そうして冬が終わり、春の訪れとともに私は学園へと通う事になった。
初日のみ実家からの、遠方の貴族や平民は近場にある宿や懇意にしている貴族の家、あるいは一足早く学校の寮に泊まり各々準備をしていた。
私の場合は学園と家が比較的近いので、入学式はお父様とお母様と共に馬車で向かう手はずになっている。
また第二王子は警備上の都合で入学式直前までどこにいるのか、どんな道を通るのかが分からないようにされている。
馬車もわざわざそのために外見は庶民が使うような物、内装だけはものすごく立派な物体を用意している。
本当に、必要経費だとしても無駄なことこの上ない……。
「さてマリア、大変な仕事だとは思うが私はお前を信じる事にする」
「はい、お父様」
「本当に辛くなったらお役目を降りてしまってもかまいませんからねマリア」
「えぇ、ですができる限りのことはやって見せますお母様」
馬車の中での会話は、まぁいつも通り。
食卓でもお母様は心配そうにたびたびこんな言葉をかけてきた。
まぁ陛下としても身の丈に余る仕事だと理解したうえで辞退するならば、それはそれで一定の評価をしてくれるだろう。
修道院送りとか、病に倒れるようなことにはならないし国としても態度を変えるようなことはないだろう。
表向きは……であるが。
「……ついたようですね」
体が椅子に押し付けられるような感覚と共に、窓の外の景色も静止する。
ドアを開けられるのを待って一歩踏み出せば、王城と見紛うかという大きさの学園の前に私は立っていた。
思わず圧倒されてしまいそうになる。
今日からここで、私はトラブルを内々に処理しながらも第二王子のとりまきと、それに粉をかけようとする令嬢たちの監視、そしていざという時の自己防衛、なにより学生と言う身分と公爵家令嬢という立場上相応の成績を残さなければいけないのだから。
……私だけ学園生活が始まる前からハードモードなのおかしくないかしら。
「マリア、どうした?」
「いえ、これからの生活を考えると少し胃が痛くなってきまして……」
「ふむ、確かにその気持ちはわかる。だが先ほども言ったように私はお前を信じるぞ」
お父様……そのプレッシャーが一番つらいんですが……。
ええい! ままよ! もうなるようになれだ!
来るなら来い! バカ貴族だろうがなんだろうが全部私が何とかして見せるわ!
「では、お父様。お母様。入学式の会場へ」
「うむ」
「えぇ」
はぁ……誰か御役目変わってくれないかしらねぇ。
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