぐに就寝されたのです。
翌日早朝、日の出前にミレナは目覚めて、支度を整えると食堂へと向かいます。
そこには、既にミレナ様の付き人である二人もおりました。
その二人がミレナ様をみると笑顔になって駆け寄って来ます。
「おはよう御座いますミレナ様」
「おはようございます」
そう挨拶されましたので、ミレナ様も同じように返すのです。
「お二人は、早起きですね」
そう聞けば、
「はい、お嬢様が少しでも安眠できるようにとの配慮なのですが」
「そうです」
「なるほど」
そう話している内に朝食が、運ばれてきました。
三人で仲良く食事をしながら雑談をしておりました。
食後の珈琲タイムになると、ミレナ様は少し疑問に思っていたことを尋ねてみたのです。
「ところで、エリスさん」
「はい?」
「どうしてこの屋敷に使用人が少ないのですか?」
そう聞けば、困った顔をして
「いえ、決して少ないわけではありません」
そう答えられてしまい、ミレナは首を傾げていると続けて話す。
「そうですね、多い時など、20人ほどが働いていましたが、最近は何故か急に減り、現在は12人程度になります」
「そうですか」
ミレナは、それだけ聞くとそれ以上は何も聞けなかった。
その後、朝の日課をこなすと部屋で少し休んでから準備をすると、馬車に乗り込むのでした。
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