4. 空を飛べば
サーシャは王都に向かって歩き続けていた。けど……この子に問題があったわ。
「うーん……こっちかしら?」
違う違う!そっちの道はさっきも通ったわよ!ダメだこりゃ……。
どうやら彼女は方向音痴のようね。それもかなり重症みたい。このままじゃ、いつまで経っても王都に着かないかも……。
「はぁ……お腹空いたし、歩いても歩いても王都にたどり着かない……どうしたら……」
サーシャは道の真ん中で立ち止まり、空を見上げながら何かを考えていた。そして、いきなりポンッと手を叩くと、何やら良い事を思いついたような顔をした。
「そうだ!空を飛べばいいんだ!そしたら王都なんてすぐに着くし……」
……え?今なんて言ったのかしら?空を飛ぶ?空腹で頭がおかしくなったんじゃないわよね?
「目が回る……もう無理かもしれないわ……ごめんなさいアイリス様……」
そう言うとサーシャは目を閉じてフラフラしながら道端の大木の近くに倒れてしまった。
もう!しっかりして!サーシャ!あなたがここで倒れたら私たちは王都どころか街にも着けなくなるのよ!?お願いだから起きて!
仕方ない……幸い彼女は私を握ってくれている。困っていたから、無意識なのかもしれないけど……。
大丈夫。体力はないけど魔力は回復している。私は風魔法のウインドカッターで目の前の大木を切り倒す。大きな轟音と共に大木は倒れ、しばらくして近くの村の住人がやってきてサーシャを保護してくれることになった。
ふぅ……とりあえずこれで一安心かしら。あとは彼女の目覚めを待つだけね。それから数時間後、彼女は目覚めた。
「あれ?ここは……」
良かった!やっと起きたのね。心配させないでちょうだい。まったく……。
「あ!思い出しました!私ってば急に気分が悪くなって……それで木陰で倒れていたはずなのになんでこんなところにいるんでしょうか?」
するとサーシャが目覚めたのがわかって、サーシャは助けてくれた村の人に事情を聞かれる。サーシャは色々説明をしていた。
「なるほど、そういうことですか」
サーシャは納得したように何度もうなずいている。そして、少し申し訳なさそうな表情をして、村人たちに謝った。
「私のせいだったんですね。すみません……」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。それよりも体調の方は大丈夫ですか?」
「はい。問題なく元気です!」
「それはよかった。良ければ食料を持っていきなさい。あなたの旅に幸あらんことを」
こうして村の好意も得て、私たちの旅は再び始まった。サーシャには悪いけど、本当に助かったわ……いきなり旅の終わりかと思ったわよ。歩き始めてすぐサーシャは私を見てこう言う。
「もしかして……アイリス様が助けてくれたのかな?……ありがとう」
いいえ、どういたしまして。まぁサーシャには聞こえてないけど。私は感謝をされる。ただのアイアンソードに感謝するなんて本当に私のことを剣の精霊だと思っているのかしらね。そこが彼女のいいところだけどね。
さて、気を取り直して行きましょうか!まずはこの森を抜けて街道に出ないと……。私とサーシャは王都に向かって再び歩き始めたのでした。
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