家から出た時は、寂しげな表情で一度振り返った。
閉じられた玄関口にそっと手を触れると直ぐに離す。
「……気をつけてじゃなく、いってらっしゃいがよかったな……」
両親を亡くしてから告げられることのない言葉は時にとって大きなものであり、無意識に求めてしまうものだ。1人だけの空間はどんなに慣れていても寂しいものであり、孤独を感じるものだ。だからこそ、1人を感じさせないライトの存在は時の中では大きなものなのだろう。
寂しさを感じながら背を向け段を下りた。
少し歩くと、5m程離れた場所に、一人の少女が辺りをキョロキョロと見回しているのが見えた。時は、何故かその行動が気になり柱に隠れて様子を伺った。
その時、横を車が通ったと同時に少女が此方を向いて真剣な表情で見つめた。心臓がドキリと鳴りバレたかと思ったが、よく見ると少女は時ではなく、時より向こうにいる車を見ているようだった。
時は、不信に思い少女に駆け寄った。声をかけようとしたその直後、なんと少女は車の前に立ち塞がったのだ。
「あぶねぇ!!」
時は、叫ぶと少女に全速力で走った。
キキィィィィ!!!!と耳を劈く車の急ブレーキ音が響き渡る。
運良く時は少女を抱き止め、車はギリギリ横を通り過ぎる。二人はそのまま転がり、外壁にぶつかると背中に鈍い痛みが走る。
車の運転手は「あぶねぇだろうが!」と怒鳴り声をあげ、そのまま走り去って行ってしまった。
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