その頃、時は自殺のあった寮の場所を近くにいた生徒達から聞き出して向かうと、辺りを見回し息を切らしながらも緋葉の名前を叫んだ。
自殺のあった女子寮は中庭を介して校舎とは離れており、建築物自体は離れた場所に建っている男子寮と同じ形だが色が女子寮はクリーム色であり、白色の男子寮とは色の違いがある。
寮では、県外や訳アリで寮暮らしをしなければならない生徒などが暮らしており、男子寮と女子寮にて分かれている。
建物は校舎と同じく近代的なデザインになっており、何もかもが最新鋭の技術や設備が整っている。
そんな寮の玄関前で時は立ち止まって、目的の人物を探していた。
「緋葉ー!緋葉どこだー!」
少し待ってみるが返事はない。辺りは静まり返っており、警察や職員の姿も見当たらない。走り続けたせいで喉に痛みがあったが、構わず叫んで緋葉を探す。
「緋葉!いるなら返事しろ!緋葉ー!」
帰ってこない返答に、時は焦っていた。
死んだならもう病院なのでは?
そう思ったとき上から聞きなれた声が叫んだ。
「ちょっとあなた!人の名前を大声で叫ばないでよ!」
時は、慌てて上をみると緋葉が寮の屋上から、こちらを見下ろしていた。
時は、慌てたように寮に走っていく。
暫くすると屋上のドアが開き、時は、縁にいる緋葉に向かって走って行くと自身の方に引っ張り二人は転がる。
「きゃっ!」
時は、緋葉を抱きしめたまま起き上がるとは叫んだ。
「だから簡単に死ぬんじゃねぇて!だいたい寮から飛び降りなん……て…………え?」
時は、生きている緋葉を見て自分が空回りしていたことに気づいた。
緋葉は怪我一つ無く存在しており、怒りを露にする時の気迫に唖然としていたからだ。
その直後、恥ずかしさと安堵が一気に押し寄せてくる。
「離しなさいよ、この変態!」
緋葉は、今朝と同じく時を突き飛ばすと立ち上がった。
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