シェフラーゲーム

量子コンピュータを手にするのは誰だ。
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第5話 次の仕事は決まったぜ

公開日時: 2021年10月29日(金) 17:51
更新日時: 2021年10月29日(金) 18:19
文字数:1,031

「驚いたみたいね、ついでに言うと孫娘もいなくなったの、名前は確か───」

「エリス・シェフラー……マデリーン高校に通うたった一人の孫娘だ」

「アデル、知ってるの?」

「ジュディン・シェフラーと言えば、次世代コンピュータ開発の権威さ。ま、噂では目に入れても痛くないほど孫娘を可愛がってるって話だ。メディアの取材、誌面なんかにたまーに並んでんのを見かけっどもな」

「で、その情報をアデルに知らせて、今度は何を企んでやがんだ、莉子りこ

 暁 将冴が、あかつきしょうご口を挟んだ。


「やあねえ、何も企んでやしないわよ、人聞き悪い事言わないで将冴しょうご、アデルなら乗るでしょ、ねえ」

「その前に、次世代コンピュータってなんだ、え? 大金が拝めるのか」

 と、コンピュータには全くうと将冴しょうごが興味を示した。


「なあに、量子コンピュータのことさ」とアデル。

「量子コンピュータ?」と将冴は聞きなれないワードに続けて訊いた。


 アデルは姿勢にあぐらをかき、続けた。

「人工衛星に積んでるのは、思うに世界の軍事バランスを一夜にして変えちまう『量子暗号衛星』だ。どんな複雑な暗号もたちまち解読しちまう。敵国の軍事力を無力化できるばかりか、ハッキングも自在だ。ということは、核ミサイルを自国に向けて撃つ事も可能ってことさ。旧約聖書の週末の始まり、ハルマゲドンを起こす事も、理屈では、世界を支配するのも可能だ。つまり、それくらい危険な代物ってことさ」


 アデルは、立ち上がって、あっけらんと言った。

「───将冴しょうご、次の仕事は決まったぜ」


「軍に手を出すってのか、アデル、そいつは賢くねえ」


「なあに、ワケあり爺さんと孫娘を探し出して、よくない輩にわたる前に、俺たちで頂いちまおう。何も新世界の神になろうってんじゃない、あくまで平和利用さ、世界中の金庫が開けほー題、盗人なら夢があるってものさ」

「そこまで知ってるなら、もってきた情報も形無しねえ」

 と莉子が、呆れたように言った。


「いや、上等上等、おかげで博士が行方くらましたワケ、わかりそうだ、莉子ちゃんありがと、んーまっ!」

 と投げキッスを莉子に送って、右手をグー・パーしながら開かれた扉から廊下に出て行った。


「あーあ、アデルのヤツを上手く炊き付けやがったな、莉子」

「まあ、今度ばかりはそう簡単にはいかないと思うけど、こんなところでブラブラしてるアデルよりマシでしょ」

 そう言って莉子も出て行った。

「今度のヤマには沖田のヤツも呼んどいた方がいいかもな」

 祥吾はテーブルのウイスキーのダブルロックをぐいっとあおった。

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