「貴方はもう長くない」
冷たい言葉が脳裏を伝う。悲しくないと言えば嘘になるが、涙は出ず不思議と受け入れてしまう。
柔らかな黒髪に、クールな印象を与える目元をした蒼い瞳、少し痩せ気味な体格、細い足にピッタリな黒のスキニーのボトムに赤い縁の付いた白シャツ、ラフなグレーの上着を羽織った、クールな印象を醸し出す青年は、草原に座ったまま空を見上げた。
何処までも青く晴れ渡る空に、柔らかな光を纏った白い雲は風に身を任せてただただ宛のない彼方へと流れていくばかりだ。青年の蒼い瞳には鳥が写ることはなく、ただ風が淡い黒髪を綺麗に靡かせるばかりだ。
空を見つめていた視線は、同じく柔らかな翠髪に、黒髪の青年とは違ったクールな印象を与える同じ蒼い瞳、制服を思わせるラフな濃紺のボトムに体のラインが出る程のゆったりとしたオフホワイトのYシャツを着た、物静かな雰囲気のある青年へと向けられる。翠髪の青年は無表情のまま草原に佇み黒髪の青年を見つめていた。
草原には2人以外の人の気配は無く、人の声や自然の音、車の音のみが流れてくる。
「何で……何で俺、死ぬんだ?」
黒髪の青年、黒夜 時は翠髪の青年にゆっくりと質問を投げかけた。
その瞳には何処か悲しげな色が見え隠れしており、蒼い瞳に翠髪の青年を写し出す。
「貴方の灯火は小さく、もう長くはもたないからです」
翠髪の青年は淡々と無表情のまま、しかしどこか強い意思を持った瞳で説明する。
そんな瞳に、時は何かを思うと、また晴れ渡る空を見上げた。
「で、お前は誰なんだ?」
翠髪の青年にまた質問を投げる。視線は空を見上げたままだ。
翠髪の青年は、少し考え込むとゆっくりと顔を上げた。
「ライト……それが私の与えられた名です」
翠髪の青年、ライトは表情を変えず自身の名を紡ぐ。
ライト……名前自体は聞いた事はないが、時の中で何故か懐かしさが溢れてくるのを感じた。
まるで出会う前から知っていたかのような感情に理解が出来ず、ライトへ真っ直ぐ視線を向け暫く見つめると深い溜め息をついた。
「とりあえず説明してくれよ。何で俺が死ぬのか、いつ死ぬのか、何故おまえにそれがわかるのか」
「訂正しておきますが、死ぬのではなく消えてしまうんです」
「まぁ、どっちでもいいから説明してくれ」
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